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番外編【バレンタイン】7バレンタイン当日~やはり紗々さんでした~
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次の日からお互いに仕事が始まった。今年のバレンタインは平日の木曜日。すでにオレは手作りのお菓子を紗々さんに渡している。しかし、それとは別に、ひそかにあるチョコを購入していた。紗々さんがリクエストしたものだ。それを渡して、今度こそ、自分の気持ちを改めて紗々さんに伝えようと心に決めていた。
オレは木曜日にそのチョコを渡した紗々さんの顔を楽しみに仕事に励んでいた。会社でもちらほらとバレンタインの話で盛り上がっていた。楽しそうに盛り上がっていたが、他人に興味はないので、無視して仕事をしていた。
そして、いよいよ木曜日がやってきた。バレンタイン当日である。
朝は、オレの方が早く家を出る。
「いってきます。」
「いってらっしゃい。」
普段の朝の光景である。オレも紗々さんも今日がバレンタインということは知っているはずだが、朝食時にその話題が上ることもなく、家を出るときも何も起こらなかった。
会社につき、自分の机にたどりつく前に、女性社員に声をかけられた。オレ達の仕事を補助してくれる大事な人材だ。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
挨拶すると、恥ずかしそうに手に持っていた何かをオレに渡してきた。何かといっても、今日が何の日かわかれば簡単に予想できる。
「これ、私たち女子社員からのチョコです。いつも大鷹さんにはお世話になっているので、日ごろのお礼です。受け取ってください。」
よく見ると、確かにチョコが入っている箱らしき上にメッセージカードがついていた。そこには「女子社員一同」と書かれている。
「ありがとう。」
素直にお礼を言って受け取っておく。明らかに義理と分かるものまで断る必要もないだろう。お礼を言われた女子社員は顔を真っ赤にしていたが、気にしない。これは義理チョコなのだ。
女子社員からのチョコをもらい、自分の机に座り、今日の仕事を確認する。そして、朝礼が始まり、仕事が始まった。
オレは結局、仕事を終えて帰宅するまでに合計5つのチョコをもらった。日ごろのお礼と称されるチョコばかりだ。女性一同のチョコがあったにも関わらず、オレに個人的に渡してきた女性がいたのだ。中には明らかに本命らしきチョコもあったので、そこは自分の直感を信じて断った。
そのため、今オレの手元には3個のチョコが残っている。そもそも、本命を渡す方がどうかしている。オレは、結婚指輪こそつけていないが、結婚していることを隠してはいない。それなのに本命チョコを渡す方がおかしいのだ。
家に帰ると、何やらチョコレートらしきいいにおいが部屋中に充満していた。もしや、紗々さんがオレのために、などと言う考えが一瞬頭をよぎったが、すぐにそれはないと思いなおす。バレンタイン前に話していたではないか。お菓子作りなど面倒なことはしない、と。
しかしだとすると、この甘いにおいの正体は何だろうか。玄関で考えていても仕方ないので、急いで、靴を脱いで、においの正体を探りにキッチンに向かった。
「ああ、おかえりなさい。大鷹さん。ちょうどいい感じに溶けたので、一緒に食べましょう。」
リビングのキッチンには大きな鍋が置かれていた。中身をのぞくと、そこには茶色いチョコレートが液体状に溶けて入っていた。その隣にも鍋が置いてあったので、それものぞいてみると、中身は白っぽい何かだった。においをかぐと、チーズのにおいがした。
「せっかくなので、今日の夕飯にしてみました。どうでしょう。」
「いや、どうと言われても。チョコとチーズフォンデュのダブルなんて、なかなかお目にかかれないと思いますけど。」
「それがいいんじゃないですか。いろいろ材料をそろえるのに苦労したんですよ。甘いものばかりだとオカズにならないと思って。」
テーブルには紗々さんの言う通り、いろいろな具材が乗っていた。定番のフランスパンはもちろん、イチゴやバナナなどのフルーツにソーセージにからあげなどが置かれていた。
「これは想像していませんでした。食べる前に着替えてきます。」
紗々さんの行動には驚かされることが多いが、今回も驚きだ。そうと分かればオレも驚きをプレゼントしよう。自分の部屋に向かい、急いで着替えて、購入したチョコをもって紗々さんのもとに向かった。
「着替えるのにそんなに時間がかかりますか。」
「ハッピーバレンタインです。日ごろの感謝と愛をこめて。」
有無を言わさず、オレは紗々さんにチョコを手渡した。
「えっと。あ、ありがとうございます。」
まさか、月曜日に引き続き、またもらえるとは思っていなかったのだろう。目を白黒させて戸惑っていた。
