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September
003 普通の女子高生
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『現代女子高生事情を聴かせなさい!』
と言われても、私が高校に入学してから半年も経っていない。
しかも、一学期は女子高生という枠に入れないまま終わった。
私は何かが合わなかった。
周りの周波数にチューニングできない“異物”だった。
あの世界の中に、自分の居場所を見つける事ができなかったのである。
そんな私の事情なんて、“現代女子高生”とは大違いだ。
「さっき言った通り、私は学校に行けてないんですよ。だから現代の女子高生っぽい事なんて何も無いですよ?」
「学校に行ってないってのは最初から? すぐ行けなくなったの? ああ、言いたくなかったら言わなくていいからね。」
『聴かせなさい!』といいながら『言わなくてもいい』とは勝手な!
とはいえ、ここまで話したんだ、全部ぶっちゃけてしまおう。
「最初は……行けてたんですよねー。それが、なんかちょっとづつ……違うなって思って。
行くの、なんか嫌だな……って感じが増えていって……。
それが、夏休みが終わる頃……完全に『もうヤダ、行きたくない!』ってなっちゃったんですよ……。
これ、もう辞めた方がいいですよね……。」
高校は義務教育ではない。
行きたくないなら、辞めればいい。
辞めるでもなく、行くでもなくグズグズしている私に母が怒るのは当然だ。
学費だってただじゃない。
「決断できない私が悪いわけだから……自業自得ですよね。」
そんな風に、自虐的に言ってみる。
しかしお姉さんの言う事は、完全に予想外の物だった。
「いやいや、完全に”普通の女子高生”らしい悩みじゃーん! 初々しくって甘酸っぱくて、青春って感じ! そういう話が聞きたかった!」
と満足そうに笑っている。
……意味が分からない。
「なんで普通の女子高生なんですか? 学校に行けずに辞めもしないでフラフラしてるのが普通ですか!?」
少しカチンときた私は、強めの語気でいう。
だけどお姉さんは全く悪びれない。
「普通だね。知ってる? ”9月病”って言葉。
結構いるんだよ。夏休み明けぐらいから学校に行けなくなる高校生。」
全く知らなかった。9月病? 5月病ではなく?
そんな言葉があるって……本当によくある事なの?
私は少し混乱する。
「でも、9月病になるなんて当たり前だよ。ろここちゃん、中学受験した? してないでしょ。
という事は中学のメンバーは、ほぼ小学校と同じでしょ? それに、中学1年のメンタルなんて子供も同然だよ。
全く知らない同級生とだって『今日から友達~!』なんて言って走り出すようなレベルだよ。
高校年代にもなって、そんなメンタルの子はまずいないからさー。周りが全然知らない人ってだけでなかなかのストレスだよ。」
確かにそうだった。中学の同級生は、元々友達か、友達の友達だ。だから異物感も違和感もなく、当たり前のように馴染んでいた。いや、さすがに走り出したりはしなかったけど。
でも高校は違う。
ほぼ全員が知らない人。
思い返せば、その時点で私は拒絶反応が出ていたのかもしれない。
お姉さんは続ける。
「その上さー、勉強の質も一段上がるじゃん? ギリギリ合格! ぐらいの学力で入学した子は速攻落ちぶれるよ。
無理して通っていても、数か月で夏休みに突入でしょ? 夏休みって一か月ぐらいある? もっと? 学校がストレスになっている子が、一か月も休んだらそりゃー行けなくなるよー。
学校のスケジュールが、9月病を自然と生み出す構造をしてるんだよ。
だからろここちゃんは完全に普通。当たり前。悪いのは学校。
堂々とふんぞり返って『勝手に営業中って看板出してるだけ』って言ってればいいんだよ。」
呆れた。
そんな考え方があるのか……していいのか?
なにか頭の中がひっくり返るような気分だ。
「そ、そんな風に思っていいんですか? お金だってかけてもらってるのに行かないなんて……やっぱり私が悪いじゃないですか……。」
「ろここちゃんはさー、ただ『行きたくないからサボってる』わけじゃないでしょ。
もしそうなら、私だって『じゃあ辞めちゃえよ』って言うよ。でも違うじゃん?
行きたい気持ちはあるのに、地球の重力が強すぎて動けないって感じだよね。
そういう子に必要なのは、『行け!』って叱ることじゃなくて、
君を動けなくしている“心の重りの原因”を一緒に見つけることだよ。
それをしない大人が悪い!
大人はわかってくれない!
学校カリキュラムを破壊しろ!
封建的学校制度を粉砕しろ!
発泡酒を放逐してビールの税金を下げろ~!
冷凍パスタの量をあと20g増やせ!
