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9退学した生徒③
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「喜咲さんのクラスに在籍していた橋本まりんは、私と同じ陸上部に入っていました」
三次元の退学理由について語ろうということになって、最初に口を開いたのは麗華だった。
「麗華が話したくないのなら、無理に話さなくてもいいんだよ」
「そうそう、他の例を探して盛り上がるから」
「私は聞きたいけど」
「私もー」
私が麗華を気遣う言葉をかけると、芳子も同意した。しかし、陽咲とこなではどうしても橋本マリンの退学理由を麗華から聞き出したいらしい。目をキラキラさせて麗華を見つめている。
そんな私たちの様子に苦笑したが、話さないという選択肢は彼女にはないらしい。麗華は話を再開させた。
「同じ部活で短距離専門の選手ということで、練習で一緒になることも多く、他の部員よりも話す機会は多かった気がします」
「ということは、二人は仲が良かったの?」
「私は仲が良かったと思っていましたが、向こうはそうではなかったのかもしれません」
せっかく、麗華のために三次元のみで盛り上がって、それで終わりにしようかと思っていたのに、どういう心境の変化だろうか。いや、もともと麗華は退学した同じ部活の生徒のことを話したがっていた。話の途中で陽咲が口をはさみつつも、話は進んでいく。
「彼女の家はどうやら母子家庭らしく、親に迷惑をかけないようにと、彼女なりに必死に生きているように見えました」
ここで、私たちに彼女に同情する心があればよかったのだろうが、あいにくそんな殊勝な心は持ち合わせていない連中だった。特に何も言葉はなく、麗華の坦々とした声が部屋に響いていく。
「でも、そんな思いとは裏腹に、世間には言えないような悪さもしていたのが彼女です」
麗華は辛い思い出を思い出しているのか、目をつむり、苦しそうな表情をしていた。しかし、それも一瞬でまた真剣な表情に戻る。
「真面目に高校に通って母親を安心させたい。でも、羽目を外して自由に生きていきたい。そうして、羽目を外す方に心が傾いていきました。結果として、悪さの方が彼女の心の中を支配していった」
実際に、彼女は夏休み目前にして、学校に来なくなった。かろうじて部活には顔を出していたようだが、夏休み前に行われた大会の応援には来なかった。一年生は応援係として強制参加であるのに、彼女が大会に足を運ぶことはなかったらしい。
「部活の最中、私に言っていたんです」
その時のことを思い出すために目をつむっていた麗華が、顔を上げて彼女の言葉を告げる。
『私に何かあっても、気にせず高校生活を楽しんでね』
「うわあ、それって確実に死亡フラグだよね」
「もしくはこの場合で言うと、私は学校からいなくなるけど、私の分も高校生活頑張って、みたいな?」
こなでと陽咲が重苦しくなった雰囲気を壊すことを言い始めた。この空気を壊してくれるのはありがたいが、あまりにも配慮に欠ける発言である。芳子も同じことを思ったのか、二人を注意してくれた。
「二人とも、麗華が真剣に話してくれているのに、ふざけた発言はしないこと!それで、彼女は結局、ドウシタノ?学校はやめたみたいだけど、その後のことはわかっているの?後、悪さって具体的に何?知っているなら、ぜひ今後の私たちの学生生活の教訓として知りたいのだけど」
そして、私たちが気になっていたことを聞いてくれた。とはいえ、この話は他人のプライバシーを暴く行為でもあるので、話してくれなくても仕方ないと思っていた。
「具体的に、ですか。ええと、実際に彼女の口から聞いたわけではないんですけど。そうですね。陸上の大会で知り合った彼女と同じ中学の人がなぜか知っていて、それによると……」
「聞いただけで、不良ってわかるワードだね」
「よくそんな子がうちの学校に入れたよね」
「でもさ、市内の中学からだと、ある程度の成績で入れるとかあるでしょ。もしかして、地元枠とか、それか部活枠とか?」
