16 / 17
16私だけ……
しおりを挟む
「ねえ、聞いてよ。みさと、今朝ねえ……」
結局、高校には一人で行く羽目になった。私はお手洗いに用事はなかったし、駅で目黒君を待つ選択肢もあったが、トイレ待ちをしてまで一緒に登校したら、さすがに彼に迷惑が掛かると思ったからだ。
仕方なく、一人寂しく駅から高校までの道のりを歩いて登校した。とはいえ、毎日一人で登校しているので、寂しいと思うのはおかしな話だ。しかし、目黒君と一緒に登校できると思っていたのに、急に一人で学校に行く羽目になったのだ。寂しくもなるものだ。
いつもより時間がかかった気がする通学路を歩き終え、高校に到着する。ようやく教室にたどり着くと、教室に親友のみさとを見つけて、思わず駆け寄った。どうやら、早く登校し過ぎたようで、教室には部活の朝練をしているメンバーがそろっていた。
みさとも朝練に向かうために教室から出ようとしていたらしいが、その前にどうしても今朝の出来事を話しておきたかった。
「はいはい。それは残念でしたね。それで、メガネはどうしたの?せっかく『メガネ女子』になる宣言したのに、もうあきらめたの?」
「そ、そんなわけないでしょ。た、たまたま今日は朝忙しくて、メガネをかけ忘れただけ……」
「そうですか、そうですか。それはそれは、良いご身分なことで。目がよい人はこれだから」
みさとは話を聞いてくれたのだが、どうにも私に対する態度がそっけない。朝練に行きたくて私の話を適当にはぐらかしているのだろうか。だとしたら、親友の恋愛相談を無下にすするとはいかがなものか。
「で、でも。目黒君もコンタクトを辞めて、今日は、め、メガネだっ」
「そこ、僕の席なんだけど。荷物を置いてもいいかな?」
「おはよう、目黒君。コンタクトはやめたの?」
「め、目黒君。ご、ごめんね」
駅でお手洗いに行っていた目黒君が教室に到着した。まさか、今までの私の話を聞かれていただろうか。いや、それはないだろう。今さっき入ってきたのに、先ほどまでの会話が聞こえるはずがない。
「おはよう、羽田さん。まあね。コンタクトにしてみたけど、やっぱり僕には合わなかった。目の乾燥も疲れもひどいし、やっぱりメガネに戻すことにしたよ」
「ふうん。でもさ、そうなると、面倒くさい奴が引き続き面倒なことになると思うけど、それはいいの?」
「面倒な奴はもう、あきらめた。それに、『メガネ』が好きであって、それをかけている僕の事はそこまで好きじゃないみたいだし」
「そうかもしれないけど、そこで油断したらダメよ」
なぜ、この二人はこんなにも普通の会話をしているのか。彼らは私が目黒君を好きなことを知っている。なぜ、当事者である目黒君も親友のみさとも、私の気持ちに寄り添うことをしてくれないのか。
「ど、どうして、そんなに……」
私だって、普通に目黒君と会話がしたい。どうして、私が話しかけると彼は無視したり、ひどいことを言ったりするのか。他の人にはみさとを含めて普通なのに。
「あれ、でも、私だけが……」
「じゃあ、目黒君。あとはよろしく。でも、良かったじゃない?仁美がメガネを忘れて。だって、目黒君、実は仁美と同じでメガネふぇ」
「さっさと朝練に行ったらどう?」
「はいはい」
何か、重大なことに気付きそうだった。しかし、その前にみさとが朝練に向かうために教室から出ていった。
「目黒、お前はコンタクトにするより、メガネの方がいいと思うぞ」
「私もそう思う。でも逆に日好さんはメガネがないほうがいいと思う。やっぱり、目がいい人にメガネはいらないね」
「普段の格好がやっぱり一番だよ。下手にコンタクトにしたり、伊達メガネをかけたりしない方が自然だ」
みさとが教室を出ていったとたん、その場にいたクラスメイトが次々と私たちに話しかけてきた。
「余計なお世話だ」
「今日は、たまたま、メガネを忘れて来ただけ!明日からは忘れずメガネかけるから!」
私たちの言葉に、クラスメイトはやれやれと首を傾げたり、あきれたような表情をしたりしていた。そして、かれらもまた、みさとに続いて教室から出ていった。
「わ、私もちょっと、お手洗いに行ってきます」
教室には私と目黒君の二人きりになってしまった。今朝は二人きりでの登校を望んでいたが、いざ二人きりになると、急に恥ずかしくなる。私も朝練に出掛けたクラスメイトの後を追って、教室を出た。目黒君は何も言わず、ただ黙って私を見つめていた
