映した鏡

はんぺん

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世界の中心②

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 きっと古城さんだって私が割って入る事は望まなかった。誰が責める訳でも無いのにそんな言い訳を自分自身に繰り返した。そういえば出会った時もそうだった。聞くだけ聞いて、古城さんが態度に出さなかったのをいいことに深刻な問題を些末事のように流した。
 救われたいくせに、人を助けるのは足踏みして。あげく自分を責めて言い訳してな人間であろうとする。

「たかだか生きる事に真面目すぎるんだよ」

 私は昼間の出来事を引きずって、体操着とジャージを纏ったものの部活に行く気になれずまたこの物置に訪れた。そこには先客がいて、私の顔を見るなり破顔してそう言った。
 
「自責して得なんてないんだからさ、その責は全部誰かに押し付ければいいんだ。外面だけすみませんってしとけばいいって、こないだバイト先で言われたよ」

 破顔した表情は崩さないまま古城さんは続ける。少し捲し立てる様に口早に。
 破顔とは表情を崩す事。崩す前の表情が何だったかは、充血した目を見れば十分に理解できた。

「自分で実践出来ない事を人に勧めるのよくないですよ」
「……自分を責めるほど俺は真面目じゃないよ」

 古城さんは救急箱の蓋を閉じて隅に押しやると、私のスペースを空けるようにマットの端に腰をずらした。小さく呻き声が聞こえた。この前の様に派手に血に塗れていないだけで、耐え難い程度に甚振られた痕跡は服の下にあるんだろう。
 静かに隣に腰を下ろす。会えた嬉しさも、この前と違って私といる事を受け容れてくれた喜びもあるけれど、感情が表に浮かんで来ない。昏い幕が私の心に垂れ下がっている。

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