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番外編【バレンタイン】2紗々さんの過去~過去とは言っても、嫉妬はしてしまいます~
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「大鷹さんは、バレンタインでチョコをもらったことがあると思います。いや、どう考えてももらっていますよね。」
話を始める前に、なぜか俺のバレンタインのことを聞かれたので、ここで嘘をついても仕方がないので、正直に答えることにした。
「まあ、恥ずかしながら、毎年もらっていますけど、本命ではありませんよ。義理チョコです。」
「そう、義理チョコ。これが元凶なのです。」
紗々さんのバレンタインの過去が今ここで明かされることになった。
「高校で部活のメンバーが、男子部員にチョコをあげようということになりました。私は陸上部だったのですが、たまたま、男子も女子も人数は同じだったので、女子が一人一つチョコを持ち寄ろうということになりました。」
よくある話である。実際に俺も高校の時にそのような企画があって、女子部員からチョコをもらったことがある。どこの高校でも行われているメジャーな企画なのだろう。
「チョコを準備しろとのことだったので、仕方なく準備しました。好きでもない、世話にもなっていない、ただ同じ部活の男子部員の誰かのために労力を使うのは、正直面倒くささしかありませんでした。」
「確かにそう聞くと、面倒ではありますね。それでも手作りしたのでしょう。」
「大鷹さんはバカですか。いや、どんだけ手作りにこだわっているんですか。まあ、その話は置いておいて、私は労力を使うのは避けることにしました。」
「チョコを用意すればいい。それしか聞いていなかったので、私はスーパーで板チョコを買って渡すことにしました。」
「それだと、ハロウィンみたいな乗りですよね。さすがにそんな人は、紗々さん以外にいなかったでしょう。」
「正解です。それ以来、恥をかきたくないので、チョコを買うことすら辞めました。ああ、自分用は別ですよ。自分には日ごろのねぎらいも込めて、多少値段の張るチョコを毎年買っています。」
「じゃあ、紗々さんは好きな人にチョコをあげたことはないということですか。」
「そうなりますね。まあ、今年はあげてもいいかもしれませんが……。」
「でも、紗々さんからチョコをもらった人がうらやましいですね。手作りではないとはいえ、なんだか嫉妬してしまいます。」
そう、なんだか嫉妬してしまう。きっと、紗々さんにとってはどうってことはないことだろうが、俺がもしその場にいたらなあと思ってしまう。これが恋なのだろうか。
「そんなことを言ったら、私だって……。」
もしや、オレと同様に紗々さんもオレの過去のことに嫉妬してくれているのだろうか。それだったらうれしいのだが。
「私だって、大鷹さんのバレンタインを見てみたかったですよ。モテる男のチョコ事情とか見てみたいじゃないですか。」
急にまた気分が上昇したのか、オレには理解不能な話を始めた。
「二次元でよくあるじゃないですか。バレンタイン当日、学校に登校すると、下駄箱に大量のチョコの箱。これは衛生上どうかと思いますが。その後、教室にたどりつくまでにもらう、これまた大量のチョコレート。」
オレもその話は漫画や小説、アニメなどで見かけたことがある。その後も話は続いていく。
「教室に着くまでに疲労したモテ男に待ち受けているのも、やはり大量のチョコレート。机の上やロッカーに所狭しと置かれている。毎年のことながら、男はこっそりとため息をつく。去年までと違うのは、自分にたった一人の恋人ができたことだった……。」
「なんだか、この後の展開が読めるんですが、参考までに。そのモテ男さんの恋人の性別は………。」
「そう、モテ男にとって、今までと今では相手からのチョコレートに対する思いが違っていた。モテ男は最愛の恋人の姿を探す。目の端にとらえた恋人は、悲しそうに手に持っていた袋をどうしようかと悩んでいた。」
ここで、紗々さんのテンションが更に高まった。興奮して、声が大きくなり、クライマックスなのか、一気に話し出す。