スーパーの半額シールに群がるゾンビを駆逐しろ!私が買えなくなるだろが!」
お姉さんは拳を突き上げて、一人でシュプレヒコールを叫ぶ。
なんだコレは……。
と言われても、私が高校に入学してから半年も経っていない。
しかも、一学期は女子高生という枠に入れないまま終わった。
私は何かが合わなかった。
周りの周波数にチューニングできない“異物”だった。
あの世界の中に、自分の居場所を見つける事ができなかったのである。
そんな私の事情なんて、“現代女子高生”とは大違いだ。
「さっき言った通り、私は学校に行けてないんですよ。だから現代の女子高生っぽい事なんて何も無いですよ?」
「学校に行ってないってのは最初から? すぐ行けなくなったの? ああ、言いたくなかったら言わなくていいからね。」
『聴かせなさい!』といいながら『言わなくてもいい』とは勝手な!
とはいえ、ここまで話したんだ、全部ぶっちゃけてしまおう。
「最初は……行けてたんですよねー。それが、なんかちょっとづつ……違うなって思って。
行くの、なんか嫌だな……って感じが増えていって……。
それが、夏休みが終わる頃……完全に『もうヤダ、行きたくない!』ってなっちゃったんですよ……。
これ、もう辞めた方がいいですよね……。」
高校は義務教育ではない。
行きたくないなら、辞めればいい。
辞めるでもなく、行くでもなくグズグズしている私に母が怒るのは当然だ。
学費だってただじゃない。
「決断できない私が悪いわけだから……自業自得ですよね。」
そんな風に、自虐的に言ってみる。
しかしお姉さんの言う事は、完全に予想外の物だった。
「いやいや、完全に”普通の女子高生”らしい悩みじゃーん! 初々しくって甘酸っぱくて、青春って感じ! そういう話が聞きたかった!」
と満足そうに笑っている。
……意味が分からない。
「なんで普通の女子高生なんですか? 学校に行けずに辞めもしないでフラフラしてるのが普通ですか!?」
少しカチンときた私は、強めの語気でいう。
だけどお姉さんは全く悪びれない。
「普通だね。知ってる? ”9月病”って言葉。
結構いるんだよ。夏休み明けぐらいから学校に行けなくなる高校生。」
全く知らなかった。9月病? 5月病ではなく?
そんな言葉があるって……本当によくある事なの?
私は少し混乱する。
「でも、9月病になるなんて当たり前だよ。ろここちゃん、中学受験した? してないでしょ。
という事は中学のメンバーは、ほぼ小学校と同じでしょ? それに、中学1年のメンタルなんて子供も同然だよ。
全く知らない同級生とだって『今日から友達~!』なんて言って走り出すようなレベルだよ。
高校年代にもなって、そんなメンタルの子はまずいないからさー。周りが全然知らない人ってだけでなかなかのストレスだよ。」
確かにそうだった。中学の同級生は、元々友達か、友達の友達だ。だから異物感も違和感もなく、当たり前のように馴染んでいた。いや、さすがに走り出したりはしなかったけど。
でも高校は違う。
ほぼ全員が知らない人。
思い返せば、その時点で私は拒絶反応が出ていたのかもしれない。
お姉さんは続ける。
「その上さー、勉強の質も一段上がるじゃん? ギリギリ合格! ぐらいの学力で入学した子は速攻落ちぶれるよ。
無理して通っていても、数か月で夏休みに突入でしょ? 夏休みって一か月ぐらいある? もっと? 学校がストレスになっている子が、一か月も休んだらそりゃー行けなくなるよー。
学校のスケジュールが、9月病を自然と生み出す構造をしてるんだよ。
だからろここちゃんは完全に普通。当たり前。悪いのは学校。
堂々とふんぞり返って『勝手に営業中って看板出してるだけ』って言ってればいいんだよ。」
呆れた。
そんな考え方があるのか……していいのか?
なにか頭の中がひっくり返るような気分だ。
「そ、そんな風に思っていいんですか? お金だってかけてもらってるのに行かないなんて……やっぱり私が悪いじゃないですか……。」
「ろここちゃんはさー、ただ『行きたくないからサボってる』わけじゃないでしょ。
もしそうなら、私だって『じゃあ辞めちゃえよ』って言うよ。でも違うじゃん?
行きたい気持ちはあるのに、地球の重力が強すぎて動けないって感じだよね。
そういう子に必要なのは、『行け!』って叱ることじゃなくて、
君を動けなくしている“心の重りの原因”を一緒に見つけることだよ。
それをしない大人が悪い!
大人はわかってくれない!
学校カリキュラムを破壊しろ!
封建的学校制度を粉砕しろ!
発泡酒を放逐してビールの税金を下げろ~!
冷凍パスタの量をあと20g増やせ!
スーパーの半額シールに群がるゾンビを駆逐しろ!私が買えなくなるだろが!」
お姉さんは拳を突き上げて、一人でシュプレヒコールを叫ぶ。
なんだコレは……。
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