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しおりを挟む『君と離縁して、君を別の男へと嫁がせるみたいだよ。こんなに愛らしい君を捨てるなんて叔父上はどうかしている』
あれから、アルフォンスの言葉が頭の中を延々と繰り返す。午後の授業を受けた筈だが、記憶が曖昧で帰るまでの間の事を余り良く覚えていない。レンブラントやカトリーナが色々と話してきたのだけは覚えているが、内容は忘れた。
リゼットは帰ってきてから寝室のベッドに横になり頭からシーツを被った。
クロヴィスが自分と離縁する……どうして?やはり子供過ぎて彼の妻には相応しくないから?あんなに優しくしてくれていたのに、あれは全部嘘だったのだろうか……。
「でも……そう、だよね……」
自分とクロヴィスは好き合って結婚した訳でもなく、政略結婚とも言えない。献上品として、所謂物としてやって来た幼いリゼットを、国王が持て余し王弟であるクロヴィスに押し付けたのだ。ただ、それだけだ。
彼は慈悲深い人だから哀れな自分に優しくしてくれていただけで、本当は嫌だったのかも知れない。リゼットが成長するまでずっと待っていて、十五歳という結婚適齢期になり他所に嫁がせるつもりだったのかも、知れない。
本当なら離縁して終わりで良い筈なのにも関わらず、責任感のある人だから、放り出す事が出来ずに次の嫁ぎ先を探してくれている。リゼットの帰る場所は此処しかないからだ。
『実は愛人が沢山いるとか噂もあるし』
ふと何時かの言葉が頭を過ぎる。よく火のないところに煙は立たないと言う。
「そっか……」
自分はなんて莫迦なんだろう。きっと彼には他に愛する人がいて、その人と結婚したいのだ。自分の所為でずっと我慢していたのだろう。申し訳なさを感じる一方で、孤独感に苛まれる。
私、クロヴィス様に捨てられるんだ……ー。
「リゼット」
ベッドの上で身体を丸めて眠っていた。どれくらい時間が経ったかは分からないが、扉が開いた音の後にクロヴィスの声がした。
「起きているかい?」
足音が近付いて来て、ボンヤリした頭が段々とハッキリしてくる。だが、彼にどんな顔を合わせれば良いのかが分からず、そのままでいた。
「リゼット?」
シーツの上から触れられて、思わず身体をピクリとさせてしまい、起きているのがバレてしまった……。
「大丈夫?シーラから聞いたけど、体調が優れないんだろう。直ぐに医師を呼ぶからね」
帰宅して無言のまま寝室に駆け込んだのだが、どうやらシーラはクロヴィスに適当な言い訳をしてくれたようだ。
「だ、大丈夫です……少し目眩がしてしまって……休んでいれば、治ります」
「本当に?無理してないかい?」
「……はい」
「そう。なら後で何か消化にいい物でも作らせて持って来てあげるから、大人しく休んでいるんだよ」
何時もと変わらず優しいクロヴィスの声と態度に、目の奥が熱くなるのを感じた。
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