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「はぁ……」
ユスティーナは昨日の事を思い出して、溜息を吐いた。
優しい彼は何時もちゃんと埋め合わせをしてくれる。昨日だって、あの後夜に彼から手紙が届けられて「昼間はすまなかった。また近い内にお茶をしたい」と書かれていた。
だがその埋め合わせも結局大半はジュディットに潰されてしまうが……。
レナードがジュディットを好きなのは知っている。彼女を見る彼を見れば直ぐに分かる。少し潤んだ熱を帯びた瞳と幸せそうな笑顔。何時かあんな瞳で、あんな笑顔を自分へ向けて貰える事が出来たならばどんなに幸せだろうか……そんな妄想ばかりが膨む。
ユスティーナは自室を出る前に鏡で自分の姿を見た。その瞬間、現実を思い知らされる。ジュディットは、スタイルも良く色気があり、絶世の美女と呼ばれる美貌を持っている。漆黒の艶やかな髪に翡翠色の瞳。家柄も良い。婚約者は王太子で、将来は王太子妃となりやがて王妃となるだろう。
それに比べて自分は赤い髪に灰色の瞳。小柄でスタイルも良くない。あるのは無駄に大きな胸だけだ。逆にみっともない。しかももう十七歳になるのに、顔立ちも幼さが残り子供みたいだ。後は公爵令嬢と言う肩書きだけだ。一応第二王子の婚約者と言う肩書きもあるが、ジュディットの存在の所為もあり寧ろマイナスかも知れない。
「ユスティーナ様、お出掛けですか」
「えぇ、教会へ行く日だから」
侍女のエルマから見送られ、ユスティーナは馬車に乗り込む。月に数回、ユスティーナは教会へと通っている。その理由は慈善活動をする為だ。教会には孤児院が隣接されており、子供達の面倒を見たりシスターの手伝いをしたりとしている。
「ユスティーナ様、何時もありがとうございます」
普段とは違う簡素なドレスの上からエプロンを着用する。髪を簡単に纏め上げて準備は万端だ。
「いえ、余り来られなくて寧ろ申し訳ありません。今日は何を作るんですか?」
この活動をする前は一切調理など出来なかった。お茶一杯すら淹れ方を知らなかった。多分貴族令嬢ならば大半の娘がそうだろう。だが、今は違う。自分で言うのもなんだが、結構板について来たと思う。美味しいお茶の淹れ方から、軽食、少し手の込んだ料理、お菓子、パンだって焼ける。ただ貴族の娘としては何の自慢にもならない。寧ろ引かれるかも知れない……。
「は~い、皆ご飯ですよ」
シスターが声を掛けると外で遊んでいた子供達が一斉に集まって来た。
「あ!ユスティーナお姉ちゃんだ!」
「わ~い!遊んで!」
ユスティーナの姿を見つけるや否や子供達が駆け寄って来て、抱きついてきた。それをユスティーナは笑顔で抱き留める。
「ふふ。お昼ご飯食べたらね?さぁ、手を洗って」
「あ、そうだ。お兄ちゃんも一緒に食べてもいい?」
思い出した様にそう言った少年の名前はリック。歳は八歳で茶髪と大きな瞳が愛らしく、人懐っこくて甘えん坊だ。そして子供達の中でも一段とユスティーナに懐いてくれている。
「お兄ちゃん?」
誰の事だか分からず首を傾げると、シスターのサリヤが説明をしてくれた。
「ユスティーナ様がいらっしゃる前に、子供達数人を連れて市場に買い物に行ったんです。そうしたらこの子が、強面の男の人とぶつかってしまって絡まれたんです。謝っても許して頂けなくて、途方に暮れていたその時、通り掛かったその方に助けて頂いて」
「すごいんだよ!お兄ちゃん、すご~く強いんだ!」
リックはその時の状況を興奮気味に手振り素振りで一生懸命に真似をする。思わず笑ってしまう。
「そうしたらこの子がどうしてもその方と遊びたいと手を握って離さなくて……申し訳ありません」
サリヤは溜息混じりに苦笑しながら、ユスティーナの背後を見遣る。不思議に思い振り返ると、そこには見覚えのある青年が立っていた。
