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番外編【成人式】2新ネタに使えそうです
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成人式といえば、20歳になり大人の仲間入りを果たしたことを祝うイベントである。今は成人年齢が18歳に引き下げられたが、今年も「20歳を祝う会と」して女性は振袖、男性はスーツを着て市民会館などで集まるイベントごとは健在である。私の地域は市内の中学校の時の同級生が集まっていたが、他の地域はどうなのだろうか。きっと同じようなものに違いない。
引きこもりで友達0の私も、とりあえず当日は振袖を着て成人式に参加した。すでにそれが10年も昔の出来事になっていることに驚きを隠せない。とはいえ、10年たった今だからこそ、笑って思い返せるものだ。
「さて、では今回は成人式と看病イベントを両方盛り込んだ話でも書きますか」
どうにも最近、小説の方の執筆が進まずにいた。いわゆるスランプに陥っていたが、これを機に脱却できるかもしれない。なんだか久しぶりに面白そうな話が書けそうだ。
私は部屋のストーブを入れるのも忘れて、ひたすらパソコンに向かって今思いついたネタを打ち込んでいく。
・成人式
・同窓会
・懐かしの再会
・変わり果てた幼馴染の姿
・まさかの転職先でその仲間と一緒に働くことになる
・新年早々、体調を崩す幼馴染
・一人暮らしをしているとのことで、仕方なく看病に向かう
・熱に浮かれて苦しそうにする幼馴染
・思いのほか色っぽい表情に胸の鼓動が激しくなる
・記憶が混濁しているのか、幼馴染は看病に来た主人公に対して、違う名前で問いかける
・そこでハッとして主人公は、慌てて看病グッズを置いて家を去る
・幼馴染に恋人がいる可能性を考慮していなかった
・我ながらそのことにショックを受ける
・後日、会社に復帰した幼馴染は主人公が家に来たことを覚えていなかった
「ずいぶん熱心にパソコンに向かってネタを打ち込んでいるようですけど、夕飯にしませんか?」
真剣にキーボードをたたいていて、自分の夫が背後にくるまで存在を認識できなかった。慌てて後ろを振り向くと、やけに笑顔が素敵な夫の顔が目の前にあった。
「イヤ、べ、ベツニネッシンニトマデハ……」
こんな良い笑顔でほほ笑まれると、大抵の女性はコロッと大鷹さんに落とされてしまうだろう。しかし、私は知っている。こんな笑顔の時、大鷹さんは内心で怒り狂っているのだ。はて、今回は一体何に対して怒っているのだろうか。考えてもわからないので、私はおとなしく、今思いついたネタが消えないように保存をして、そっとパソコンの電源を落とした。
「いただきます」
今日はカボチャ入りのシチューだった。大鷹さんは料理も得意らしい。私たちは共働きで働いているので、家事は当番制にしている。今日の夕食当番は大鷹さんだった。
「それで、今回はどんな話にする予定ですか?」
にこにこと私を見つめる大鷹さんだったが、私はアツアツのシチューを食べながらも内心はひやひやしていた。悪いことはしていないはずだ。だから、正直に答えることにした。
「成人式で中学以来の再会を果たした幼馴染がまさかの主人公の転職先にいた。幼馴染が風邪で会社を休んだので、一人暮らしで誰も看病する人がいないことを心配した主人公が家にむかう。そこで高熱にうなされ、頬を赤く染めて苦しそうに息を吐く姿を見て胸が高鳴る。しかし、自分が看病していいものだろうか。彼女がいるのではないか。だったら自分がここにいてはいけないのではないか。慌てて家を出る主人公。急に胸が締め付けられるような痛みを感じる。ああ、俺は幼馴染のことが……」
長々とあらすじをかたってしまったが、ひかれていないだろうか。ちらりと大鷹さんに視線を向けると、大きな溜息を吐いていた。
「いつも通りの紗々さんで安心しました。僕の思い違いだったのなら、大丈夫です。思う存分、紗々さんの妄想を小説にしてください」
「いや、大鷹さんの悩みを先に聞きましょう。いったい、私の何に怒り狂っていたのですか?」
「エエト、それはその……」
