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9退学した生徒②
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「では、会議を始めていきたいと思います!」
土曜日の午後、私と陽咲の家に芳子にこなで、麗華がやってきた。私と陽咲、芳子は部活がないから休みだが、こなでと麗華は午前中に部活があったはずだ。それなのに、疲れていないのだろうか。わざわざ部活終わりに私の家来てまで、この会議をする必要はあるのか謎である。
しかし、私のそんな心配をよそに、こなでがこの場の進行役であるかのように話し出す。
「喜咲さん、ぼうっとしないでください。あなたは部活をしていないのに、なぜそのようにぼんやりとしているのですか?」
あろうことか、私の心配そうな視線をぼうっとしていたとほざきだす。さすがにそれには怒りを隠せない。
「ちょっと、私は別にぼうっとしていないし、何なら、こなでの心配を」
「お姉ちゃん、それは言っちゃいけな」
私の言葉は陽咲に遮られるが、こなでは私の言葉が気に入らないようで、眉を挙げて反論する。
「私の心配とはずいぶんと上から目線ですねえ。確かに、私は午前中、過酷な部活の練習を終えてきましたが、それとこれとは話は別。私にとって、この会議に参加すること自体がストレス発散なのです!」
目をぎらぎらと輝かせながら力説するこなでに圧されて、言葉を失ってしまう。すると、今まで黙っていた芳子が口をはさむ。
「こなで、それくらいにしておきなよ。喜咲は本当にこなでの身体を心配しているみたいだから。それに、こんなくだらないことで時間をつぶしたくないでしょう。さっさと本題に入って頂戴」
「わ、ワカリマシタ。芳子さん!では、さっそく始めていきましょう。今回のお題は『学校の退学理由』についてです!」
「はい」
高らかに改めて宣言したこなでに、恐る恐る手を挙げたのは麗華だった。このような会議で麗華が発言するとは珍しい。こなでもそう思ったのか、驚いたように目を丸くしていたが、意見を促す。
「ええと、退学理由についてですが、できれば、二次元の方にだけ目を向けませんか。その、三次元、現実での退学理由なんて、話しあっても、お、おもしろくない、と言いますか……」
麗華はぼそぼそと独り言のようにつぶやくが、この場の全員に彼女の声は聞こえていた。
「もしかして、麗華。橋本さんのこと、後悔しているの?」
うつむくように頭を下げた麗華は、陽咲の言葉に顔を上げる。どうやら図星らしいが、陽咲は彼女の退学理由を知っているのだろうか。もし、知っているとしたら、その発言は麗華に対して失礼だ。麗華は何も悪くないし、できることはなかった。だって、彼女の退学理由は噂によれば。
「そこまで」
暗い雰囲気になりかけたのを止めたのは芳子だった。ばんばんと手をたたくと、陽咲と麗華に視線を向けてにっこりとほほ笑む。
「三次元に関しては、デリケートな問題も含むから、後にしましょう。先に二次元の退学理由を攻めていくことにします!」
芳子は暗い雰囲気になることを止めはしたが、話題を変えるつもりはないようだった。
「私としては、退学と言ったら、『ヒロインをいじめていたやつらが、恋人に秘密裏に処理された』を一番に上げます!」
「こなでがそう来るのなら、私は『退学した生徒が実は、世界を揺るがす大事件を起こした犯人で、学校に通うどころじゃなくなった』に一票!」
暗い雰囲気をぶっ壊すかのようにこなでと陽咲が口々に自分が思い描く二次元での学校の退学理由を挙げていく。それにつられてだろうか。麗華もぽつりと自分の意見を言い始める。
「わ、私は、『親の再婚で転校』がいいです」
「いきなり自分の性癖をぶっこんでくるわね、麗華さん。何々、なんか最近、自分の中でそういう流れが来ているの?」
「ええと」
もじもじしながら、麗華は現在、自分の中で流行っているらしいシチュエーションを語りだす。
「最近、陽咲さんに勧められて、百合ものの話を読んでいるんですけど、その中で『親の再婚で、血のつながらない二人が一つ屋根の下で暮らす』っていうのがありまして……。親の再婚で家を引っ越すことになった主人公は、当然転校することになるんですが、姉妹で同じ高校に通うことになり、そこでまさかの同じクラスになって……。えっと」