万引きに、たばこ、援助交際などの言葉が麗華の口から出るが、自分たちには縁がないものばかりで、なかなか現実味がなかった。きっと、彼女たちも同じ気持ちだろうと思った。だからこそ、そんな軽口を叩けるのだ。
「お姉ちゃん、目が異様に輝いているけど、そんなに不良ワードが気に入ったの?でも、お姉ちゃんは手を出してはダメだよ」
「この中で一番、やばそうなのって喜咲かもしれないよね」
「同感。今だって、やばいって話をしているのに、そのやばい側の人間の雰囲気出しているからね」
「……」
なぜか、急に言葉を止めて、私を見つめだした彼女たち。いったい私の何がやばいというのだろうか。ただ、麗華の言葉に現実味がないなと思っただけだ。
「私の周りに、そんな素行不良の人がいなかったから、現実にそんなことをやって退学になる人がいるんだなって。それのどこがやばいにつながるのか意味不明なんだけど」
素直に自分の思ったことを口にするが、私の言葉は信用がないらしい。
「そんな目には見えないんだけどなあ。まあ、間違ってもお姉ちゃんが不良になることはないから、まあいいか」
ただし、なんとなく、ほんの少しだけ、そんな不良生徒と話をしてみたいと思ってしまった。いったいどういう気持ちで、世間から見て悪いことをするのか問いただしてみたいなと考えてしまっただけだ。しかし、これは皆には秘密である。
「彼女が学校を辞めたのは、夏休み明けに喜咲さんたちが自分のクラスの席が減っていて、クラスに彼女が来ていないという発言で、ようやく気づきました。あっけないものですね。同じクラスではないからいなくなっても気付きにくい」
麗華は、私たちの不良談議に突っ込むことはせず、退学した彼女の話を再開する。
「私は彼女の様子が気になって連絡してみました。ですが、夏休み中は既読がついていたのに、夏休みが空けてからは既読もつかなくなりました」
悲しそうに話をするので、気の毒になってきた。『既読がついていた』とは言っているが、逆に言うと、相手は麗華のメッセージは見ているが、返事はしなかったということだ。
「ねえ、不良だった橋本さんだけど、退学したっていうのは本当なの?うちの学校からはいなくなったけど、もしかして親の都合とかで転校したのかもしれないでしょ。転校していたとしたら、麗華が悲しむ必要はないと思うよ。新しい学校で楽しくやって」
「退学で間違いありません」
陽咲が麗華を励まそうと口を開く。しかし、麗華はその言葉をバッサリと切り捨てた。
「彼女が私のメッセージに返信をくれることはありませんでしたが、その、大会で知り合った子から、彼女の夏休み前から夏休み後の動向を聞くことができました。それによると」
「ストップ、ストップ。もう話さなくていいよ」
なんとなく、麗華の言葉の続きは予想がついた。陽咲たちもこくこくと私の言葉に頷いている。
「結局、彼女は退学してしまった。部活が同じで、一緒にいる時間が結構長かったのに、私は彼女の力にはなれなかった……」
退学理由は話すことはなかったが、麗華が後悔の言葉を口にする。
このままでは、お葬式みたいな雰囲気が永遠と続きそうだ。何か、明るい話題でもふって、この話は終わりにしたい。
「ところで、最初に話していたけど、二次元の転校とか退学と現実ってかなり違いがあるんだね。驚いちゃった」
話題を変えようとして思いついたのが現実と二次元の違いとは、私の脳みそもついに腐りきってしまったのだろうか。とはいえ、何を言えばこの場の空気を変えることができるのかわからない。
「ふふふ」
私の必死さが伝わったのか、陽咲が突然笑い出した。それにつられてこなでと芳子も笑い出す。麗華だけはいまだに退学した橋本まりんのことを気にしているのか、うつむいていたが、よく見ると肩が小刻みに震えていた。
「お姉ちゃんさ、話題変えるのに必死すぎ。そんなことしなくてもいいのに。私たちはそこまで空気読めない子たちじゃないんだから」
「でも、さっきは」
「私たちなりの気づかいだよ。それこそ、喜咲の言葉と同じようにその場の空気を和ませようとしただけ」
