紡いだ言葉に色は無い

はんぺん

文字の大きさ
8 / 8
故に彼女は同棲を求める

理由なんて無いって事にしよう

しおりを挟む
「あんな楽な方へ楽な方へと逃げるような奴が?」

 嘲るように新納は鼻をならす。そうそう、俺は逃げるんだよ楽な方へ。この耳の痛い話題が早く終わるならコウモリよろしくどっちの応援だってこなしてやる、応援なら。

「いやいや、俺に言わせれば楽なものばかり見て逃げてんのはお前だよ。なつきほど自分に厳格……」


 斗真がこっ恥ずかしいことを色々言ってしまう前に、俺は応援だけで済ます事を諦め面倒事覚悟で教室に入った。
 なんせもう予鈴がなってしまっているのだ。二分と経たず授業は始まるので、もう多くの生徒が自分の席に戻ってきている。そんな中教室の真ん中で突っ立って話す男女が目立たない訳がない。

「おうなつき、いいところに戻ったな」

 どこがだ。お前たちがそんな目立つ所で俺の名前を出すから戻らざるを得なかったんだ。
 斗真が俺を持ち上げて新納を茶化すから向こうは不機嫌になるし板挟みもいいところだ。

「はぁ」

 俺が二人の近くまで来ると、さきと同じ様に新納はまた溜め息をついた。それをしたいのは俺なんだって。
 俯きながら軽く会釈をして、二人をすり抜けるようにして席についた。熱の入った会話中にこんな邪魔が入れば、二人とも黙るよな? 無関係を装いゼリーを啜っていると、斗真は俺の思惑通り「じゃあな」と窓際の自分の席に戻っていった。
 一方の新納は━━

「矮小な奴ね。蔑まれても誉められても、それを素直に受け止められないなんて」

 やはりブスッと不機嫌そうな顔のまま、斜め前に立って俺を見下ろしていた。立ち位置が変わってないということは俺が出ていってすぐ斗真が戻ってきて話していたのか。

「……やっぱり俺が帰って来たの見えてたんだ」
「お前が話を盗み聞きしてくれるというなら丁度いいと思ったのよ。馬渡君はやけに過保護なようだから、気付いたらマトモに話が続かなそうだったし」
「まあ、そうなってただろうね。確かにアイツは俺の肉親よりよほど俺の保護者って称号が似合う」

 事実として斗真は俺を異常な程に護ろうとする。薔薇を贈るなら棘を抜き、並んで歩くなら進んで右へ。俺が女であるなら迷わず交際を申し込んでいただろう。

「お前ごときになんでそんな執着を……。なんでお前なの?」

 まるで理解できないと、苛立ち交じりに新納は机を叩く。
 君はもう少し気を遣ってくれないかい? 俺がさっき逃げたのは見ただろ、なんならもう一度逃げてやろうか、あ?

 でも……なんで、か。
 自分でもどうしようもないくらい、斗真との差は自覚している。眉目秀麗、カースト上位、リア充彼女持ち、秒刻みで鳴るSNS通知非童貞茶髪ピアス能天気偽善者。その素晴らしさを数え上げればいつの間にか悪口になってしまうほど、社会で生きていく上でアイツは素晴らしく出来た人間だ。
 確かにアイツとの関係には理由がある。原因となった事象がある。人は自分の為にしか行動できないんだから、当たり前といえば当たり前だけど。

 それでも俺はこう言うしかなかった。

「友達だからだよ。理由なんていらないでしょ」

 まさか俺がこんな台詞を口にするとは夢にも思わなかったけど、こう言うしかないのだから仕方無い。恥ずかしい台詞で多分耳まで赤くなってたけど、新納は別に茶化すでもなくただ俺の目を見据えた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

処理中です...