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8夏休み明け~転校生②~
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「では、本日のお題は『転校生』です。転校生についての意見をそれぞれ述べてください。まずは陽咲さん」
「ハイ。私は転校生と言えば……」
「待って、どうして毎回、何かあるたびに私の家に集まることになっているの?」
二学期が始まり、初めての週末を迎えた。いつものメンバーが、なぜか私の家に集まっていた。すでに固定された、芳子にこなで、麗華が私の家に勢ぞろいしている。そして、今回はさらに一人増えていた。陽咲は妹なのでいるのは当たり前だ。
「あ、すいません。ええと、こなでさんから誘われて来ました。こういう風に、誰かの家に遊びに誘われることって、なかなかなくて。ご迷惑でしたか?」
「迷惑ではないよ。迷惑ではないけど」
「ならいいじゃない?何が問題なの。それに、この家は私と喜咲の家なんだから、喜咲がダメと言っても、私がOKしたら大丈夫だよ。私はもちろん、山下さんのことは歓迎するよ!」
現在、私と陽咲、芳子にこなで、麗華と転校生の山下さんの6人は、私の部屋で窮屈になりながらも、床に集まって座っていた。
「トントン」
ガチャリ。ノックとほぼ同時にくそ親が顔を出す。手にはお盆で、人数分のお茶がのっていた。持ってきてくれたのはありがたいが、ノックと同時に部屋に入ってくるのはやめて欲しい。
「喜咲も陽咲も、高校生活を楽しんでいるようで何よりだわ。何かあったら遠慮なく、私に言ってちょうだいね」
珍しく、お茶を置いて、母親はその場を離れていく、いつもなら根掘り葉掘り、私たちに質問したり、私たちの会話に無理やり参加するのだが、どうしたことだろう。
「お母さんが私たちの会話に興味ないなんて珍しいね、明日、雨でも降るかな」
私と同じことを思ったらしい陽咲が、私の言葉を代弁する。
「いや、ただ単に、はまっているゲームに夢中で、私たちに時間を割くのすら惜しいということでしょ」
「ゴホン」
芳子の咳払いの音で、一同の視線は芳子に集まった。
「話が脱線しているようですが、今日のお題を忘れてはいませんよね」
「あ、あの私自身が転校生ってこともありますけど、転校生の何を語るんですか?」
ここに勇者がいた。転校生の山下さんは怖いもの知らずのようで、芳子の言葉に疑問を投げかける。疑問に思っていても、ここはおとなしく、彼女たちのよくわからない議論につき合うのが定石である。そうすれば、話はこじれることはないので、彼女たちのネタが尽きれば解散になる。
「よくぞ聞いてくれました。絵怜さん、あなたには今後、私たちの定例会議に参加してもらおうと思っています。そこで、あなたが今体験している「転校」という素材で、まずは慣れてもらうかと」
「慣れる?」
可愛らしく首をかしげる山下さんに、容赦なく畳みかける芳子。予想されていたことが起きてしまった。芳子たちの攻撃に、果たして山下さんは耐えられるだろうか。私は、勝手に謎の定例会議のメンバーにされてしまった彼女に同情するが、一つ確認しなければならないことがある。
「ねえ、山下さんって、オタクなの?」
そう、その一点が気になった。もし、彼女がオタクではなかったのならば、いくら転校生属性が珍しいからと言って、私たちのグループに招き入れるわけにはいかない。芳子たちはいい人ではあるが、一般人の非オタにとっては、いい人ではないかもしれない。早めに彼女がどちらか確認する必要がある。
「オタク?ううん、私はオタクだと思うけど、芳子たちはオタクじゃないの?」
自分をオタクだと認めた山下さんだが、その自己申告したオタクは、どれくらいのものだろうか。芳子たち、はたまたくそ両親ほどのものか、それとも私くらいの普通のオタクか。それとも、にわかなのにオタクぶっている程度なのか、それがかなり重要な問題になってくる。
しかし、オタクの問題については、すでに彼女たちが調査済みだったらしい。芳子たちにバカにされてしまった。
