結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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1結婚生活をするにあたり~一緒に住むための条件①~

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 婚姻届けを出し、結婚式を挙げて、私たちは名実ともに夫婦となった。夫婦となったら、普通は一緒に住むことになるだろう。


 さて、ここで問題が生じた。まずは、親と同居をするかどうか。私の家の両親は同居を希望していないが、大鷹さんの両親はどうだろうか。もし、同居したいと言い出したら、即離婚するつもりだ。

 古今東西、親との同居でよい話を聞いたことがない。偏見かもしれないが、私の周りではよい話を聞いたことがない。嫁と姑の問題もあり、さらに私は子供を産むつもりもないので、孫の問題も生じてくる。

 さらに私にはもう一つ、親との同居で問題が生じてくる。それは、腐女子ばれの危険性である。

 例えば、自分の部屋でBLの漫画を読んでいたとする。その途中に勝手に部屋に旦那、大鷹さんの親が入ってきたとしよう。

 想像しただけで恐ろしい。腐女子ばれは離婚の原因にもなりかねないし、何より、ゆっくりと自分の趣味に興じることもできない。離婚の原因となっても構わないが、他人にばれてしまうのは、やはり恥ずかしい。

 アニメもよく見る私にとって、音ばれも心配しなければならない。きわどいBLのアニメや、BLドラマCD、いかにもな深夜アニメもおちおちと見ることができない。

 私は基本的にイヤホンをつけない主義である。どうも、イヤホンが耳にあるのが、違和感に感じてしまう。ということで、イヤホンなしで、大音量でBLの絡みを聞きたいのである。アニメも大音量でしっかりと音を意識して聞きたい。

 実家では、すでに私が腐女子ということは家族にばれていて、あきらめられているので、自分の部屋で大音量で聞いていても何も言われることはなかった。

 それが同居によってできなくなるということは、私にとって死活問題である。どう転んでも、同居は悪い未来しか予想できない。

 
 ちなみに大鷹さんにはすでに腐女子ばれしていて、隠す必要はないので、一緒に住んでも恥ずかしいことは何もない。



 今日は土曜日で、私も大鷹さんも会社は休みである。私と大鷹さんは大鷹さんの住んでいるマンションンにいた。

 男の人の家に上がるのは初めてだが、すでに何度も上がらせてもらっているので、今更抵抗感はない。お泊りすることはなく、夕方には実家に戻っているので、いまだに清く正しい男女関係は続いている。

 これで結婚しているというのだから、我ながら驚いている。大鷹さんは欲求不満にならないのか心配である。

 まあ、それでも私がそういう行為を嫌がっているのを知っているので、襲われたことはないので、私としてはいいのだが。それでは、彼はどこで発散しているのだろうか。自慰だったら可哀想であるが、こればかりは私も譲れないので我慢しもらうしかない。


「大鷹さんは、親と同居するのですか。」

 一応、このまま結婚生活を続けていくのなら、住居の問題は解決しておかなければならない。

「同居ですか。僕も両親も同居は考えていません。」

「そうですか。同居しないなら、それに越したことはないなと思いまして。」

 同居しなくていいなら、一安心である。ただし、次の問題が控えている。結婚したなら、よほどの理由がない限り、夫婦は一緒に住むだろう。互いに仕事場が離れている、単身赴任などの理由で一緒に住んでいない夫婦は例外である。

 今のところ、仕事場については、互いの仕事場の中間点を取れば、問題なく一緒に住むことができる。


「そろそろ、一緒に住む場所を考えなくてはいけませんね。お金がたまったら、マイホームを買いたいですね。最初は、マンション住まいでも構いませんか。」


 やはり、大鷹さんも一緒に住む方向で考えているらしい。しかし、ひとつ確認しておきたいことがある。

「あの、大鷹さん、一緒に住むのには一つ問題がありまして。」

「ええと、潔癖という奴ですか。それは徐々に慣れていくように僕も努力しますけど。」

「そうではなくて……。」

 別に潔癖が原因で一緒に住めないということはない。そもそも、世の中の潔癖症と呼ばれる人に比べたらなんてことはない。人が触ったものに触れないということもないし、手を何回も洗わなければ気が済まないということもない。

 何が原因かというと、私の今までの人生に問題があると言えよう。

「あのですね……。実は私、友達と旅行というものをしたことがないのです。」


 突然の私のカミングアウトに大鷹さんは少し驚いた顔をしたが、内容に首をかしげていた。私の発言が、一緒に住むという話に関係あるのかどうかわからなかったのだろう。しかし、そのまま続けて、私の持論を話すことにした。

「ええとですね、つまり何が言いたいかといいますと、物事には順番というものがありまして。普通、友達ができて、一緒に遊んだり、お泊り会したり、旅行に行ったりするじゃないですか。」

「まあ、友達と遊んだり、旅行に行ったりはしますよね、普通。」

 話の意図がつかめなくても、話に合わせようとする大鷹さん。私は本当にいい旦那を見つけたものである。

「その普通を私は経験していないのですよ。だからこそ、今回の一緒に住む発言に苦言を呈しているというわけです。」


「でも、結婚式には友達を呼んでいましたよね。友達じゃなかったのですか。」

 目ざといところに気付いた大鷹さん。確かに結婚式に友達らしき人は何人か呼んだが、彼女たちが友達と呼べるかどうかはわからない。

「友達として、結婚式に呼びはしましたが、彼女たちとは大学の同じ学科で、比較的親しかっただけです。友達と呼べるまでではありません。実際、大学中に彼女らと一緒に休日に遊びに行くこともなければ、結婚式で会うまで、卒業後、一度もあったことがなかったのですから。」

 このままでは、結論にたどり着くまでに時間がかかりそうだが、せっかくの機会である。私の持論を大鷹さんに最後まで聞いてもらうことにしよう。


「私は人間関係には順番があると思っています。まずは、家族との関係。これは誰もがかかわっていると思います。私もこれはクリアしています。次に同性の友達を作ることです。友達と親しくなって、自分の意志で遊んだりすること。学生時代だったら学校以外で遊んだりすること、社会人なら、会社や仕事以外で自ら誘いをかけたりすることです。」

 ふう、一度大きく息を吸う。こんなことを他人に話すのは初めてである。家族にも話したことはない。

「そこで、お泊り会や旅行が出てくるわけです。一緒に一夜を過ごす経験をするわけです。同性との経験を終えたのちに、今度は異性との関係を築く。同じように親しくなった異性と恋愛して、デートしたり、泊りの旅行をしたりするわけです。そんなことを何度も繰り返して、やがて人は結婚して子供を産んで自分の子孫を残す。」

 同性、異性としているが、別にそれが反対でも問題ない。同性愛者もいてもいいわけだし、人によって違うことは構わない。そもそも、私が愛してやまないBLは男性同士の恋愛である。ただし、私自身の恋愛対象は異性である男性なので、同性の女性、次に異性の男性の順番で関係を進めていきたいという理想があった。


「話を要約すると、私は人間関係の順番を守りたいだけということです。もし、大鷹さんと一緒に住むとなれば、段階を一気に飛ばしすぎだと主張しているわけです。一気に人間関係の最終系にまでたどり着いてしまう。私のレベルではそこまでに至っていない。つまり、人間関係のレベルが異性と一緒に住むというレベルに達していないのです。アニメや漫画、小説じゃないのにそれはどうかと思います。」

 そう、言いたかったことはそういうことである。漫画や小説、アニメなどの二次元によくある、コミュ障のいじめられっ子、もしくはクラスで浮いた存在のボッチがいるとする。そこにヒーローよろしくイケメンの男子が現れる。

 男子が彼女を救って、なんやかんや最終的に付き合い始める。なんともうすら寒い恋愛話の王道である。

 私はこれが不自然に思えて仕方がなかった。それこそ、順番を飛ばしすぎている。もし、これがまかり通るなら、そのイケメン男子がよほど聖人レベルの良い人である。コミュ障をこじらせた根暗女子を好きになるはずがない。


「なんか、よくわからないんですけど、一つ確認してもいいですか。」

 黙って私の話を聞いていた大鷹さんが質問する。この際なので、質問には何でも答えるとしよう。

「どうぞ。こんな話は大鷹さんに初めてしたので、わからない点も多いと思います。遠慮なくわからないことは質問してください。一つじゃなくても構いません。」

「実は、紗々さんって、友達がいないコミュ障の寂しい子だったということですか。」

 グサッと心に痛い一言だった。そんな私を的確に表すようなことを言わないで欲しい。一つ目の質問からそんな精神攻撃をして、いったいどれだけ私を傷つけるのだろうか。実は大鷹さんはSなのかもしれない。


「いきなり、真実を的確に言うのはやめてください。あっていますよ。そうです。私は友達もいないコミュ障のボッチですよ。」

 やけくそに答えたら、なぜだか嬉しそうにする大鷹さん。なぜ、ここで嬉しそうにするのか謎である。

「コミュ障のボッチなのに、よく結婚相談所に登録して、僕とお見合いしてくれましたね。僕はそれが驚きです。でも、紗々さんのその行動のおかげで、僕たちは出会えたわけです。それに僕と結婚したからには、コミュ障のボッチとは言わせません。だって、僕とは、うまくコミュニケーションをとっていますし、僕がいるから、もうボッチではありません。」

 さらに続けて、大鷹さんは私の持論を論破する。


「人間関係の順番ですが、守らなくても問題はないと僕は思います。人それぞれ順番は違ってもいい。たまたま、紗々さんは段階をとばしてしまったけれど、レベル不足ということはありません。人間関係の最終段階が結婚なら、紗々さんはそこにたどり着けたわけですから、それまでの過程がどうであれ、問題ないです。」


 最終的に、自信満々に何の問題もないという始末である。いったいその自信はどこから出てくるのだろうか。

「ということで、一緒に住むのに問題はないということです。まだ何かほかに一緒に住みたくない理由はありますか。」

 どんな理由でも論破して見せる気たっぷりである。こうなったら、私も維持である。さらなる理由を話すことにした。


「それから、僕たちは結婚したのですから、いい加減、苗字で呼ぶのをやめてもらえると嬉しいです。」


「ええと、善処します。」

 大鷹さん、いや、攻君は気にしているようなので、できるだけ名前で呼べるように気をつけようと思った。

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