「まったく、その辺がまだまだ喜咲はダメねえ」
「あの、気を遣わせてしまってすいません!」
なぜか、皆に笑われた挙句、私に説教を始める彼女たちに、思わず声を荒げてしまう。
「だって、麗華が悲しそうに話していたから、私はその話から話題を変えてあげようとしたのに!」
『はいはい』
「別にお姉ちゃんが悪いということではないよ。ええと、なんだっけ。転校や退学の理由について、だったね。こなでたちはどう思う?」
私が降った話題なのに、なぜか陽咲が仕切りだして彼女たちに質問する。声を荒げたことに対して、誰も何も文句すら言われない。なんだか拍子抜けしてしまう。
「結局のところ、現実は容赦ないってことだよね。まあ、私たちが好むラノベとか漫画とかだと、転校とか退学する奴らって『好きな子をいじめた主犯』とか『どうにもならない問題を起こしたヤンキー』とかで、退学することに対して、悲しさは感じないよね?むしろ、そいつが学校からいなくなってせいせいする、みたいなキャラが多いよね」
「こなでの言葉に賛成。とはいえ、暗い系の社会派の創作物とかだと、女性の妊娠とか、麻薬とかの薬系、後は万引きとかの犯罪で退学とかありえる」
急に真面目に語りだしたこなでと芳子。それを黙って聞いている陽咲と麗華。話題に乗っていけない私だけがあたふたとみっともなく戸惑っていた。
「ということで、今回の教訓を皆に言い渡そう」
こなでと芳子が自分の意見を口にすると、それをまとめるかのように、再び陽咲が話し出す。
「高校生活を楽しむためにも、校則を適度に守り、男性に気をつけて、貞淑な高校生活を送りましょう。間違っても、高校生活中に妊娠して学校を辞めないように!」
『了解です!』
声をそろえて私以外が声をそろえて返事する。まさかの麗華も小さい声ながら彼女たちとハモりを見せた。
まあ、私たちに限ってそれはないだろう。何しろ、今のところ彼氏の『か』の字もない私たちだ。それに私も含めて彼女たちはいろいろ、癖が強すぎる。BLに百合、男装の麗人に男アレルギー。そんな彼女たちとつき合える男子が果たしているのだろうか。
こうやってみると、私はなんてまともな人間であろうか。
ということで、今回の二次元と三次元談義も無事に終了して、満足のいくものとなったのだった。
三次元の退学理由について語ろうということになって、最初に口を開いたのは麗華だった。
「麗華が話したくないのなら、無理に話さなくてもいいんだよ」
「そうそう、他の例を探して盛り上がるから」
「私は聞きたいけど」
「私もー」
私が麗華を気遣う言葉をかけると、芳子も同意した。しかし、陽咲とこなではどうしても橋本マリンの退学理由を麗華から聞き出したいらしい。目をキラキラさせて麗華を見つめている。
そんな私たちの様子に苦笑したが、話さないという選択肢は彼女にはないらしい。麗華は話を再開させた。
「同じ部活で短距離専門の選手ということで、練習で一緒になることも多く、他の部員よりも話す機会は多かった気がします」
「ということは、二人は仲が良かったの?」
「私は仲が良かったと思っていましたが、向こうはそうではなかったのかもしれません」
せっかく、麗華のために三次元のみで盛り上がって、それで終わりにしようかと思っていたのに、どういう心境の変化だろうか。いや、もともと麗華は退学した同じ部活の生徒のことを話したがっていた。話の途中で陽咲が口をはさみつつも、話は進んでいく。
「彼女の家はどうやら母子家庭らしく、親に迷惑をかけないようにと、彼女なりに必死に生きているように見えました」
ここで、私たちに彼女に同情する心があればよかったのだろうが、あいにくそんな殊勝な心は持ち合わせていない連中だった。特に何も言葉はなく、麗華の坦々とした声が部屋に響いていく。
「でも、そんな思いとは裏腹に、世間には言えないような悪さもしていたのが彼女です」
麗華は辛い思い出を思い出しているのか、目をつむり、苦しそうな表情をしていた。しかし、それも一瞬でまた真剣な表情に戻る。
「真面目に高校に通って母親を安心させたい。でも、羽目を外して自由に生きていきたい。そうして、羽目を外す方に心が傾いていきました。結果として、悪さの方が彼女の心の中を支配していった」
