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3.彼らの関係
その6、お友だちとは話をしよう②
しおりを挟む「へえ、ど、どんな人? お相手」
「うへへ。聞いて驚け」
M実は細い両手をばっと私の目の前に出した。
右手はパーで左手はチョキで……なに作る気だ。
「まさかの七つ下!」
「……ぉお、おお?」
違った。
あれ、なんで私、ほっとしたんだろう。まてまて今はそんな話じゃない。七つ下っていくつだ……え、七つ下?!
「え、待って未成年?!」
「せいかーい!」
「それはやばい! 犯罪だし、スピード婚だし!! なんでそんなことに!」
「いやー申し訳ないっ! って言っても、知り合ってからもう一年くらい経つんだけどね。うちの母親の介護士さんで。あ、うちの母、この間亡くなったんだけどさあ」
「ぅ、お……うん」
「あ、ごめんね重たい話で! いやでも実際よく保った方なのよ。もうかれこれ五年くらいずーっと介護が必要でさ。で、最後に看病してくれたのが、今の旦那」
「五年前から? ……知らなかった」
五年前ってことは、ぴったり卒業時期と重なる。
「もしかして……連絡とれなかったのって」
「ああそうそう、忙しくってさー。実家は手伝わなきゃいけないし、お母さんの手伝いはあるしでね」
「そっかぁ……大変だったんだね」
「うん。でもおかげさまで結婚の運びとなりまして、大変だったことも終わって。あーやっと色々報告できるなって思って、今回連絡した次第。いぇあ」
あっけらかんと話すけど、本当に大変だったんだろうな。落胆する。自分に落胆する。なんで私って、自分本位にしか物事を考えられないんだろう。ちょっとでもM実に連絡すればよかった。
ぐるぐると後悔、幻滅、落胆が押し寄せる。
ぎゅうっと拳を握った。ちゃんと言おう。あの時のこと、そして今日のことも含めて、ちゃんと謝ろう。
「私、てっきり……」
「ん?」
「ごめんね。てっきり、Uくんの事で今日、呼び出されたんだと思ってた」
「え? なんでUくん?」
「……あのとき私、M実がUくんのこと好きなの知ってて告白をオッケーしたでしょ。だからなんとなく……その話が出るんだろうなって」
「いやいや待って。私、どんだけ執念深いのよ。五年前よ?」
「デスヨネ……」
まったくほんとにその通り。
なにも見えてなかったのは自分だけだった。馬鹿である。大馬鹿である。
「……確かにあのときは悲しかったけどさぁ」
「うん」
「でも結局UくんはA子のこと選んだんだし、私もなんにもアプローチ出来なかったんだから、なるべくしてなったと思うけど」
「う……ん。でも私、あのとき、Uくんのこと……好きじゃなかったと思う。告白されて舞い上がって……なんにも考えずに、付き合っただけだった」
M実がティーカップを持って、コーヒーを飲んで、テーブルへ置いた。顔が見られない。どのツラ下げてこんな、過去の傷を掘り返すようなことをしてるんだろう。やめるべきなのにやめられない。ほんと、最低だ。
「そこまで言っちゃうんだ?」
「うん」
「変わんないねーA子、そういう、ネガティブな方向に思い込みの激しいトコとか、要らない事まで全部言っちゃうトコとか。人生苦労してるでしょ」
「ゔ……正解」
「まぁ私は好きだけどね」
カラカラと笑ってくれる。
そうだ、そういうM実だから楽しかったんだ。変わってて、歯に衣着せぬ物言いで、でも本質をちゃんと見てくれる。だから大学生のとき、いつもふたりでいたんだっけ。
「でも待ってよ。ふたりって結婚間近だって聞いてたし、てっきりまだ付き合ってるもんだと思ってたけど、違うの?」
「……フラれたの。三ヶ月前に」
「うわぉ。でもじゃあ、五年くらい?」
「になるね」
M実は腕を組んでううーんと唸った。
なにを言われても覚悟はしている。ただ、こんな茶番に付き合わせていることだけが申し訳なくて、やっぱり顔を上げられない。自分が断罪してほしいだけの、こんな茶番にーー
「じゃあそれ、もう私関係なくない?」
「え……」
「そりゃくっついてひと月とかで別れてたら『あーこの子は単に私の好きな人を横取りしたかったんだなー』って思うけどさあ。五年だよ? 六年生が高一になるんだよ? その間ずーっと付き合ってたって、もうそれ、最初の感情なんて関係ないじゃん」
……驚いた。言葉も出ないくらいに。
一般的に見れば、M実の言う通りなんじゃないかと、思えたから。
「だから、お互いちゃんと付き合ってたんだし、好きだったんでしょう? だったら別に、誰に謝る必要もないよ」
「う、でも」
「いやもう面倒くさいってこの話! はい終わり! おしまい! ってかA子、それより私のセンセーショナルなニュースを聞いてどうよ! なんか言うことないの?!」
「あ……うん、そうだった。ビックリした。なんか、人生の主役って感じ。モブじゃなくなったんだね」
「うわー懐かしい! してたねえモブ談義! あれはあれで楽しかったけど、でも正直、今が一番かな!」
「うん、だろうね。ほんと輝いてる」
目の前の笑顔は本当にまぶしかった。
彼女はこれから、ううん、今までだってずっと、自分が主役の人生を歩んでるんだ。カッコいいなぁ。いいなぁ。もう全然モブじゃない。目にじんわり浮かぶものを拭って笑う。
「おめでとう、茉実」
「うへへーありがと! A子もイイ男見つけなよ! 正直、あのUくんじゃあねえ……」
「えーなにそれ! 好きだったんじゃないの?!」
「いやー、若かったよねあん時は!」
それからはずっと、話し続けた。
なんだか、大学時代に戻ったようだった。
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