「そんなこと、私たちが先に調査済みに決まっているでしょ。非オタだったら、いくら転校生だからって、うちらのグループに誘わないって」
「いまさら、そんな確認するなんて、喜咲ってやっぱり面白いねえ」
「私の姉はこんなところがかわいいところだから、気にしなくていいよ」
「私は、最初から知っていることだと思っていました」
山下さんに良かれと思っての質問だったのに、こうも皆にぼろくそ言われてしまうとは思っていなかった。さて、どのように挽回していこうか。オタクというのならば、定番の質問でもしてみようか。
「じゃ、じゃあ、山下さんが一番好きなアニメとか漫画は何?」
私は、山下さんに好きなアニメや漫画の傾向を聞こうと質問する。どんなアニメやマンガが好きかによって、彼女がどんなタイプのオタクなのか判断することにしよう。
「うわ。いきなり直球な質問だね。まあ、気になるところではあるね。そこまで詳しく調査はしていないから」
「気になるとはいえ、開き直ると、唐突に核心に迫るのは、どうかと思うけど?」
「いや、ただ単にやけになっているんでしょ」
「でも、私も山下さんの趣味は気になります!」
不満を交えながらも、興味津々に山下さんに見つめる陽咲たち。彼女たちも気になっていたようだ。とはいえ、3人の興味津々な視線に耐え切れず、山下さんは視線をさまよわせて、困惑していた。
確かに、彼女たちに初見でじっと見つめられると困惑する気持ちはわかる。そんなことを言っても、あいにく、私に彼女たちの暴走を止めるすべはない。あのくそ両親と同等のやばさを持っているオタクたちだ。最初に質問を振ったのは私だが、私には、後方で彼女の動向を生暖かく見守ることしかできない。
まあ、芳子たちはくそ両親よりも全然ましで、よき親友ではある。
「えっと、そうですね。今一番は待っている漫画は」
そんなことを考えているうちに、彼女は答える覚悟を決めたようだ。
『漫画は?』
彼女たちの声がきれいに調和した。ごくりと山下さんは喉を鳴らし、ある漫画タイトルを挙げた。
「『鬼の盾』、です」
タイトルを発表後、なぜか恥ずかしそうにする山下さんだったが、彼女の挙げた答えは、彼女たちに衝撃を与えた。
『マジか』
私も彼女たちと同じ心の内だったと思う。山下さん以外のこの場にいるメンバーの心が一致した瞬間だった。
「ハイ。私は転校生と言えば……」
「待って、どうして毎回、何かあるたびに私の家に集まることになっているの?」
二学期が始まり、初めての週末を迎えた。いつものメンバーが、なぜか私の家に集まっていた。すでに固定された、芳子にこなで、麗華が私の家に勢ぞろいしている。そして、今回はさらに一人増えていた。陽咲は妹なのでいるのは当たり前だ。
「あ、すいません。ええと、こなでさんから誘われて来ました。こういう風に、誰かの家に遊びに誘われることって、なかなかなくて。ご迷惑でしたか?」
「迷惑ではないよ。迷惑ではないけど」
「ならいいじゃない?何が問題なの。それに、この家は私と喜咲の家なんだから、喜咲がダメと言っても、私がOKしたら大丈夫だよ。私はもちろん、山下さんのことは歓迎するよ!」
現在、私と陽咲、芳子にこなで、麗華と転校生の山下さんの6人は、私の部屋で窮屈になりながらも、床に集まって座っていた。
「トントン」
ガチャリ。ノックとほぼ同時にくそ親が顔を出す。手にはお盆で、人数分のお茶がのっていた。持ってきてくれたのはありがたいが、ノックと同時に部屋に入ってくるのはやめて欲しい。
「喜咲も陽咲も、高校生活を楽しんでいるようで何よりだわ。何かあったら遠慮なく、私に言ってちょうだいね」
珍しく、お茶を置いて、母親はその場を離れていく、いつもなら根掘り葉掘り、私たちに質問したり、私たちの会話に無理やり参加するのだが、どうしたことだろう。
「お母さんが私たちの会話に興味ないなんて珍しいね、明日、雨でも降るかな」
私と同じことを思ったらしい陽咲が、私の言葉を代弁する。
「いや、ただ単に、はまっているゲームに夢中で、私たちに時間を割くのすら惜しいということでしょ」
「ゴホン」
芳子の咳払いの音で、一同の視線は芳子に集まった。
「話が脱線しているようですが、今日のお題を忘れてはいませんよね」
