選ばれたのは私でした

秘密 (秘翠ミツキ)

文字の大きさ
36 / 42

35

しおりを挟む
「それに性格は最悪だし、教養も皆無で頭も悪し、見た目も残念だし、貴族令嬢としての立ち振りまいだって碌に出来ないし。今この場にいる令嬢達を自分に逆らえないと分かった上で、暴言を浴びせ虐めるとか実に下らない事をして悦ぶなんて、本当陰湿極まり無いよね~。後ね、これから話す事凄~く重要だから確り聞いてくれる?」

いつの間にか扉に背を預け、こちらを見ている青年がいた。そう彼は王太子であるオリヴェルだ。エルヴィーラは状況が呑み込めず呆然とするしか出来ない。

「実の姉の彼女の方が性格も頭も見た目も、何に置いても遥かに優っているのにその彼女を敬う所か、自分より劣っていると勘違いした挙句、蔑む様なろくでなしなんだよ、君は。そんな人間が王太子妃なんてどう考えても向いてないよ。と言うより無理がある。それは僕だけじゃなくて皆思ってると思うな~ははっ」



彼から満面の笑みで淡々と告げられた自分への評価。これまで思っていた自分自身での評価と真逆だった。余りに驚愕し、一言も言葉が出ずに莫迦みたいにただ口を半開きにして座り込んでいた。



「エルヴィーラ……貴女は、自分がお父様達から大切にされてると思ってるみたいだけど、本当にそう思うの?」

暫しの間静まり返った後、アレクシアが口を開いた。

だが、エルヴィーラには姉が何故そんな風に問うのか理解出来ない。
あんなに姉のアレクシアではなく妹のエルヴィーラだけを大切にしていたのを目の当たりにしていた筈なのに、何を言っているのだろう。
両親はいつもエルヴィーラだけを褒め、エルヴィーラだけに何でも欲しい物を買い与え、エルヴィーラだけを抱き締めた。そんな自分が愛されていない訳がないのに。

「エルヴィーラ、周りを良く見て見なさい。貴女は今周りからどう見られている?」

その言葉に、エルヴィーラは眉根を寄せ怪訝そうな表情を浮かべるが、渋々周りを見渡した。そこで初めて気が付いた。
冷たく軽蔑する様な視線が自分に一身に浴びせられている事に……。

目を見開き暫く動けなくなる。そして思い出した様に振り返り、何時も自分と共に行動して来た令嬢達を見遣った。

「わ、私達は関係ありませんわ!」

「エルヴィーラ様から命令されて」

「そうですわ。私達は何もしてないです。全てエルヴィーラ様がご自分でなさって」

「私共に責任などございません」

口々にそう言いながら扇子で口元を隠し後退る。

「何よ‼︎あんなに私の事褒めて憧れだって言ってたじゃないの⁉︎」

「憧れ、ね……」

一人がそう呟くと令嬢達は黙り込むがそれも一瞬の事で、直ぐにクスクスと笑っている声が聞こえた。



ー やだ、ご自分の姿見たことないのかしら? ー

ー 憧れって、無理があり過ぎるでしょうに ー

ー お世辞に決まってるじゃない ー

ー 何一つまともに出来ない癖に ー



手を返した様な令嬢達の態度にエルヴィーラは顔を真っ赤にして、震えた。唇を噛み口を開こうとするも、アレクシアに遮られる。

「今この部屋に貴女を庇おうとしてくれる人は誰一人いないわ。お父様やお母様が本当に貴女の事を考え想い、愛していたのなら……こんな風にはなっていなかった筈。可愛い可愛いと甘やかし与えてるだけなら犬、猫と変わらないわ」  

「アレクシア、それは酷いよ。犬や猫の方が余程躾されるんだから、そんな風に言ったら犬や猫が哀れだよ」

「っ……」

エルヴィーラは姉を睨むと、改めて周りを見渡す。一人一人の令嬢を見遣り、講師、リーゼロット、そしてオリヴェルを見遣った。



今何が起きているのか、分からない。誰も手を差し伸べてくれない。姉にこんなにも酷い扱いを受けいるのに。こんなに可哀想な自分を何故誰も助けてくれないの?

どうして?お父様やお母様がいたら、こんなの許さないわ。

おかしい。おかしい。おかしい……。



「おかしい……こんなの、おかしい‼︎おかしいっ‼︎間違ってる‼︎あんた何かしたんでしょう⁉︎ ここにいる奴等を味方に付ける為に何したのよ⁉︎そうだわ!王太子殿下に色目使ったに決まってるわっ。それで殿下に頼んで私に仕返ししてるんでしょう⁉︎そうじゃなきゃこんな事にっ……私はっ、私は!特別なの‼︎私が、選ばれるの!私よっ‼︎」

エルヴィーラは立ち上がりアレクシアへと掴み掛かった。


しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

処理中です...