「ああ、なんていじらしいんだ。オレのためにチョコレートを用意してくれた。それだけで、男は胸がいっぱいになった。自分たちの恋には障害が多い。特に性別に関しては、世間の目からはまだまだ厳しい目が向けられる。だからこそ、その葛藤を乗り越えて、今、この場にオレのためのチョコレートを持ってきてくれたことに男は感動せずにはいられないのだ。」
うん、わかっていたが、紗々さんの頭はやはり腐っていた。でも、ふと思ったのだ。今の話の主人公とヒロイン(ここでは両方男)は恋人同士だ。理解に苦しむが、きっとモテ男が攻めで、チョコをあげようとしているけなげな男が受けなのだろう。しかし、どちらも男ならば、モテ男の方もチョコレートを準備していてもおかしなことはない。同じ性別だからこそ、こういう男女のイベントに差異をつける必要はない。
「ああ、わかりますよ。大鷹さんの悩み。」
「まだ何も言っていませんが……。」
「モテ男の傲慢さに腹が立つのでしょう。仕方ありません。だって、チョコを用意した男はすでに脳も心も全身が乙女化しているので。それをモテ男も無意識に理解しています。そういうことで、チョコを用意するのは受けの恋人のみなのです。」
自信ありげに独自の持論を展開する紗々さんにいつものように苦笑すると、紗々さんににらまれてしまった。
「大鷹さんって、最近、どんどん腐男子化が進んでいますよね。私の話に文句をつけることはあるみたいですが、理解している節が時折見える。私にとっては、うれしいことですけど、世間的にはうれしくないですね。とりあえず……。」
「紗々さんがうれしいといってくれるだけでいいです。世間的なんてことは紗々さんが考える必要はないですよ。」
紗々さんのその後の言葉を遮って、最後まで言わせないようにした。世間的という言葉がオレは嫌いだ。世間的にとかいうけれど、それは仕事で使うときだけで充分だ。きっと紗々さんの言葉はこの後こう続くのだろう。
「大鷹さんに子供ができなくなってしまう。」
「そこまでは言いませんよ。私は最近、空気を読むことを覚えました。」
「それを口に出すのが、空気が読めないというんですよ。」
「善処します。」
お互いの目があい、にっこりとほほ笑み合う。こういう時に幸せだなと思う。だいぶオレも紗々さんに毒されてきたなと思う今日この頃だった。
話を始める前に、なぜか俺のバレンタインのことを聞かれたので、ここで嘘をついても仕方がないので、正直に答えることにした。
「まあ、恥ずかしながら、毎年もらっていますけど、本命ではありませんよ。義理チョコです。」
「そう、義理チョコ。これが元凶なのです。」
紗々さんのバレンタインの過去が今ここで明かされることになった。
「高校で部活のメンバーが、男子部員にチョコをあげようということになりました。私は陸上部だったのですが、たまたま、男子も女子も人数は同じだったので、女子が一人一つチョコを持ち寄ろうということになりました。」
よくある話である。実際に俺も高校の時にそのような企画があって、女子部員からチョコをもらったことがある。どこの高校でも行われているメジャーな企画なのだろう。
「チョコを準備しろとのことだったので、仕方なく準備しました。好きでもない、世話にもなっていない、ただ同じ部活の男子部員の誰かのために労力を使うのは、正直面倒くささしかありませんでした。」
「確かにそう聞くと、面倒ではありますね。それでも手作りしたのでしょう。」
「大鷹さんはバカですか。いや、どんだけ手作りにこだわっているんですか。まあ、その話は置いておいて、私は労力を使うのは避けることにしました。」
「チョコを用意すればいい。それしか聞いていなかったので、私はスーパーで板チョコを買って渡すことにしました。」
「それだと、ハロウィンみたいな乗りですよね。さすがにそんな人は、紗々さん以外にいなかったでしょう。」
「正解です。それ以来、恥をかきたくないので、チョコを買うことすら辞めました。ああ、自分用は別ですよ。自分には日ごろのねぎらいも込めて、多少値段の張るチョコを毎年買っています。」
「じゃあ、紗々さんは好きな人にチョコをあげたことはないということですか。」
「そうなりますね。まあ、今年はあげてもいいかもしれませんが……。」
「でも、紗々さんからチョコをもらった人がうらやましいですね。手作りではないとはいえ、なんだか嫉妬してしまいます。」
