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しおりを挟むユスティーナは急いで身なりを整えていた。姿見の前でおかしい所がないかクルクルと回りながら入念に確認をする。
「うん、大丈夫ね!」
最後に鏡に向かって笑顔を作り確認をした。暫しそのまま固まる。
それにしても、まさかレナード様が訪ねていらっしゃるなんてー。
「レナード様、遅くなり申し訳ございません!」
彼の待つ応接間へユスティーナは入るなり頭を下げた。
「いや、こちらこそすまない。何の連絡もなしに来てしまって」
ユスティーナがレナードの正面に座ると、侍女がユスティーナの分のお茶を淹れてくれる。そして侍女が部屋から出て行くと、彼と二人きりとなった。
「レナード様から訪ねて来て下さるなんて、何か急用ですか?」
「あ、いや、たまたま近くに来たので君の顔を見に寄っただけなんだ。特に用がある訳じゃない」
「そうなんですね。でもレナード様が態々いらして下さるなんて嬉しいです」
ユスティーナは、はにかんだ。
◆◆◆
最近ユスティーナに会う約束を取り付けようと手紙を出すが、毎回気のない返事ばかりだった。忙しく日程が合わないとあり、その事にレナードは別段気に留めることもなく、そうなのかと思っていたら何時の間にか三ヶ月が過ぎていた。彼女と婚約して数年。こんな事は初めてかも知れない。流石に少し気になる。
そして今日、レナードはオリヴェル家の屋敷を訪問した。無論、約束などはしていない。と言うより約束を取り付ける事が出来ないので、取り敢えず足を運ぶ事にしたのだ。
使用人に応接間に通され暫くすると、バタバタと慌ただしい音がしてから扉が開いたかと思ったら、かなり慌てた様子でユスティーナが入って来た。
「そうなんですね。でもレナード様が態々いらして下さるなんて嬉しいです」
ユスティーナはそう言って微笑む。その姿を見て、特に彼女に変わった様子はないと感じた。やはりただ単に忙しいだけだった様だ。
暫くレナードとユスティーナはたわいの無い話をした。思えばこうやって彼女と二人でゆっくり話すのはかなり久々だ。
「綺麗だな」
「え」
「蒼い耳飾りか。ずっと触れているな。気に入っているのか」
先程から癖なのか、しきりに話の途中で彼女は耳に触れていた。無意識だったらしく、指摘すると目を丸くしていた。
「あ、はい。贈り物でして……」
「贈り物?友人からか?」
レナードは眉を少し上げてユスティーナを見遣る。
「いえ、その……弟です」
「ロイドか」
彼女の弟のロイドはレナードと同じ騎士団に所属している。と言っても彼は滅多に騎士団に姿を現さない。所謂形式的なもので、実態がないのが実情だ。故に対して面識もない。ただユスティーナとロイド姉弟が仲が良い事は耳にした事はあり、納得をした。
「それにしても知らなかった。君が恵まれない子供達に施しを与えているなんて、正に淑女の鑑だな。感心した」
レナードは先程までのユスティーナとの話題に会話を戻す。レナードが最近忙しくしていた理由を聞いた所、慈善活動をしていると彼女は話した。初耳だった。
「そんな大それた事ではないんです。ただ子供達と遊んだり、シスター方のお手伝いをしている程度で、正直言って余りお役に立てているかは分かりません。ただ、少しでも子供達が笑顔になってくれたらとは思っています」
あの後、暫く彼女と雑談を交わしたレナードは帰路についた。馬車に揺られながら、ユスティーナとの会話を思い出す。
今度、時間が出来たら行ってみるかー。
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