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クラスメイトにメガネをかけるのをやめるように言われた。しかし、他人から言われてすぐやめるようなら、そこまでの意思だ。私は他人から言われたくらいで自分の宣言を覆すような軽い女ではない。
今日はたまたま、メガネを家に置き忘れただけで、明日からはまた新たなメガネライフを送るつもりだ。それに、目黒君はコンタクトが合わないらしく、メガネをかけてきた。目黒君も明日からはメガネをかけてくるだろう。
(そうなれば、私もメガネをかけるから、メガネをかけている同士になる)
とはいえ、メガネをかけ始めても、目黒君との間にあまり進展は見られなかった。しかし、見た目だけでも似た者同士というのは共通点があって、親睦を深めやすいだろう。
目黒君とメガネのことを考えていたら、あっという間に午前中の授業は終わってしまった。
「あ、あの、ひ、日好先輩、い、今って、お時間、ありますか?」
昼休み、いつものようにみさとと一緒にお弁当を食べていたら、教室の入り口が騒がしくなる。何事かと視線を向けると、そこには見知らぬ学生が立っていた。誰なのか知らないが、このクラスの人間に用事があるらしい。他人事のようにお弁当の卵焼きを頬張っていたら、みさとに苦笑される。
「仁美って、メガネをかけている人と、かけていない人に対する興味の落差、激しすぎない?」
「そうかなあ。イケメンに興味がある人と同じだよ。イケメンには興味があるけど、それ以外は眼中になし、みたいな」
「その例え、わかりやすすぎ……」
二人で談笑していたら、不意に私たちに近付く影があった。
「日好さんに用事があるみたいだよ」
クラスメイトが私を呼んでいた。どうやら、教室の入り口に立っている人物は私に用事があるらしい。私が知っている人間ではないが、いったいどこのだれで、なんの用事なのか。貴重な昼休みをつぶしてまで会いに来なければならないほどだったのか。
「仕方ないから、行ってくる」
「いってらっしゃい。ちなみに、外であんたを待っている子だけど、確か私の部活の後輩だと思うよ。多分、仁美のことがす」
「さっさと行ってあげれば。貴重な昼休みがもったいないでしょ」
みさとの後輩らしいことはわかったが、彼女の言葉は途中で目黒君に遮られて最後まで聞けなかった。かぶせるように言葉を続けた目黒君の顔は険しい。隣の席だからと言って、勝手に会話に割り込むとは。
「私とみさとの会話に嫉妬し」
「それはない」
「なになに。もしかして、仁美が他の男に取られると思って焦って」
「何を言っているかわからないね」
私たちの会話はばっさりと切り捨てられる。いつもの事なので仕方ないとあきらめる。とりあえず、席を立って教室の入り口まで歩いていくと、小柄な男子生徒が目に入った。どうやら、彼が私を呼んでいたらしい。
「あの、お昼休み中、すみません。すぐに用事はすみますから」
気弱そうな感じの男の子が廊下を歩いていく。慌てて私も彼の後を追って歩きだす。昼休み中の廊下は、教室とは違って静かだった。
教室から少し離れたところで、男の子が振り返って私を見る。
「さ、三階の音楽室の隣の教室が空き教室なので、そこに行きましょう」
どうやら、私に気を遣っているのか、行き先を述べてくれた。別に行き先などどうでもいいので、サッサと用件を伝えてくれた方が助かる。お昼休みは無限にあるわけではない。お弁当を途中で切り上げてきたのだ。戻って最後までお弁当を食べる時間は確保したい。
「あのさ、そこまで行くのは面倒だからさ、この場で用件を言ってくれると嬉しいんだけど。私、暇じゃないからさ」
見ず知らずの人に構っていられるほど暇な人はあまりいないだろう。特に高校生の昼休みは貴重だ。他の休み時間は授業の準備や移動であっという間に過ぎてしまうので、ゆっくり過ごせるのは昼休みしかない。
「こっちにきて」
きっと、二人きりで話したいから、わざわざ三階まで行きたいのだ。だったら、ちょうどいいところに空き教室がある。私はちょうど目に入った、授業準備室に彼を引き入れた。
「ここなら、誰も来ないでしょう?」
「ま、まあ、そうですね」
「ごほっ。ごめんね。埃っぽかったね」
私たちは授業準備室に入り、扉を閉める。準備室は埃っぽくて思わずせき込んでしまう。辺りを見回すと、授業で使う小道具がたくさん置いてあった。社会で使う地球儀や大きな地図、数学で使う大きな定規が床に雑に置かれている。私たちの間に気まずい空気が流れる。
「あの、僕、先輩のことがす」