実際に、彼女は夏休み目前にして、学校に来なくなった。かろうじて部活には顔を出していたようだが、夏休み前に行われた大会の応援には来なかった。一年生は応援係として強制参加であるのに、彼女が大会に足を運ぶことはなかったらしい。
「部活の最中、私に言っていたんです」
その時のことを思い出すために目をつむっていた麗華が、顔を上げて彼女の言葉を告げる。
『私に何かあっても、気にせず高校生活を楽しんでね』
「うわあ、それって確実に死亡フラグだよね」
「もしくはこの場合で言うと、私は学校からいなくなるけど、私の分も高校生活頑張って、みたいな?」
こなでと陽咲が重苦しくなった雰囲気を壊すことを言い始めた。この空気を壊してくれるのはありがたいが、あまりにも配慮に欠ける発言である。芳子も同じことを思ったのか、二人を注意してくれた。
「二人とも、麗華が真剣に話してくれているのに、ふざけた発言はしないこと!それで、彼女は結局、ドウシタノ?学校はやめたみたいだけど、その後のことはわかっているの?後、悪さって具体的に何?知っているなら、ぜひ今後の私たちの学生生活の教訓として知りたいのだけど」
そして、私たちが気になっていたことを聞いてくれた。とはいえ、この話は他人のプライバシーを暴く行為でもあるので、話してくれなくても仕方ないと思っていた。
「具体的に、ですか。ええと、実際に彼女の口から聞いたわけではないんですけど。そうですね。陸上の大会で知り合った彼女と同じ中学の人がなぜか知っていて、それによると……」
「聞いただけで、不良ってわかるワードだね」
「よくそんな子がうちの学校に入れたよね」
「でもさ、市内の中学からだと、ある程度の成績で入れるとかあるでしょ。もしかして、地元枠とか、それか部活枠とか?」
万引きに、たばこ、援助交際などの言葉が麗華の口から出るが、自分たちには縁がないものばかりで、なかなか現実味がなかった。きっと、彼女たちも同じ気持ちだろうと思った。だからこそ、そんな軽口を叩けるのだ。
「お姉ちゃん、目が異様に輝いているけど、そんなに不良ワードが気に入ったの?でも、お姉ちゃんは手を出してはダメだよ」
「この中で一番、やばそうなのって喜咲かもしれないよね」
「同感。今だって、やばいって話をしているのに、そのやばい側の人間の雰囲気出しているからね」
「……」
なぜか、急に言葉を止めて、私を見つめだした彼女たち。いったい私の何がやばいというのだろうか。ただ、麗華の言葉に現実味がないなと思っただけだ。
「私の周りに、そんな素行不良の人がいなかったから、現実にそんなことをやって退学になる人がいるんだなって。それのどこがやばいにつながるのか意味不明なんだけど」
素直に自分の思ったことを口にするが、私の言葉は信用がないらしい。
「そんな目には見えないんだけどなあ。まあ、間違ってもお姉ちゃんが不良になることはないから、まあいいか」
ただし、なんとなく、ほんの少しだけ、そんな不良生徒と話をしてみたいと思ってしまった。いったいどういう気持ちで、世間から見て悪いことをするのか問いただしてみたいなと考えてしまっただけだ。しかし、これは皆には秘密である。
「彼女が学校を辞めたのは、夏休み明けに喜咲さんたちが自分のクラスの席が減っていて、クラスに彼女が来ていないという発言で、ようやく気づきました。あっけないものですね。同じクラスではないからいなくなっても気付きにくい」
麗華は、私たちの不良談議に突っ込むことはせず、退学した彼女の話を再開する。
「私は彼女の様子が気になって連絡してみました。ですが、夏休み中は既読がついていたのに、夏休みが空けてからは既読もつかなくなりました」
悲しそうに話をするので、気の毒になってきた。『既読がついていた』とは言っているが、逆に言うと、相手は麗華のメッセージは見ているが、返事はしなかったということだ。
