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故に彼女は同棲を求める
理由なんて無いって事にしよう
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「あんな楽な方へ楽な方へと逃げるような奴が?」
嘲るように新納は鼻をならす。そうそう、俺は逃げるんだよ楽な方へ。この耳の痛い話題が早く終わるならコウモリよろしくどっちの応援だってこなしてやる、応援なら。
「いやいや、俺に言わせれば楽なものばかり見て逃げてんのはお前だよ。なつきほど自分に厳格……」
斗真がこっ恥ずかしいことを色々言ってしまう前に、俺は応援だけで済ます事を諦め面倒事覚悟で教室に入った。
なんせもう予鈴がなってしまっているのだ。二分と経たず授業は始まるので、もう多くの生徒が自分の席に戻ってきている。そんな中教室の真ん中で突っ立って話す男女が目立たない訳がない。
「おうなつき、いいところに戻ったな」
どこがだ。お前たちがそんな目立つ所で俺の名前を出すから戻らざるを得なかったんだ。
斗真が俺を持ち上げて新納を茶化すから向こうは不機嫌になるし板挟みもいいところだ。
「はぁ」
俺が二人の近くまで来ると、さきと同じ様に新納はまた溜め息をついた。それをしたいのは俺なんだって。
俯きながら軽く会釈をして、二人をすり抜けるようにして席についた。熱の入った会話中にこんな邪魔が入れば、二人とも黙るよな? 無関係を装いゼリーを啜っていると、斗真は俺の思惑通り「じゃあな」と窓際の自分の席に戻っていった。
一方の新納は━━
「矮小な奴ね。蔑まれても誉められても、それを素直に受け止められないなんて」
やはりブスッと不機嫌そうな顔のまま、斜め前に立って俺を見下ろしていた。立ち位置が変わってないということは俺が出ていってすぐ斗真が戻ってきて話していたのか。
「……やっぱり俺が帰って来たの見えてたんだ」
「お前が話を盗み聞きしてくれるというなら丁度いいと思ったのよ。馬渡君はやけに過保護なようだから、気付いたらマトモに話が続かなそうだったし」
「まあ、そうなってただろうね。確かにアイツは俺の肉親よりよほど俺の保護者って称号が似合う」
事実として斗真は俺を異常な程に護ろうとする。薔薇を贈るなら棘を抜き、並んで歩くなら進んで右へ。俺が女であるなら迷わず交際を申し込んでいただろう。
「お前ごときになんでそんな執着を……。なんでお前なの?」
まるで理解できないと、苛立ち交じりに新納は机を叩く。
君はもう少し気を遣ってくれないかい? 俺がさっき逃げたのは見ただろ、なんならもう一度逃げてやろうか、あ?
でも……なんで、か。
自分でもどうしようもないくらい、斗真との差は自覚している。眉目秀麗、カースト上位、リア充彼女持ち、秒刻みで鳴るSNS通知非童貞茶髪ピアス能天気偽善者。その素晴らしさを数え上げればいつの間にか悪口になってしまうほど、社会で生きていく上でアイツは素晴らしく出来た人間だ。
確かにアイツとの関係には理由がある。原因となった事象がある。人は自分の為にしか行動できないんだから、当たり前といえば当たり前だけど。
それでも俺はこう言うしかなかった。
「友達だからだよ。理由なんていらないでしょ」
まさか俺がこんな台詞を口にするとは夢にも思わなかったけど、こう言うしかないのだから仕方無い。恥ずかしい台詞で多分耳まで赤くなってたけど、新納は別に茶化すでもなくただ俺の目を見据えた。
嘲るように新納は鼻をならす。そうそう、俺は逃げるんだよ楽な方へ。この耳の痛い話題が早く終わるならコウモリよろしくどっちの応援だってこなしてやる、応援なら。
「いやいや、俺に言わせれば楽なものばかり見て逃げてんのはお前だよ。なつきほど自分に厳格……」
斗真がこっ恥ずかしいことを色々言ってしまう前に、俺は応援だけで済ます事を諦め面倒事覚悟で教室に入った。
なんせもう予鈴がなってしまっているのだ。二分と経たず授業は始まるので、もう多くの生徒が自分の席に戻ってきている。そんな中教室の真ん中で突っ立って話す男女が目立たない訳がない。
「おうなつき、いいところに戻ったな」
どこがだ。お前たちがそんな目立つ所で俺の名前を出すから戻らざるを得なかったんだ。
斗真が俺を持ち上げて新納を茶化すから向こうは不機嫌になるし板挟みもいいところだ。
「はぁ」
俺が二人の近くまで来ると、さきと同じ様に新納はまた溜め息をついた。それをしたいのは俺なんだって。
俯きながら軽く会釈をして、二人をすり抜けるようにして席についた。熱の入った会話中にこんな邪魔が入れば、二人とも黙るよな? 無関係を装いゼリーを啜っていると、斗真は俺の思惑通り「じゃあな」と窓際の自分の席に戻っていった。
一方の新納は━━
「矮小な奴ね。蔑まれても誉められても、それを素直に受け止められないなんて」
やはりブスッと不機嫌そうな顔のまま、斜め前に立って俺を見下ろしていた。立ち位置が変わってないということは俺が出ていってすぐ斗真が戻ってきて話していたのか。
「……やっぱり俺が帰って来たの見えてたんだ」
「お前が話を盗み聞きしてくれるというなら丁度いいと思ったのよ。馬渡君はやけに過保護なようだから、気付いたらマトモに話が続かなそうだったし」
「まあ、そうなってただろうね。確かにアイツは俺の肉親よりよほど俺の保護者って称号が似合う」
事実として斗真は俺を異常な程に護ろうとする。薔薇を贈るなら棘を抜き、並んで歩くなら進んで右へ。俺が女であるなら迷わず交際を申し込んでいただろう。
「お前ごときになんでそんな執着を……。なんでお前なの?」
まるで理解できないと、苛立ち交じりに新納は机を叩く。
君はもう少し気を遣ってくれないかい? 俺がさっき逃げたのは見ただろ、なんならもう一度逃げてやろうか、あ?
でも……なんで、か。
自分でもどうしようもないくらい、斗真との差は自覚している。眉目秀麗、カースト上位、リア充彼女持ち、秒刻みで鳴るSNS通知非童貞茶髪ピアス能天気偽善者。その素晴らしさを数え上げればいつの間にか悪口になってしまうほど、社会で生きていく上でアイツは素晴らしく出来た人間だ。
確かにアイツとの関係には理由がある。原因となった事象がある。人は自分の為にしか行動できないんだから、当たり前といえば当たり前だけど。
それでも俺はこう言うしかなかった。
「友達だからだよ。理由なんていらないでしょ」
まさか俺がこんな台詞を口にするとは夢にも思わなかったけど、こう言うしかないのだから仕方無い。恥ずかしい台詞で多分耳まで赤くなってたけど、新納は別に茶化すでもなくただ俺の目を見据えた。
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