結局、高校には一人で行く羽目になった。私はお手洗いに用事はなかったし、駅で目黒君を待つ選択肢もあったが、トイレ待ちをしてまで一緒に登校したら、さすがに彼に迷惑が掛かると思ったからだ。
仕方なく、一人寂しく駅から高校までの道のりを歩いて登校した。とはいえ、毎日一人で登校しているので、寂しいと思うのはおかしな話だ。しかし、目黒君と一緒に登校できると思っていたのに、急に一人で学校に行く羽目になったのだ。寂しくもなるものだ。
いつもより時間がかかった気がする通学路を歩き終え、高校に到着する。ようやく教室にたどり着くと、教室に親友のみさとを見つけて、思わず駆け寄った。どうやら、早く登校し過ぎたようで、教室には部活の朝練をしているメンバーがそろっていた。
みさとも朝練に向かうために教室から出ようとしていたらしいが、その前にどうしても今朝の出来事を話しておきたかった。
「はいはい。それは残念でしたね。それで、メガネはどうしたの?せっかく『メガネ女子』になる宣言したのに、もうあきらめたの?」
「そ、そんなわけないでしょ。た、たまたま今日は朝忙しくて、メガネをかけ忘れただけ……」
「そうですか、そうですか。それはそれは、良いご身分なことで。目がよい人はこれだから」
みさとは話を聞いてくれたのだが、どうにも私に対する態度がそっけない。朝練に行きたくて私の話を適当にはぐらかしているのだろうか。だとしたら、親友の恋愛相談を無下にすするとはいかがなものか。
「で、でも。目黒君もコンタクトを辞めて、今日は、め、メガネだっ」
「そこ、僕の席なんだけど。荷物を置いてもいいかな?」
「おはよう、目黒君。コンタクトはやめたの?」
「め、目黒君。ご、ごめんね」
駅でお手洗いに行っていた目黒君が教室に到着した。まさか、今までの私の話を聞かれていただろうか。いや、それはないだろう。今さっき入ってきたのに、先ほどまでの会話が聞こえるはずがない。
「おはよう、羽田さん。まあね。コンタクトにしてみたけど、やっぱり僕には合わなかった。目の乾燥も疲れもひどいし、やっぱりメガネに戻すことにしたよ」
「ふうん。でもさ、そうなると、面倒くさい奴が引き続き面倒なことになると思うけど、それはいいの?」
「面倒な奴はもう、あきらめた。それに、『メガネ』が好きであって、それをかけている僕の事はそこまで好きじゃないみたいだし」
「そうかもしれないけど、そこで油断したらダメよ」
なぜ、この二人はこんなにも普通の会話をしているのか。彼らは私が目黒君を好きなことを知っている。なぜ、当事者である目黒君も親友のみさとも、私の気持ちに寄り添うことをしてくれないのか。
「ど、どうして、そんなに……」
私だって、普通に目黒君と会話がしたい。どうして、私が話しかけると彼は無視したり、ひどいことを言ったりするのか。他の人にはみさとを含めて普通なのに。
「あれ、でも、私だけが……」
「じゃあ、目黒君。あとはよろしく。でも、良かったじゃない?仁美がメガネを忘れて。だって、目黒君、実は仁美と同じでメガネふぇ」
「さっさと朝練に行ったらどう?」
「はいはい」
何か、重大なことに気付きそうだった。しかし、その前にみさとが朝練に向かうために教室から出ていった。
「目黒、お前はコンタクトにするより、メガネの方がいいと思うぞ」
「私もそう思う。でも逆に日好さんはメガネがないほうがいいと思う。やっぱり、目がいい人にメガネはいらないね」
「普段の格好がやっぱり一番だよ。下手にコンタクトにしたり、伊達メガネをかけたりしない方が自然だ」
みさとが教室を出ていったとたん、その場にいたクラスメイトが次々と私たちに話しかけてきた。
「余計なお世話だ」
「今日は、たまたま、メガネを忘れて来ただけ!明日からは忘れずメガネかけるから!」
私たちの言葉に、クラスメイトはやれやれと首を傾げたり、あきれたような表情をしたりしていた。そして、かれらもまた、みさとに続いて教室から出ていった。
「わ、私もちょっと、お手洗いに行ってきます」
教室には私と目黒君の二人きりになってしまった。今朝は二人きりでの登校を望んでいたが、いざ二人きりになると、急に恥ずかしくなる。私も朝練に出掛けたクラスメイトの後を追って、教室を出た。目黒君は何も言わず、ただ黙って私を見つめていた
0
あなたにおすすめの小説
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる