転校生をバカにすることなかれ

折原さゆみ

文字の大きさ
25 / 58
続編~中学校編①~

しおりを挟む
 テストが終わり、部活動が再開した。私と彼女は陸上部で日々練習に励んでいた。


 ある日の週末、陸上の市内大会が総合グラウンドで行われることになった。そして、同日にはサッカーの試合も別のグラウンドで行われることになっていた。

「なあ、俺のカッコイイ姿を見に来いよ。」

 例のイケメンバカに試合を見に来いと誘われた。誘われたのは、大会が行われる週の月曜日の朝だった。朝、登校して開口一番に言われた言葉だ。挨拶よりも先に用件とはいい御身分である。


「あいにく、私たち陸上部も大会があるので無理です。そもそも、その日はどの部活も大会で応援なんて来てくれないでしょう。」

 そうなのだ。市内大会が一斉に行われるために、どの部活も大会があるのだ。

「そこを何とか頼むよ。おまえ、どうせ、選手じゃないんだろ。先輩の応援をするくらいなら、俺の応援に来いよ。俺なんて一年なのにレギュラーなんだぜ。」


 自信ありげにいうのだが、レギュラーに選ばれるのは当然である。サッカーは11人で1チームとなるが、私の学校のサッカー部の部員はなんと、12人。試合のコートには11人しか出ることはできないが、交代もあるから、全員ユニホームをもらえる。すごいもくそもない。

 それに、うわさによると、12人のうち、2人がゴールキーパーらしいので、もれなく全員試合に出ることができるというわけだ。


「としや君はレギュラーなんですね。すごいです。私なんて、出る人がいないから、無理やり出るという感じなので、尊敬します。」

 私たちの会話に割り込んできたのは、別府えにしだ。

「いや、別府さんがその種目に出たいといったからでしょう。だって、その種目は……。」

「できれば応援に行きたいのですが、私も選ばれたからには走る義務があります。申し訳ありません。その代わりに、今日から一緒に帰りましょう。そうしたら、俊哉君の頑張りを見ることができなくても、頑張りを聞くことはできますから。」


「そ、そうか。まあ、大会なら仕方ないよな。でも、俺たち、結構部活が長引いちゃうから、待つことになると思うけど。」

「構いません。武田さんと一緒に待ちますから、終わるまでの間にいろいろ積もる話もできるでしょうし。」

 よくわからないうちに、私と別府えにしとイケメンバカの三人で帰宅することになってしまった。


 一緒に帰って気付いたのだが、彼女は、私たちの家と割と近いところにあるアパートに住んでいるようだった。



 待ちたくもないイケメンバカを待つ毎日だったが、彼女の話を聞くのは思いのほか楽しかった。私は生まれてから一度も引っ越しも転校もしたことがないので、彼女が話す転校話は、心ひかれる興味深い内容のものばかりだった。

「それでね、私は転校することになったのだけど、そこで、ふと気付いたのよ。幼馴染を観察するのは本当に面白いことだと。私には縁のないものだから、見ていて飽きないわ。」


「幼馴染なんていいものでもありませんよ。だって、何でも一緒にひとくくりにされてしまうから。」

 
「それがいいという人がいるのでしょう。それなら、いっそ私がそれを壊してもいいけれど。」
転校についての話しをしていたはずが、どうやら、別府えにしは、幼馴染という関係にかなり固執しているということが改めてわかった。

 彼女の物騒な発言は丸きりの冗談とも思えないほど、真面目で真剣な響きであった。


「本当ですか。」

「冗談に決まっているでしょう。そんなひどいことをする人に私は見えているかな。」

「そうは見えないけど……。」




「まあ、あなたは他の幼馴染と違って、少しは面白そうではあるけれど。それもどうなるのか……。」

 最後の言葉はぼそっと独り言のように言われて、聞き取れなかった。



 残念ながら、部活動の大会は、私は風邪で休むことになってしまった。風邪の原因はわかっている。私が買って読んでいる漫画の新刊が出ていて、それを買って家で読もうとしたら、最初から読みたくなってしまい、1巻から徹夜で読んでしまったことが原因だ。

 漫画は現在26巻まで発売されていて、それを1巻から読み始めたので、読み終わるにはそれなりの時間がかかるだろう。その漫画は、私が嫌いな幼馴染展開にはならない。さらには幼馴染という関係性すら出てこないバトルものだった。

 お風呂もそこそこに、髪も乾かさずにみふけってしまったのだ。私の髪の長さは、肩くらいまである。そのせいで、濡れた髪が冷たくなってしまい、そのまま徹夜をしてしまったので、風邪をひいてしまったというわけだ。

 漫画の新刊を買ったのは、木曜日。次の日の金曜日は少し熱っぽい気がしていた。そして、部活が終わり、家に帰って熱を測ったら38度という高熱を出してしまったのだ。

なんとも情けない休み方である。そのため、私は陸上部の顧問に休みの連絡を入れた。顧問は苦笑いをしながらも、ゆっくり休みなさいと言ってくれた。


 私が大会を休むことは、当然、同じ部活の別府えにしにも伝わることだ。それは当たり前のことで、何も思わない。しかし、どうしてイケメンバカまで私の家に見舞いに来るのだろうか。

 最近はめっきりイケメンバカの家との連絡は途絶えていたはずで、私の親もわざわざ私の情報を隣の家に流すことはしていない。そもそも、情報を流すなと親にはきつく言っているのだ。それを破るとも思えない。


 それなのに、別府えにしは、イケメンバカと一緒に私の家に見舞いに来た。そして、うるさいくらいに自分の陸上部の大会のこと、イケメンバカはバカで、サッカーの試合について延々と私に話し出した。

 二人を見て思ったのだが、二人の距離は異様に近かった。まるで、付き合っている恋人同士の距離である。私はベットで寝ていたのだが、彼らは私のベットの横から話しかけているのだが、二人は密着して隣同士に座っていた。そんなに私の部屋は狭くないはずだ。


 これは面倒なことが起こりそうだと、私の本能が告げているのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...