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しおりを挟む最近何だか視線が気になる。歩いているだけなのに、周りからヒソヒソされたり見られている。何かしてしまっただろうか……全く心当たりは無い。
「リゼット様、どうかなさいましたか」
「全然食べてないな」
昼休み何時も通り中庭でカトリーナ、レンブラント、ラファエルと昼食を食べていた。ただ、視線の事が気になり余り食が進まない。
「……最近、何と言えば良いのか、皆さんに見られている気がするんです」
リゼットがそう話すと、カトリーナとレンブラントは顔を見合わせる。
「まあ、やっぱり皆気になるんじゃないの?」
黙り込む二人を尻目に、ラファエルは意味あり気に話した。
「何をですか?」
「ラファエル様!宜しかったらこちら召し上がって下さい‼︎」
「ムグッ⁉︎」
リゼットが口を開いた瞬間、カトリーナがいきなり立ち上がり自分のパンをラファエルの口の中に押し込んだ。彼は目を見開き悶える。
「リゼット、教室に戻る前に図書室に用があったのを思い出したんだ。付き合ってくれないか」
そんな中、そう言いながらレンブラントはリゼットを立ち上がらせると、少し強引に引っ張って行く。リゼットは二人のおかしな態度に目を丸くした。
「もう、宜しいんですか」
レンブラントは本を数冊手にすると、図書室を後にする。
「あ、あぁ」
何処か余所余所しい彼に眉根を寄せた。自分は余り鋭い方では無い。どちらかと言うと鈍い。だが、レンブラントやカトリーナが何かを隠しているのを感じた。
「リゼット」
暫く二人は黙り込み、気まずさを感じながら廊下を歩いていると、正面から見慣れた青年が歩いて来た。彼はリゼット達に気がつくと、笑顔で話し掛けてくる。
「兄上……また、こんな時に……」
レンブラントはアルフォンスを見て、顔を引き攣らせた。彼等は決して仲睦まじい兄弟ではないが、そんなに毛嫌いする様な間柄では無かったと思う。だがレンブラントは明らかに嫌がっている。
「レンブラント、お前仮にも兄である僕に対してそんな態度はないんじゃないか?幾ら僕でも、傷つくよ」
彼は言葉とは裏腹に、爽やかに笑って見せた。
「……何か俺達に御用ですか」
「お前ではなく、僕は彼女に用があるんだ」
そう言うとアルフォンスはレンブラントの横を擦り抜けリゼットの前へ立った。
「リゼット、暫くの間は忙しなく気が休まらないだろう。戸惑い、不安に感じているのではないかと心配なんだ。でも大丈夫だよ、君には僕が付いている。僕には何でも話してくれて良いからね」
「?」
両肩にそっと手を置かれ、そう言われた。だが、アルフォンスの言わんとしている事が見えず首を傾げる。
「兄上!リゼットは、まだ……」
「何?叔父上はまだ話してないの?こんな大事な事を本人に話さないなんて、全く薄情な人だね」
「きっと、叔父上には叔父上の考えがあるんですよ……だから、兄上」
「でもさ、もう社交界ではこの話で持ちきりなんだよ?今言わなくても、明日にでもリゼットの耳にも入り知る事になるよ」
「そうかも知れませんが……」
やはりレンブラントも何かを知っている様だ。多分、周囲からの視線と関係しているのだろう。そしてアルフォンスの言葉に、一気に不安を感じた。
「あぁリゼット、そんな不安そうな顔をして可哀想に。大丈夫だよ、薄情な叔父上とは違って君には僕がいるからね。だから、落ち着いて聞いてくれるかな。……クロヴィス叔父上が、君と離縁するそうなんだ」
リゼットは、激しい目眩に襲われた。
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