私とお姉さんのチェアリング・セプテンバー

nanami360

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プロローグ

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その日、私はいつものようにYouTubeを流しっぱなしにしていた。

勝手に続いていくプレイリストが、
私の意志と無関係にEarth, Wind & Fire の Septemberを流した。
まるで私の大事な思い出をつつくみたいに──。

この曲を聞くと、心臓が止まりそうになる。 
胸が熱くなり、鼻の奥がきゅんと甘く痛む。 
目の奥がうるんで、我慢しても言うことを聞いてくれなくて──自然に涙がこぼれ落ちる。 
頭がぽうっと熱くなって、どうしたらいいのか分からなくなる。 
恥ずかしくて、切なくて──胸の奥で甘い気持ちがふくらんで、もう止められなくなる。 
こんな風になってしまうから、普段はこの曲を聞かないようにしている。

聞かないようにしていても、避けきることはできない。
この曲は、いつもどこかでダンスしている。
タイトルを知らなくても「ああこの曲、聞いたことある」と誰もがきっと思うだろう。
CMやBGMとして、過去でも現在でも、世界中をキラキラと踊り歩いている。
だから今みたいに、Septemberはぶつかってくる──まるで交通事故だ。

ぶつかる度に、私は高校1年生の9月を思い出す。
近所の海岸で、私の「お姉さん」に出会った特別な9月を。

これは、私とお姉さんが「何もしなかった話」だ。
海辺に持ち込んだ椅子に座って、話をして、笑ったり泣いたり怒ったり、ボーっとしたりする。
山でも座ったし川でも座った。
だけどしてた事は変わらない。
話して笑って、ボーっとした。
ただそれだけの話。

それだけなのに、私は世界に自分の居場所を見つける事ができた。

そんな私とお姉さんの話だ。
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