「そう、そういえば、月曜日にくれたお菓子のお礼を言いそびれていました。お、おいしかったです。ありがとう、ございました。て、手作りには驚かされました。それで、今回のはいったい……。」
「喜んでいただけて何よりです。お菓子作りは面倒でしたが、それでも紗々さんの喜ぶ顔が見たくて作りました。それとこれは、紗々さんの希望の品です。希望の品は二種類でしたけど、一つは自分で用意していたようですね。」
オレは手作りとは別にアルコール入りのチョコも準備していた。紗々さん本人が食べたかったかどうかはわからないが、欲しそうだったので、準備した。もう一つは鍋に入っているので、それで満足だろう。
「こ、これはやばいですね。驚きすぎて、考えがまとまりません。」
あまりにも呆然としていたので、何か不手際でもあったのか心配になってしまう。しかし、心配には及ばなかったようだ。
「でも、これだけは言えます。私は素晴らしい夫と結婚したということです。素晴らしい。」
「それは良かった。では、紗々さんが準備してくれたものを冷める前に食べましょう。」
「ハイ。今日の夕飯をこれにした理由は……。」
紗々さんが理由を語りだす。それをオレは、はいはいと笑って聞いている。ささいな、けれど幸せなほっこりとした日常だ。
しかし、その後のカオスな状況はいただけなかった。チョコフォンデュもチーズフォンデュもおいしくいただいたが、その方法がやばかった。
どうやら、紗々さんはオレとチョコプレイをしたかったらしい。オレの口にフォークで材料を運んで食べさせてくれた。それはよくある、食べさせあいで許容の範囲内だ。
「ああ、口にチョコが。拭いてあげますよ。」
「ああ、指にもついていますよ。まったく、おっちょこちょいなんですから。」
わざとだろうが、口に運ぶ直前にオレの頬にチョコをつけてくる。そうなると当然、オレの口元や頬にチョコが付く。挙句の果てにはチョコをわざとオレの手にかけてくる始末だ。それを当然のようにぬぐってくる。ただし、なぜかそこは濡れタオルだった。理解不能だ。
「うふふふふふ。」
チョコとチーズをたらふく食べ、食後のお茶を飲んでいると、突然笑い出した紗々さん。
「楽しいですねえ。」
何やら顔が赤く、目がうつろになっていた。嫌な予感がするが、そんな展開はそれこそ、紗々さんがいうように、二次元にしかないと思っている。
「紗々さんはいつから、二次元の仲間入りしたんですか。」
いつの間にやら、オレが買ってきたアルコール入りのチョコレートの箱が空になって、床に落ちていた。9個入りのものを買ったはずなのに、全部食べてしまったのだろうか。
「おいしかったですよお。ひっく。ああ、私はお酒で酔ったことはないから心配いらないですよお。」
ああ、どうしてこうなるのだろうか。
そう思いながら、仕方なく、酔いつぶれた紗々さんの面倒を見るオレだった。理性が飛んで襲いそうになったのを必死にこらえていたことは紗々さんには内緒である。
オレは木曜日にそのチョコを渡した紗々さんの顔を楽しみに仕事に励んでいた。会社でもちらほらとバレンタインの話で盛り上がっていた。楽しそうに盛り上がっていたが、他人に興味はないので、無視して仕事をしていた。
そして、いよいよ木曜日がやってきた。バレンタイン当日である。
朝は、オレの方が早く家を出る。
「いってきます。」
「いってらっしゃい。」
普段の朝の光景である。オレも紗々さんも今日がバレンタインということは知っているはずだが、朝食時にその話題が上ることもなく、家を出るときも何も起こらなかった。
会社につき、自分の机にたどりつく前に、女性社員に声をかけられた。オレ達の仕事を補助してくれる大事な人材だ。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
挨拶すると、恥ずかしそうに手に持っていた何かをオレに渡してきた。何かといっても、今日が何の日かわかれば簡単に予想できる。
「これ、私たち女子社員からのチョコです。いつも大鷹さんにはお世話になっているので、日ごろのお礼です。受け取ってください。」
よく見ると、確かにチョコが入っている箱らしき上にメッセージカードがついていた。そこには「女子社員一同」と書かれている。
「ありがとう。」
素直にお礼を言って受け取っておく。明らかに義理と分かるものまで断る必要もないだろう。お礼を言われた女子社員は顔を真っ赤にしていたが、気にしない。これは義理チョコなのだ。
女子社員からのチョコをもらい、自分の机に座り、今日の仕事を確認する。そして、朝礼が始まり、仕事が始まった。
オレは結局、仕事を終えて帰宅するまでに合計5つのチョコをもらった。日ごろのお礼と称されるチョコばかりだ。女性一同のチョコがあったにも関わらず、オレに個人的に渡してきた女性がいたのだ。中には明らかに本命らしきチョコもあったので、そこは自分の直感を信じて断った。
そのため、今オレの手元には3個のチョコが残っている。そもそも、本命を渡す方がどうかしている。オレは、結婚指輪こそつけていないが、結婚していることを隠してはいない。それなのに本命チョコを渡す方がおかしいのだ。