ガラガラガラ。
せっかく男の子が口を開いてくれたのに、話の途中で邪魔が入った。
今日はたまたま、メガネを家に置き忘れただけで、明日からはまた新たなメガネライフを送るつもりだ。それに、目黒君はコンタクトが合わないらしく、メガネをかけてきた。目黒君も明日からはメガネをかけてくるだろう。
(そうなれば、私もメガネをかけるから、メガネをかけている同士になる)
とはいえ、メガネをかけ始めても、目黒君との間にあまり進展は見られなかった。しかし、見た目だけでも似た者同士というのは共通点があって、親睦を深めやすいだろう。
目黒君とメガネのことを考えていたら、あっという間に午前中の授業は終わってしまった。
「あ、あの、ひ、日好先輩、い、今って、お時間、ありますか?」
昼休み、いつものようにみさとと一緒にお弁当を食べていたら、教室の入り口が騒がしくなる。何事かと視線を向けると、そこには見知らぬ学生が立っていた。誰なのか知らないが、このクラスの人間に用事があるらしい。他人事のようにお弁当の卵焼きを頬張っていたら、みさとに苦笑される。
「仁美って、メガネをかけている人と、かけていない人に対する興味の落差、激しすぎない?」
「そうかなあ。イケメンに興味がある人と同じだよ。イケメンには興味があるけど、それ以外は眼中になし、みたいな」
「その例え、わかりやすすぎ……」
二人で談笑していたら、不意に私たちに近付く影があった。
「日好さんに用事があるみたいだよ」
クラスメイトが私を呼んでいた。どうやら、教室の入り口に立っている人物は私に用事があるらしい。私が知っている人間ではないが、いったいどこのだれで、なんの用事なのか。貴重な昼休みをつぶしてまで会いに来なければならないほどだったのか。
「仕方ないから、行ってくる」
「いってらっしゃい。ちなみに、外であんたを待っている子だけど、確か私の部活の後輩だと思うよ。多分、仁美のことがす」
「さっさと行ってあげれば。貴重な昼休みがもったいないでしょ」
みさとの後輩らしいことはわかったが、彼女の言葉は途中で目黒君に遮られて最後まで聞けなかった。かぶせるように言葉を続けた目黒君の顔は険しい。隣の席だからと言って、勝手に会話に割り込むとは。
「私とみさとの会話に嫉妬し」
「それはない」
「なになに。もしかして、仁美が他の男に取られると思って焦って」
「何を言っているかわからないね」
私たちの会話はばっさりと切り捨てられる。いつもの事なので仕方ないとあきらめる。とりあえず、席を立って教室の入り口まで歩いていくと、小柄な男子生徒が目に入った。どうやら、彼が私を呼んでいたらしい。
「あの、お昼休み中、すみません。すぐに用事はすみますから」
気弱そうな感じの男の子が廊下を歩いていく。慌てて私も彼の後を追って歩きだす。昼休み中の廊下は、教室とは違って静かだった。
教室から少し離れたところで、男の子が振り返って私を見る。
「さ、三階の音楽室の隣の教室が空き教室なので、そこに行きましょう」
どうやら、私に気を遣っているのか、行き先を述べてくれた。別に行き先などどうでもいいので、サッサと用件を伝えてくれた方が助かる。お昼休みは無限にあるわけではない。お弁当を途中で切り上げてきたのだ。戻って最後までお弁当を食べる時間は確保したい。
「あのさ、そこまで行くのは面倒だからさ、この場で用件を言ってくれると嬉しいんだけど。私、暇じゃないからさ」
見ず知らずの人に構っていられるほど暇な人はあまりいないだろう。特に高校生の昼休みは貴重だ。他の休み時間は授業の準備や移動であっという間に過ぎてしまうので、ゆっくり過ごせるのは昼休みしかない。
「こっちにきて」
きっと、二人きりで話したいから、わざわざ三階まで行きたいのだ。だったら、ちょうどいいところに空き教室がある。私はちょうど目に入った、授業準備室に彼を引き入れた。
「ここなら、誰も来ないでしょう?」
「ま、まあ、そうですね」
「ごほっ。ごめんね。埃っぽかったね」
私たちは授業準備室に入り、扉を閉める。準備室は埃っぽくて思わずせき込んでしまう。辺りを見回すと、授業で使う小道具がたくさん置いてあった。社会で使う地球儀や大きな地図、数学で使う大きな定規が床に雑に置かれている。私たちの間に気まずい空気が流れる。
「あの、僕、先輩のことがす」
ガラガラガラ。
せっかく男の子が口を開いてくれたのに、話の途中で邪魔が入った。
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