そう、なんだか嫉妬してしまう。きっと、紗々さんにとってはどうってことはないことだろうが、俺がもしその場にいたらなあと思ってしまう。これが恋なのだろうか。
「そんなことを言ったら、私だって……。」
もしや、オレと同様に紗々さんもオレの過去のことに嫉妬してくれているのだろうか。それだったらうれしいのだが。
「私だって、大鷹さんのバレンタインを見てみたかったですよ。モテる男のチョコ事情とか見てみたいじゃないですか。」
急にまた気分が上昇したのか、オレには理解不能な話を始めた。
「二次元でよくあるじゃないですか。バレンタイン当日、学校に登校すると、下駄箱に大量のチョコの箱。これは衛生上どうかと思いますが。その後、教室にたどりつくまでにもらう、これまた大量のチョコレート。」
オレもその話は漫画や小説、アニメなどで見かけたことがある。その後も話は続いていく。
「教室に着くまでに疲労したモテ男に待ち受けているのも、やはり大量のチョコレート。机の上やロッカーに所狭しと置かれている。毎年のことながら、男はこっそりとため息をつく。去年までと違うのは、自分にたった一人の恋人ができたことだった……。」
「なんだか、この後の展開が読めるんですが、参考までに。そのモテ男さんの恋人の性別は………。」
「そう、モテ男にとって、今までと今では相手からのチョコレートに対する思いが違っていた。モテ男は最愛の恋人の姿を探す。目の端にとらえた恋人は、悲しそうに手に持っていた袋をどうしようかと悩んでいた。」
ここで、紗々さんのテンションが更に高まった。興奮して、声が大きくなり、クライマックスなのか、一気に話し出す。
「ああ、なんていじらしいんだ。オレのためにチョコレートを用意してくれた。それだけで、男は胸がいっぱいになった。自分たちの恋には障害が多い。特に性別に関しては、世間の目からはまだまだ厳しい目が向けられる。だからこそ、その葛藤を乗り越えて、今、この場にオレのためのチョコレートを持ってきてくれたことに男は感動せずにはいられないのだ。」
うん、わかっていたが、紗々さんの頭はやはり腐っていた。でも、ふと思ったのだ。今の話の主人公とヒロイン(ここでは両方男)は恋人同士だ。理解に苦しむが、きっとモテ男が攻めで、チョコをあげようとしているけなげな男が受けなのだろう。しかし、どちらも男ならば、モテ男の方もチョコレートを準備していてもおかしなことはない。同じ性別だからこそ、こういう男女のイベントに差異をつける必要はない。
「ああ、わかりますよ。大鷹さんの悩み。」
「まだ何も言っていませんが……。」
「モテ男の傲慢さに腹が立つのでしょう。仕方ありません。だって、チョコを用意した男はすでに脳も心も全身が乙女化しているので。それをモテ男も無意識に理解しています。そういうことで、チョコを用意するのは受けの恋人のみなのです。」
自信ありげに独自の持論を展開する紗々さんにいつものように苦笑すると、紗々さんににらまれてしまった。
「大鷹さんって、最近、どんどん腐男子化が進んでいますよね。私の話に文句をつけることはあるみたいですが、理解している節が時折見える。私にとっては、うれしいことですけど、世間的にはうれしくないですね。とりあえず……。」
「紗々さんがうれしいといってくれるだけでいいです。世間的なんてことは紗々さんが考える必要はないですよ。」
紗々さんのその後の言葉を遮って、最後まで言わせないようにした。世間的という言葉がオレは嫌いだ。世間的にとかいうけれど、それは仕事で使うときだけで充分だ。きっと紗々さんの言葉はこの後こう続くのだろう。
「大鷹さんに子供ができなくなってしまう。」
「そこまでは言いませんよ。私は最近、空気を読むことを覚えました。」
「それを口に出すのが、空気が読めないというんですよ。」
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お互いの目があい、にっこりとほほ笑み合う。こういう時に幸せだなと思う。だいぶオレも紗々さんに毒されてきたなと思う今日この頃だった。
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