「あ、あの私自身が転校生ってこともありますけど、転校生の何を語るんですか?」
ここに勇者がいた。転校生の山下さんは怖いもの知らずのようで、芳子の言葉に疑問を投げかける。疑問に思っていても、ここはおとなしく、彼女たちのよくわからない議論につき合うのが定石である。そうすれば、話はこじれることはないので、彼女たちのネタが尽きれば解散になる。
「よくぞ聞いてくれました。絵怜さん、あなたには今後、私たちの定例会議に参加してもらおうと思っています。そこで、あなたが今体験している「転校」という素材で、まずは慣れてもらうかと」
「慣れる?」
可愛らしく首をかしげる山下さんに、容赦なく畳みかける芳子。予想されていたことが起きてしまった。芳子たちの攻撃に、果たして山下さんは耐えられるだろうか。私は、勝手に謎の定例会議のメンバーにされてしまった彼女に同情するが、一つ確認しなければならないことがある。
「ねえ、山下さんって、オタクなの?」
そう、その一点が気になった。もし、彼女がオタクではなかったのならば、いくら転校生属性が珍しいからと言って、私たちのグループに招き入れるわけにはいかない。芳子たちはいい人ではあるが、一般人の非オタにとっては、いい人ではないかもしれない。早めに彼女がどちらか確認する必要がある。
「オタク?ううん、私はオタクだと思うけど、芳子たちはオタクじゃないの?」
自分をオタクだと認めた山下さんだが、その自己申告したオタクは、どれくらいのものだろうか。芳子たち、はたまたくそ両親ほどのものか、それとも私くらいの普通のオタクか。それとも、にわかなのにオタクぶっている程度なのか、それがかなり重要な問題になってくる。
しかし、オタクの問題については、すでに彼女たちが調査済みだったらしい。芳子たちにバカにされてしまった。
「そんなこと、私たちが先に調査済みに決まっているでしょ。非オタだったら、いくら転校生だからって、うちらのグループに誘わないって」
「いまさら、そんな確認するなんて、喜咲ってやっぱり面白いねえ」
「私の姉はこんなところがかわいいところだから、気にしなくていいよ」
「私は、最初から知っていることだと思っていました」
山下さんに良かれと思っての質問だったのに、こうも皆にぼろくそ言われてしまうとは思っていなかった。さて、どのように挽回していこうか。オタクというのならば、定番の質問でもしてみようか。
「じゃ、じゃあ、山下さんが一番好きなアニメとか漫画は何?」
私は、山下さんに好きなアニメや漫画の傾向を聞こうと質問する。どんなアニメやマンガが好きかによって、彼女がどんなタイプのオタクなのか判断することにしよう。
「うわ。いきなり直球な質問だね。まあ、気になるところではあるね。そこまで詳しく調査はしていないから」
「気になるとはいえ、開き直ると、唐突に核心に迫るのは、どうかと思うけど?」
「いや、ただ単にやけになっているんでしょ」
「でも、私も山下さんの趣味は気になります!」
不満を交えながらも、興味津々に山下さんに見つめる陽咲たち。彼女たちも気になっていたようだ。とはいえ、3人の興味津々な視線に耐え切れず、山下さんは視線をさまよわせて、困惑していた。
確かに、彼女たちに初見でじっと見つめられると困惑する気持ちはわかる。そんなことを言っても、あいにく、私に彼女たちの暴走を止めるすべはない。あのくそ両親と同等のやばさを持っているオタクたちだ。最初に質問を振ったのは私だが、私には、後方で彼女の動向を生暖かく見守ることしかできない。
まあ、芳子たちはくそ両親よりも全然ましで、よき親友ではある。
「えっと、そうですね。今一番は待っている漫画は」
そんなことを考えているうちに、彼女は答える覚悟を決めたようだ。
『漫画は?』
彼女たちの声がきれいに調和した。ごくりと山下さんは喉を鳴らし、ある漫画タイトルを挙げた。
「『鬼の盾』、です」
タイトルを発表後、なぜか恥ずかしそうにする山下さんだったが、彼女の挙げた答えは、彼女たちに衝撃を与えた。
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