「陽咲、自分の友達に何を植え付けようとしているわけ?なんか、麗華がやばい方向に目覚めちゃったらどうするの?ていうか、すでに目覚めかけてる気がするんだけど」
話している麗華の姿は、自分の話している光景が目に浮かぶのか、心なしか瞳が輝いている気がする。それに対して、陽咲は嬉しそうに頷いている。しかし、私の話もちゃんと聞いていたらしい。
「別に自分の趣味を勧めるのは変なことじゃないでしょ。それに、麗華には百合の素質があるみたいだから、どんどん、私の大好きな姉妹物の百合を勧めているの。同じ趣味を共有することの大切さをお姉ちゃんもいつか知る日が来ると思うよ」
頭が痛くなりそうな話である。そばで私たちの会話を聞いていた芳子が口をはさむ。
「麗華の意見もいいとは思うけど、その流れだと、退学ではなくて、転校だよね。しかも、転校生のシチュまで言及している。まあ、その辺もセットで転校生っていう気もするけど、今は『退学』がメインになっているからねえ」
「そ、そうでした。うっかり転校生のシチュエーションを考えていました」
「まあまあ、学校からいなくなるのには変わりがないのだし、別にどっちもあっていいんじゃないの?」
的外れな答えを言ってしまったと気づいた麗華が、しょんぼりとうつむいてしまう。せっかく自分の意見を言ったのに可哀想である。私が彼女のフォローをするが、彼女たちは容赦ない。芳子が畳みかけるように発言する。
「退学と転校は全然違うわ。退学はもう、学校に行くことはやめるの。学校生活そのものが今後なくなるの。それに引き換え、転校は別の学校での生活が待っている。それが大きな違いなんだけど、おわかり?」
「わかっているけど、そこまで気にしなくても。そもそも、退学の重要性は、高校と大学でもだいぶ変わってくると思うけど?」
自分の発言が更に議論を活発化させるなど予想していなかった。陽咲が感動したかのような目で私を見つめる。今の言葉に何をそんなに感動することがあっただろうか。
「確かにお姉ちゃんの言うことには一理ある。私たちは今、高校生だから、高校生が退学する理由を並べていた。だけど、それが大学だったら?そう考えると、議論に拍車がかかりそう!」
「でも、私たちはまだ大学生でないから、当事者目線からは語ることはできない。そういえば、退学の理由を思いついたわ」
突然、芳子が退学理由を思いついたらしい。話の途中だというのに、いきなりの話題転換である。何を思いついたのかは知らないが、なにせ、思いついたことが学校を辞めた理由である。ろくでもないものに違いない。
「とはいえ、これはあなたたちにはハードルが高いかもしれない」
芳子はなぜか私たちに前置きをして、いったん言葉を止めた。もったいぶって発言しない彼女にしびれを切らして、陽咲が先を促すように視線を向ける。深呼吸して気を落ち着かせてから、芳子が退学理由を口にした。
「女性にとっての最大の問題。『妊娠での退学』よ!」
「それは現実でもある話みたいだけど、確かに私たちには縁がない話だわ」
「そうそう、だってこの中に、彼氏がいる人いる?もしくはセフレでも可。私は男アレルギーだから無理」
「私は、陽咲さんがいるので!」
「自分で口にしておいてアレだけど、私にも彼氏はいないわ」
最後に私をじっと見つめる彼女たちに、なんだか腹が立つ。どうせ、私も同じであるのに、なぜか見栄を張りたくなってしまった。
「わ、私には彼氏がいるからね。あんたたちとは違う!」
『うわあ』
自らの発言が墓穴を掘ったことはわかった。しかし、なぜか無性に彼女たちとは同じではないことを主張したかった。その後、生暖かい目で見られることを予想していなかったわけではないのに、口から言葉が勝手にこぼれ出てしまった。
「まあ、そんなこんなで二次元はここまでにしましょう。考えてみたら、そんなにたくさん出ないものだったねえ。そうなると、退学理由については、三次元の方が豊富かもしれないってことか」
「いやいや、私に彼氏がいることに驚かないの?」
「麗華、三次元の話になっても大丈夫そう?」
「ここまで来たのに、比較しないでどうするの!」
「あ、あの。私なら大丈夫です」
「じゃあ、次は三次元で話を進めましょう!」
生暖かい視線も苦痛だったが、私の話を完全無視されるのはさらに堪えた。誰も、私に彼氏がいることを信じていなかった。まあ、実際にいないのだけど、相手にされないことがこんなにむなしいことだとは思わなかった。
