転校生をバカにすることなかれ

折原さゆみ

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続編~中学校編②~

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「別府えにしです。兵庫県から来ました。よろしくお願いします。」

 そいつが転校してきたのは、中学二年の六月のことだった。こんな時期に転校生は珍しい。クラスのだれもが思ったに違いない。オレも例外ではなかった。

 転校生は女子だった。見た目は、はかなそうな、おとなしそうな、とにかくオレが今までにあったことがないタイプだった。ただし、人を見た目で判断してはいけないのは世の常識だ。もしかしたら彼女も、見た目に反して、性格が悪いのかもしれない。あのくそ女も、見た目だけは、結構可愛らしいが、中身はクズなのがいい例である。


 転校生は別に珍しいわけではないが、六月という、中途半端な時期の転校生はなかなかいない。クラスメイトはこぞって転校生を取り囲んで質問を始めた。

「どうしてこんな変な時期に転校してきたの。」

「部活は何部だったの。」

「前の学校はどうだった。うちに来た感想は。」

 次々と繰り出される質問に、彼女は嫌な顔一つせずに返答する。今まで何度も転校してきたのだろうか。質問に答える様子は、転校に慣れているという印象を抱かせる。


「変な時期なのは父親の仕事の都合かな。」

「部活は陸上部に入っていたよ。専門は短距離で走るのが好き。」

「前の学校がどうだったかといえば……。けっこう田舎だった気がする。一学年の人数もここより少なかったし。この学校にはまだ来たばかりだから、何とも言えないわ。」

 一通り、クラスメイトの質問に答えた転校生は、今度は自らクラスメイトに質問する。


「このクラスで、幼馴染同士の人はいるのかしら。」

 何を質問するのかと思えば、幼馴染同士の人がクラスにいるのかという質問。それはどういう意図があってのものだろうか。転校生には、幼馴染という言葉に縁がないので、ぜひ見ておきたいということか。それとも、他に理由があるのか。

「それなら、中里幸太郎(なかさとこうたろう)と、福島千景(ふくしまちかげ)の二人が幼馴染だよ。」

「そうそう。この二人は、幼馴染お似合いカップルだよ。まあ、ちかげの方にちょっと問題があるけど、でも、問題がある方が見ている方は面白いからね。」

「それは言いすぎでしょ。でも、なんやかんや言って、ちかげはこうたろうのことが好きみたいだから、何とも言えないな。」

 突然の転校生の質問に、特に疑問を持つことなく、バカ正直に質問に答えるクラスメイト。ちかげとは幼馴染といえなくもない関係だが、お似合いカップルでは断じてない。これだけは否定しておかなければならない。これ以上、うその情報を他人に広めたくはない。

「そうなんだ。いいなあ、同い年の子と、ずっと一緒なんて。私には縁のないものだから。」

 自分から幼馴染の話をしたのに、急に悲しそうに話し出したので、クラスメイトは困惑している。遠くからその様子を眺めていたオレはつい、声をかけてしまった。くそ女とお似合いのカップルであることを否定しなければならないのに、口から出たのは違う言葉だった。



「幼馴染なんていいことなんて一つもないぞ。」

「幼馴染はいいわよお。」

 オレの声にかぶせるようにしてきたのは、オレの悩みの種、幼馴染のくそ女だった。

「あら、あなたたちが幼馴染の二人かしら。見事に言葉がハモっていて、話通り、お似合いカップルね。」

 タイミング悪く、くそ女と言葉が被ってしまったせいで、彼女に誤解されそうである。

「いや、これはたまたまだ。オレはこんな女、大嫌いだ。」

「そんなこと言って、本当は私のことが大好きなくせに。私が他の男と話しているだけで怒る癖に。」

「ばか、それはお前の勘違いだろ。オレは断じてそんなことはしない。」


 くそ女が余計なことを言うせいで、つい反論してしまう。転校生の目の前で喧嘩を始めてしまった。このくそ女を前にすると、どうにも感情が抑えられなくなってしまう。ちらっと彼女の方を見ると、口を押えて笑っていた。笑い方に品があって、思わず見とれてしまった。



「本当に仲がいいのね。今回も壊しがいがあるわ。」

 笑いながら、ぼそっとつぶやいた言葉の意味をオレは深く考えることはしなかった。いや、考えたくても、目の前のくそ女の喧嘩に夢中で考える余裕はなかった。

 このとき、声をかけなければよかったなんて思うのは、彼女が転校した後のことだった。
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