ユスティーナは昨日の事を思い出して、溜息を吐いた。
優しい彼は何時もちゃんと埋め合わせをしてくれる。昨日だって、あの後夜に彼から手紙が届けられて「昼間はすまなかった。また近い内にお茶をしたい」と書かれていた。
だがその埋め合わせも結局大半はジュディットに潰されてしまうが……。
レナードがジュディットを好きなのは知っている。彼女を見る彼を見れば直ぐに分かる。少し潤んだ熱を帯びた瞳と幸せそうな笑顔。何時かあんな瞳で、あんな笑顔を自分へ向けて貰える事が出来たならばどんなに幸せだろうか……そんな妄想ばかりが膨む。
ユスティーナは自室を出る前に鏡で自分の姿を見た。その瞬間、現実を思い知らされる。ジュディットは、スタイルも良く色気があり、絶世の美女と呼ばれる美貌を持っている。漆黒の艶やかな髪に翡翠色の瞳。家柄も良い。婚約者は王太子で、将来は王太子妃となりやがて王妃となるだろう。
それに比べて自分は赤い髪に灰色の瞳。小柄でスタイルも良くない。あるのは無駄に大きな胸だけだ。逆にみっともない。しかももう十七歳になるのに、顔立ちも幼さが残り子供みたいだ。後は公爵令嬢と言う肩書きだけだ。一応第二王子の婚約者と言う肩書きもあるが、ジュディットの存在の所為もあり寧ろマイナスかも知れない。
「ユスティーナ様、お出掛けですか」
「えぇ、教会へ行く日だから」
侍女のエルマから見送られ、ユスティーナは馬車に乗り込む。月に数回、ユスティーナは教会へと通っている。その理由は慈善活動をする為だ。教会には孤児院が隣接されており、子供達の面倒を見たりシスターの手伝いをしたりとしている。
「ユスティーナ様、何時もありがとうございます」
普段とは違う簡素なドレスの上からエプロンを着用する。髪を簡単に纏め上げて準備は万端だ。
「いえ、余り来られなくて寧ろ申し訳ありません。今日は何を作るんですか?」
この活動をする前は一切調理など出来なかった。お茶一杯すら淹れ方を知らなかった。多分貴族令嬢ならば大半の娘がそうだろう。だが、今は違う。自分で言うのもなんだが、結構板について来たと思う。美味しいお茶の淹れ方から、軽食、少し手の込んだ料理、お菓子、パンだって焼ける。ただ貴族の娘としては何の自慢にもならない。寧ろ引かれるかも知れない……。
「は~い、皆ご飯ですよ」
シスターが声を掛けると外で遊んでいた子供達が一斉に集まって来た。
「あ!ユスティーナお姉ちゃんだ!」
「わ~い!遊んで!」
ユスティーナの姿を見つけるや否や子供達が駆け寄って来て、抱きついてきた。それをユスティーナは笑顔で抱き留める。
「ふふ。お昼ご飯食べたらね?さぁ、手を洗って」
「あ、そうだ。お兄ちゃんも一緒に食べてもいい?」
思い出した様にそう言った少年の名前はリック。歳は八歳で茶髪と大きな瞳が愛らしく、人懐っこくて甘えん坊だ。そして子供達の中でも一段とユスティーナに懐いてくれている。
「お兄ちゃん?」
誰の事だか分からず首を傾げると、シスターのサリヤが説明をしてくれた。
「ユスティーナ様がいらっしゃる前に、子供達数人を連れて市場に買い物に行ったんです。そうしたらこの子が、強面の男の人とぶつかってしまって絡まれたんです。謝っても許して頂けなくて、途方に暮れていたその時、通り掛かったその方に助けて頂いて」
「すごいんだよ!お兄ちゃん、すご~く強いんだ!」
リックはその時の状況を興奮気味に手振り素振りで一生懸命に真似をする。思わず笑ってしまう。
「そうしたらこの子がどうしてもその方と遊びたいと手を握って離さなくて……申し訳ありません」
サリヤは溜息混じりに苦笑しながら、ユスティーナの背後を見遣る。不思議に思い振り返ると、そこには見覚えのある青年が立っていた。
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