家に帰ると、何やらチョコレートらしきいいにおいが部屋中に充満していた。もしや、紗々さんがオレのために、などと言う考えが一瞬頭をよぎったが、すぐにそれはないと思いなおす。バレンタイン前に話していたではないか。お菓子作りなど面倒なことはしない、と。
しかしだとすると、この甘いにおいの正体は何だろうか。玄関で考えていても仕方ないので、急いで、靴を脱いで、においの正体を探りにキッチンに向かった。
「ああ、おかえりなさい。大鷹さん。ちょうどいい感じに溶けたので、一緒に食べましょう。」
リビングのキッチンには大きな鍋が置かれていた。中身をのぞくと、そこには茶色いチョコレートが液体状に溶けて入っていた。その隣にも鍋が置いてあったので、それものぞいてみると、中身は白っぽい何かだった。においをかぐと、チーズのにおいがした。
「せっかくなので、今日の夕飯にしてみました。どうでしょう。」
「いや、どうと言われても。チョコとチーズフォンデュのダブルなんて、なかなかお目にかかれないと思いますけど。」
「それがいいんじゃないですか。いろいろ材料をそろえるのに苦労したんですよ。甘いものばかりだとオカズにならないと思って。」
テーブルには紗々さんの言う通り、いろいろな具材が乗っていた。定番のフランスパンはもちろん、イチゴやバナナなどのフルーツにソーセージにからあげなどが置かれていた。
「これは想像していませんでした。食べる前に着替えてきます。」
紗々さんの行動には驚かされることが多いが、今回も驚きだ。そうと分かればオレも驚きをプレゼントしよう。自分の部屋に向かい、急いで着替えて、購入したチョコをもって紗々さんのもとに向かった。
「着替えるのにそんなに時間がかかりますか。」
「ハッピーバレンタインです。日ごろの感謝と愛をこめて。」
有無を言わさず、オレは紗々さんにチョコを手渡した。
「えっと。あ、ありがとうございます。」
まさか、月曜日に引き続き、またもらえるとは思っていなかったのだろう。目を白黒させて戸惑っていた。
「そう、そういえば、月曜日にくれたお菓子のお礼を言いそびれていました。お、おいしかったです。ありがとう、ございました。て、手作りには驚かされました。それで、今回のはいったい……。」
「喜んでいただけて何よりです。お菓子作りは面倒でしたが、それでも紗々さんの喜ぶ顔が見たくて作りました。それとこれは、紗々さんの希望の品です。希望の品は二種類でしたけど、一つは自分で用意していたようですね。」
オレは手作りとは別にアルコール入りのチョコも準備していた。紗々さん本人が食べたかったかどうかはわからないが、欲しそうだったので、準備した。もう一つは鍋に入っているので、それで満足だろう。
「こ、これはやばいですね。驚きすぎて、考えがまとまりません。」
あまりにも呆然としていたので、何か不手際でもあったのか心配になってしまう。しかし、心配には及ばなかったようだ。
「でも、これだけは言えます。私は素晴らしい夫と結婚したということです。素晴らしい。」
「それは良かった。では、紗々さんが準備してくれたものを冷める前に食べましょう。」
「ハイ。今日の夕飯をこれにした理由は……。」
紗々さんが理由を語りだす。それをオレは、はいはいと笑って聞いている。ささいな、けれど幸せなほっこりとした日常だ。
しかし、その後のカオスな状況はいただけなかった。チョコフォンデュもチーズフォンデュもおいしくいただいたが、その方法がやばかった。
どうやら、紗々さんはオレとチョコプレイをしたかったらしい。オレの口にフォークで材料を運んで食べさせてくれた。それはよくある、食べさせあいで許容の範囲内だ。
「ああ、口にチョコが。拭いてあげますよ。」
「ああ、指にもついていますよ。まったく、おっちょこちょいなんですから。」
わざとだろうが、口に運ぶ直前にオレの頬にチョコをつけてくる。そうなると当然、オレの口元や頬にチョコが付く。挙句の果てにはチョコをわざとオレの手にかけてくる始末だ。それを当然のようにぬぐってくる。ただし、なぜかそこは濡れタオルだった。理解不能だ。
「うふふふふふ。」
チョコとチーズをたらふく食べ、食後のお茶を飲んでいると、突然笑い出した紗々さん。
「楽しいですねえ。」
何やら顔が赤く、目がうつろになっていた。嫌な予感がするが、そんな展開はそれこそ、紗々さんがいうように、二次元にしかないと思っている。
「紗々さんはいつから、二次元の仲間入りしたんですか。」
いつの間にやら、オレが買ってきたアルコール入りのチョコレートの箱が空になって、床に落ちていた。9個入りのものを買ったはずなのに、全部食べてしまったのだろうか。
「おいしかったですよお。ひっく。ああ、私はお酒で酔ったことはないから心配いらないですよお。」
ああ、どうしてこうなるのだろうか。
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