冷酷な男爵は家事で惚れさせる!?~その無慈悲さ、料理でほどける~

花霞つばき

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 それからしばらくして、都ではグレイヴの名誉回復を祝う声が高まり、リリアナの父ハロルド公爵もまた、男爵との交友を堂々と認めるようになった。社交界では「グレイヴ男爵が冷酷どころか、優れた領主だった」という認識が広まりつつある。  
 そんな空気の中、ハロルド公爵はある日、グレイヴを自室へ招き入れた。リリアナも同席している。

「男爵殿、今後は領地経営も落ち着くであろう。娘のことも含め、そろそろ将来を考えてはどうかな」

「将来、ですか」

 グレイヴは少し表情をこわばらせる。慣れない話題だと戸惑っているのだろう。リリアナもドキリとしながら、父の次の言葉を待つ。

「はっきり言おう。娘はお前のことを深く慕っている。お前も娘を憎からず思っているように見えるが、どうだ」

「私は……リリアナを大切に思っています」

「おお、それは心強い。ならば、この先を考えてみてもよいのではないか」

 リリアナの心臓は激しく鼓動する。グレイヴが自分への想いを口にしてくれたことが信じられないほど嬉しい一方で、彼がどんな結論を出すのかに不安もある。

「男爵様、私……あなたともっと一緒にいたいんです。もしご迷惑でなければ、私にあなたの隣で領地を守る手伝いをさせてほしい」

「迷惑なんて、そんな言葉は当てはまらない。ただ、俺は不器用だし、人を喜ばせるのも上手くない」

「それでも構いません。あなたが無理をしなくても、私はあなたのままが好きです」

 その告白に、ハロルド公爵も満足そうに頷く。視線はグレイヴへと注がれ、彼の返事を待っている。

「……わかった。リリアナと共に歩みたい。そう思ったからこそ、ここまで守り抜いたんだ」

 静かに口を開くグレイヴ。その言葉にリリアナは涙ぐみながら微笑む。ハロルドも安堵の息をつき、二人を見守る。

「よし、ならば正式に婚約の手続きを進めよう。近いうちに式を挙げるのはどうかな」

「式、ですか……」

「当たり前だろう。お前たちが望む形でいいのだ。華やかな式が苦手ならば、私もあまり騒ぎ立てはしない。だが、多くの者に祝福される結婚にしてやりたい」

 グレイヴは考え込むように視線を落とすが、隣でリリアナが「私も大勢がいいです」と呟くと、彼は意を決したように頷く。

「わかりました。ならば、皆が祝ってくれる場を設けましょう」

「ふふ、やった。ありがとうございます、男爵様」

「……こちらこそ、ありがとう」

 こうして二人の結婚が正式に決まった。かつては“無慈悲”と恐れられ、周囲を遠ざけてきた男が、ひとりの女性を大切に想い、そして共に生きる道を選ぶ――この変化を、社交界も暖かく迎えようとしていた。  
 大きな障害は過ぎ去り、いよいよ新しい生活への一歩が始まる。リリアナは心いっぱいの幸せを噛み締めながら、グレイヴとの未来に思いを馳せていた。 
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