紡いだ言葉に色は無い

はんぺん

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故に彼女は同棲を求める

盗み聞き

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「あれ……」

 昼休みも予鈴がなって終わりが近付き、俺は食べ損ねた弁当の代わりに食堂で買ったパウチゼリーを飲みながらクラスに戻ってきた。といってもクラスに入る前に嫌な予感がし、扉の前で立ち止まっているのだが。

 開いた隙間から中を覗くと、社交的な斗真が珍しく高圧的な態度で俺の机の前に突っ立ったままの新納と話していた。彼女はその後ろ姿しか見る事が出来ず、その表情は伺えない。
 一瞬俺の方を見た気がするが、気のせいだろう。十分くらいしてやっと呼吸と気分が落ち着いてきたからクラスに戻ってきたのに、あんなのに絡まれたらたまらない。
 俺は廊下から教室へは入らず扉の横の壁に背を預けて、ノイズから漏れるようにして聞こえてくる彼等の声に聞き耳をたてた。

「…………ま、請けるだろ。ていうか選択肢なんてないからな」
「どういう意味かしら?」
「そりゃこんな目付き悪い以外非の打ち所がない美人にそんなこと言われちゃあ……」

 状況が見えないのでよく分からないけが、とりあえず声が喧騒に埋もれ聞こえなくなった。新納が睨みでもしたんだろう。
 しかしここでトゲのある口調は収まり、斗真の口調はいつも通りのおどけたものに戻った。

「冗談だよ、そんなキャラじゃないしな。美人だろうがブスだろうがお構い無しだからさ、誰だっていいんだ」
「その言い方じゃとんでもない破廉恥野郎に聞こえるのだけど」

 ていうか破廉恥野郎以外の何者でもない。そしてその破廉恥野郎は俺以外に居ないだろう。斗真が知ったように話す相手は、決まって俺しかいないのだ。

「だから冗談だって、そう真顔で睨むなよ。
 ━━美人だろうがブスだろうが、というよりそんなことどうだっていいんだよ。選択肢がないってのは、なつきにとってその申し出が都合が良いからだ。もちろん破廉恥要素とは関係無く、な」
「……都合が良い?」

 美人だろうがブスだろうが関係無いの、俺? いくら俺でも可愛いに越したことはないんだけど。

「言ったろ、なつきの邪魔さえしなけりゃひととなりなんざ関係なしに多分請けるって」
「……貴方は会って数分して殴ってくるような人物を嫌わないでいれるのかしら?」
「俺は無理だ、けどなつきなら━━」

 いや俺も無理だぞ。殴られたショックで記憶を失ってでもしない限りは。
 斗真の期待と理解はいつも外れた自転車のチェーンのように空回りする。だから俺はアイツが苦手なんだ。
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