ということで、私の発言はなかったことにされ、話題は三次元の退学理由へと移るのだった。
土曜日の午後、私と陽咲の家に芳子にこなで、麗華がやってきた。私と陽咲、芳子は部活がないから休みだが、こなでと麗華は午前中に部活があったはずだ。それなのに、疲れていないのだろうか。わざわざ部活終わりに私の家来てまで、この会議をする必要はあるのか謎である。
しかし、私のそんな心配をよそに、こなでがこの場の進行役であるかのように話し出す。
「喜咲さん、ぼうっとしないでください。あなたは部活をしていないのに、なぜそのようにぼんやりとしているのですか?」
あろうことか、私の心配そうな視線をぼうっとしていたとほざきだす。さすがにそれには怒りを隠せない。
「ちょっと、私は別にぼうっとしていないし、何なら、こなでの心配を」
「お姉ちゃん、それは言っちゃいけな」
私の言葉は陽咲に遮られるが、こなでは私の言葉が気に入らないようで、眉を挙げて反論する。
「私の心配とはずいぶんと上から目線ですねえ。確かに、私は午前中、過酷な部活の練習を終えてきましたが、それとこれとは話は別。私にとって、この会議に参加すること自体がストレス発散なのです!」
目をぎらぎらと輝かせながら力説するこなでに圧されて、言葉を失ってしまう。すると、今まで黙っていた芳子が口をはさむ。
「こなで、それくらいにしておきなよ。喜咲は本当にこなでの身体を心配しているみたいだから。それに、こんなくだらないことで時間をつぶしたくないでしょう。さっさと本題に入って頂戴」
「わ、ワカリマシタ。芳子さん!では、さっそく始めていきましょう。今回のお題は『学校の退学理由』についてです!」
「はい」
高らかに改めて宣言したこなでに、恐る恐る手を挙げたのは麗華だった。このような会議で麗華が発言するとは珍しい。こなでもそう思ったのか、驚いたように目を丸くしていたが、意見を促す。
「ええと、退学理由についてですが、できれば、二次元の方にだけ目を向けませんか。その、三次元、現実での退学理由なんて、話しあっても、お、おもしろくない、と言いますか……」
麗華はぼそぼそと独り言のようにつぶやくが、この場の全員に彼女の声は聞こえていた。
「もしかして、麗華。橋本さんのこと、後悔しているの?」
うつむくように頭を下げた麗華は、陽咲の言葉に顔を上げる。どうやら図星らしいが、陽咲は彼女の退学理由を知っているのだろうか。もし、知っているとしたら、その発言は麗華に対して失礼だ。麗華は何も悪くないし、できることはなかった。だって、彼女の退学理由は噂によれば。
「そこまで」
暗い雰囲気になりかけたのを止めたのは芳子だった。ばんばんと手をたたくと、陽咲と麗華に視線を向けてにっこりとほほ笑む。
「三次元に関しては、デリケートな問題も含むから、後にしましょう。先に二次元の退学理由を攻めていくことにします!」
芳子は暗い雰囲気になることを止めはしたが、話題を変えるつもりはないようだった。
「私としては、退学と言ったら、『ヒロインをいじめていたやつらが、恋人に秘密裏に処理された』を一番に上げます!」
「こなでがそう来るのなら、私は『退学した生徒が実は、世界を揺るがす大事件を起こした犯人で、学校に通うどころじゃなくなった』に一票!」
暗い雰囲気をぶっ壊すかのようにこなでと陽咲が口々に自分が思い描く二次元での学校の退学理由を挙げていく。それにつられてだろうか。麗華もぽつりと自分の意見を言い始める。
「わ、私は、『親の再婚で転校』がいいです」
「いきなり自分の性癖をぶっこんでくるわね、麗華さん。何々、なんか最近、自分の中でそういう流れが来ているの?」
「ええと」
もじもじしながら、麗華は現在、自分の中で流行っているらしいシチュエーションを語りだす。
「最近、陽咲さんに勧められて、百合ものの話を読んでいるんですけど、その中で『親の再婚で、血のつながらない二人が一つ屋根の下で暮らす』っていうのがありまして……。親の再婚で家を引っ越すことになった主人公は、当然転校することになるんですが、姉妹で同じ高校に通うことになり、そこでまさかの同じクラスになって……。えっと」
「陽咲、自分の友達に何を植え付けようとしているわけ?なんか、麗華がやばい方向に目覚めちゃったらどうするの?ていうか、すでに目覚めかけてる気がするんだけど」