「ねえ、不良だった橋本さんだけど、退学したっていうのは本当なの?うちの学校からはいなくなったけど、もしかして親の都合とかで転校したのかもしれないでしょ。転校していたとしたら、麗華が悲しむ必要はないと思うよ。新しい学校で楽しくやって」
「退学で間違いありません」
陽咲が麗華を励まそうと口を開く。しかし、麗華はその言葉をバッサリと切り捨てた。
「彼女が私のメッセージに返信をくれることはありませんでしたが、その、大会で知り合った子から、彼女の夏休み前から夏休み後の動向を聞くことができました。それによると」
「ストップ、ストップ。もう話さなくていいよ」
なんとなく、麗華の言葉の続きは予想がついた。陽咲たちもこくこくと私の言葉に頷いている。
「結局、彼女は退学してしまった。部活が同じで、一緒にいる時間が結構長かったのに、私は彼女の力にはなれなかった……」
退学理由は話すことはなかったが、麗華が後悔の言葉を口にする。
このままでは、お葬式みたいな雰囲気が永遠と続きそうだ。何か、明るい話題でもふって、この話は終わりにしたい。
「ところで、最初に話していたけど、二次元の転校とか退学と現実ってかなり違いがあるんだね。驚いちゃった」
話題を変えようとして思いついたのが現実と二次元の違いとは、私の脳みそもついに腐りきってしまったのだろうか。とはいえ、何を言えばこの場の空気を変えることができるのかわからない。
「ふふふ」
私の必死さが伝わったのか、陽咲が突然笑い出した。それにつられてこなでと芳子も笑い出す。麗華だけはいまだに退学した橋本まりんのことを気にしているのか、うつむいていたが、よく見ると肩が小刻みに震えていた。
「お姉ちゃんさ、話題変えるのに必死すぎ。そんなことしなくてもいいのに。私たちはそこまで空気読めない子たちじゃないんだから」
「でも、さっきは」
「私たちなりの気づかいだよ。それこそ、喜咲の言葉と同じようにその場の空気を和ませようとしただけ」
「まったく、その辺がまだまだ喜咲はダメねえ」
「あの、気を遣わせてしまってすいません!」
なぜか、皆に笑われた挙句、私に説教を始める彼女たちに、思わず声を荒げてしまう。
「だって、麗華が悲しそうに話していたから、私はその話から話題を変えてあげようとしたのに!」
『はいはい』
「別にお姉ちゃんが悪いということではないよ。ええと、なんだっけ。転校や退学の理由について、だったね。こなでたちはどう思う?」
私が降った話題なのに、なぜか陽咲が仕切りだして彼女たちに質問する。声を荒げたことに対して、誰も何も文句すら言われない。なんだか拍子抜けしてしまう。
「結局のところ、現実は容赦ないってことだよね。まあ、私たちが好むラノベとか漫画とかだと、転校とか退学する奴らって『好きな子をいじめた主犯』とか『どうにもならない問題を起こしたヤンキー』とかで、退学することに対して、悲しさは感じないよね?むしろ、そいつが学校からいなくなってせいせいする、みたいなキャラが多いよね」
「こなでの言葉に賛成。とはいえ、暗い系の社会派の創作物とかだと、女性の妊娠とか、麻薬とかの薬系、後は万引きとかの犯罪で退学とかありえる」
急に真面目に語りだしたこなでと芳子。それを黙って聞いている陽咲と麗華。話題に乗っていけない私だけがあたふたとみっともなく戸惑っていた。
「ということで、今回の教訓を皆に言い渡そう」
こなでと芳子が自分の意見を口にすると、それをまとめるかのように、再び陽咲が話し出す。
「高校生活を楽しむためにも、校則を適度に守り、男性に気をつけて、貞淑な高校生活を送りましょう。間違っても、高校生活中に妊娠して学校を辞めないように!」
『了解です!』
声をそろえて私以外が声をそろえて返事する。まさかの麗華も小さい声ながら彼女たちとハモりを見せた。
まあ、私たちに限ってそれはないだろう。何しろ、今のところ彼氏の『か』の字もない私たちだ。それに私も含めて彼女たちはいろいろ、癖が強すぎる。BLに百合、男装の麗人に男アレルギー。そんな彼女たちとつき合える男子が果たしているのだろうか。
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