結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【腰痛】2腰痛といえば➁~貴重な体験をすることができました~

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 次の日、やはり腰の痛みはひいていなかった。何もしていなくても、ずきずきと腰に鈍い痛みがあり、不快だった。

「おはようございます」

「おはよう。なんだか朝から元気がないようだけど、どうしたの?」

「ああ、実は、昨日の夜から腰の痛みがすごくて……」


「えええ!倉敷さんって、そういうことに淡泊だと思っていたけど、やっぱり新婚さんねえ。ふふふ。お熱いこと」

 朝の朝礼の合間に、私の調子の悪そうな様子を見かねて、安藤さんが声をかけてきた。私は何の意図もなく、腰が痛いことを伝えると、彼女に意味深に笑われてしまった。

「ほどほどにしてもらいなさいね。それにしても、旦那さんは、あなたに、自分のものだアピールはしないのねえ」

「いや、なんか、誤解しているようですけど、私たちは」

「朝から、いいものを見たわあ」

 私の話を聞かず、一人で勝手に誤解した安藤さんは、嬉しそうに自分の持ち場に去っていった。


 昼休憩中、安藤さんの今朝の言葉について考えていた。言われた直後は頭が回らず、とっさに誤解だと反射的に答えたが、彼女の言葉の意味を深く考えてはいなかった。受付をしていた時も、客が思いのほか多くて、考える余裕がなかった。

「腰の痛み、淡泊、新婚、旦那、自分のものだアピール……」

 今朝の安藤さんとの会話を思い出し、キーワードを口に出してみる。

「なっ!いやいや、なんで、腰が痛いと言っただけで、そんなことに」

私は、ようやく、安藤さんの発した言葉の意味を理解して、顔から火が出そうになった。ちょうど、昼食の弁当を食べ終わり、スマホで、BL小説投稿サイトに投稿されている人気作家の小説を読んでいる最中のことだった。




「イタタタタタタッ」

 オレは、昨日のあいつとの行為のせいで痛めた腰に手を当て、仕事をしていた。

「昨日の夜は、ずいぶんと激しかったみたいですね」

「なっ!どうしてそれが」

「腰に手を当てていますし、それに首元についていますよ。本当に、仲がよろしいんですね」

 課長の言葉に、オレは顔から火が出そうになった。慌てて首元を確認しようとするが、スーツをかっちりと着こんでいるため、昨日つけられたキスマークは見えないはずだった。課長にからかわれたことを知り、さらに顔を赤くなる。

「か、からかうのもいい加減にしてください」

「からかうなんてとんでもない。むしろ、あなたをそんな風に乱れさせる彼がうらやましいと思っているんですよ」


「課長、三番に内線が入っています」

「わかった。代わるから、そのままにしておいてくれ。じゃあね、仕事に支障が出るほど、彼とヤるのは控えた方がいいよ」

 課長は軽くウインクして、電話に出るため、その場を去っていった。オレは、顔のほてりを冷やすために、トイレに直行した。




 私が最近お気に入りのBL小説は、会社員×会社員の話で、毎日昼頃に投稿されるため、今日も楽しみに更新分を読んでいた。たまたま今日の更新分が、私の会話と同じようなシチュエーションの内容だった。

いや、私は別に大鷹さんとヤっていないし、職場にイケメンの課長もいないし、見ようによっては全然違うのだが、私にとっては、同じシチュエーションに思えたのだ。

「そうか。この腰の痛みは、私に縁のない、あれの痛みでもあるのか」

腰が痛いというのは、あの、男女か、まあ、男女以外でもあり得る、愛の行為でも起こりうる痛みだったのだ。これは失念していた。

「ということは、私はいま、受けの痛みを体験している……」



「受けの痛みを体験って、いったい何の話?倉敷さん、柔道の体験でもしたの?」

「いいえ、こちらの独り言です。気にしないでください」

 一緒に昼休憩をしていた平野さんが、私の独り言に反応して、不審そうに首をかしげていた。
 
 受けの痛みを体験している。そうとわかれば、これは、女性の身でありながら、BL実体験をしているということで、とても貴重な体験だ。この痛みを文章に記憶しておかなければ。

 そう思いつつも、やっぱり痛いのが続くのは嫌だったので、今日はおとなしく仕事帰りに整体によることにした。

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