話している麗華の姿は、自分の話している光景が目に浮かぶのか、心なしか瞳が輝いている気がする。それに対して、陽咲は嬉しそうに頷いている。しかし、私の話もちゃんと聞いていたらしい。
「別に自分の趣味を勧めるのは変なことじゃないでしょ。それに、麗華には百合の素質があるみたいだから、どんどん、私の大好きな姉妹物の百合を勧めているの。同じ趣味を共有することの大切さをお姉ちゃんもいつか知る日が来ると思うよ」
頭が痛くなりそうな話である。そばで私たちの会話を聞いていた芳子が口をはさむ。
「麗華の意見もいいとは思うけど、その流れだと、退学ではなくて、転校だよね。しかも、転校生のシチュまで言及している。まあ、その辺もセットで転校生っていう気もするけど、今は『退学』がメインになっているからねえ」
「そ、そうでした。うっかり転校生のシチュエーションを考えていました」
「まあまあ、学校からいなくなるのには変わりがないのだし、別にどっちもあっていいんじゃないの?」
的外れな答えを言ってしまったと気づいた麗華が、しょんぼりとうつむいてしまう。せっかく自分の意見を言ったのに可哀想である。私が彼女のフォローをするが、彼女たちは容赦ない。芳子が畳みかけるように発言する。
「退学と転校は全然違うわ。退学はもう、学校に行くことはやめるの。学校生活そのものが今後なくなるの。それに引き換え、転校は別の学校での生活が待っている。それが大きな違いなんだけど、おわかり?」
「わかっているけど、そこまで気にしなくても。そもそも、退学の重要性は、高校と大学でもだいぶ変わってくると思うけど?」
自分の発言が更に議論を活発化させるなど予想していなかった。陽咲が感動したかのような目で私を見つめる。今の言葉に何をそんなに感動することがあっただろうか。
「確かにお姉ちゃんの言うことには一理ある。私たちは今、高校生だから、高校生が退学する理由を並べていた。だけど、それが大学だったら?そう考えると、議論に拍車がかかりそう!」
「でも、私たちはまだ大学生でないから、当事者目線からは語ることはできない。そういえば、退学の理由を思いついたわ」
突然、芳子が退学理由を思いついたらしい。話の途中だというのに、いきなりの話題転換である。何を思いついたのかは知らないが、なにせ、思いついたことが学校を辞めた理由である。ろくでもないものに違いない。
「とはいえ、これはあなたたちにはハードルが高いかもしれない」
芳子はなぜか私たちに前置きをして、いったん言葉を止めた。もったいぶって発言しない彼女にしびれを切らして、陽咲が先を促すように視線を向ける。深呼吸して気を落ち着かせてから、芳子が退学理由を口にした。
「女性にとっての最大の問題。『妊娠での退学』よ!」
「それは現実でもある話みたいだけど、確かに私たちには縁がない話だわ」
「そうそう、だってこの中に、彼氏がいる人いる?もしくはセフレでも可。私は男アレルギーだから無理」
「私は、陽咲さんがいるので!」
「自分で口にしておいてアレだけど、私にも彼氏はいないわ」
最後に私をじっと見つめる彼女たちに、なんだか腹が立つ。どうせ、私も同じであるのに、なぜか見栄を張りたくなってしまった。
「わ、私には彼氏がいるからね。あんたたちとは違う!」
『うわあ』
自らの発言が墓穴を掘ったことはわかった。しかし、なぜか無性に彼女たちとは同じではないことを主張したかった。その後、生暖かい目で見られることを予想していなかったわけではないのに、口から言葉が勝手にこぼれ出てしまった。
「まあ、そんなこんなで二次元はここまでにしましょう。考えてみたら、そんなにたくさん出ないものだったねえ。そうなると、退学理由については、三次元の方が豊富かもしれないってことか」
「いやいや、私に彼氏がいることに驚かないの?」
「麗華、三次元の話になっても大丈夫そう?」
「ここまで来たのに、比較しないでどうするの!」
「あ、あの。私なら大丈夫です」
「じゃあ、次は三次元で話を進めましょう!」
生暖かい視線も苦痛だったが、私の話を完全無視されるのはさらに堪えた。誰も、私に彼氏がいることを信じていなかった。まあ、実際にいないのだけど、相手にされないことがこんなにむなしいことだとは思わなかった。
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