大鷹さんは笑顔を引っ込め、急におろおろ所在なさげに視線を宙にさまよわせ始めた。珍しい光景だ。今まで私ばかりが大鷹さんに翻弄されていた。今度は私が主導権を握る番だ。
「実は成人式にあまりいい思い出がないんです。それなのに紗々さんが急に成人式と言い出すから、紗々さんが成人式での甘酸っぱい思い出を語り始めたらどうしようかと思って」
私の興味津々な瞳に負けて、しぶしぶ大鷹さんが語り始めたのは意外なことだった。いや、こんなにモテモテな男なので予想はできていた。モテる男はイベントごとが苦手なものだ。私から見たら二次元の話だが、大鷹さんにとっては実際に体験したことだ。大鷹さんの話を聞いた後は、私の成人式と看病イベントでも話しておこう。
大鷹さんとは違う理由で、私も成人式に良い思い出がない。
引きこもりで友達0の私も、とりあえず当日は振袖を着て成人式に参加した。すでにそれが10年も昔の出来事になっていることに驚きを隠せない。とはいえ、10年たった今だからこそ、笑って思い返せるものだ。
「さて、では今回は成人式と看病イベントを両方盛り込んだ話でも書きますか」
どうにも最近、小説の方の執筆が進まずにいた。いわゆるスランプに陥っていたが、これを機に脱却できるかもしれない。なんだか久しぶりに面白そうな話が書けそうだ。
私は部屋のストーブを入れるのも忘れて、ひたすらパソコンに向かって今思いついたネタを打ち込んでいく。
・成人式
・同窓会
・懐かしの再会
・変わり果てた幼馴染の姿
・まさかの転職先でその仲間と一緒に働くことになる
・新年早々、体調を崩す幼馴染
・一人暮らしをしているとのことで、仕方なく看病に向かう
・熱に浮かれて苦しそうにする幼馴染
・思いのほか色っぽい表情に胸の鼓動が激しくなる
・記憶が混濁しているのか、幼馴染は看病に来た主人公に対して、違う名前で問いかける
・そこでハッとして主人公は、慌てて看病グッズを置いて家を去る
・幼馴染に恋人がいる可能性を考慮していなかった
・我ながらそのことにショックを受ける
・後日、会社に復帰した幼馴染は主人公が家に来たことを覚えていなかった
「ずいぶん熱心にパソコンに向かってネタを打ち込んでいるようですけど、夕飯にしませんか?」
真剣にキーボードをたたいていて、自分の夫が背後にくるまで存在を認識できなかった。慌てて後ろを振り向くと、やけに笑顔が素敵な夫の顔が目の前にあった。
「イヤ、べ、ベツニネッシンニトマデハ……」
こんな良い笑顔でほほ笑まれると、大抵の女性はコロッと大鷹さんに落とされてしまうだろう。しかし、私は知っている。こんな笑顔の時、大鷹さんは内心で怒り狂っているのだ。はて、今回は一体何に対して怒っているのだろうか。考えてもわからないので、私はおとなしく、今思いついたネタが消えないように保存をして、そっとパソコンの電源を落とした。
「いただきます」
今日はカボチャ入りのシチューだった。大鷹さんは料理も得意らしい。私たちは共働きで働いているので、家事は当番制にしている。今日の夕食当番は大鷹さんだった。
「それで、今回はどんな話にする予定ですか?」
にこにこと私を見つめる大鷹さんだったが、私はアツアツのシチューを食べながらも内心はひやひやしていた。悪いことはしていないはずだ。だから、正直に答えることにした。
「成人式で中学以来の再会を果たした幼馴染がまさかの主人公の転職先にいた。幼馴染が風邪で会社を休んだので、一人暮らしで誰も看病する人がいないことを心配した主人公が家にむかう。そこで高熱にうなされ、頬を赤く染めて苦しそうに息を吐く姿を見て胸が高鳴る。しかし、自分が看病していいものだろうか。彼女がいるのではないか。だったら自分がここにいてはいけないのではないか。慌てて家を出る主人公。急に胸が締め付けられるような痛みを感じる。ああ、俺は幼馴染のことが……」
長々とあらすじをかたってしまったが、ひかれていないだろうか。ちらりと大鷹さんに視線を向けると、大きな溜息を吐いていた。
「いつも通りの紗々さんで安心しました。僕の思い違いだったのなら、大丈夫です。思う存分、紗々さんの妄想を小説にしてください」
「いや、大鷹さんの悩みを先に聞きましょう。いったい、私の何に怒り狂っていたのですか?」
「エエト、それはその……」
大鷹さんは笑顔を引っ込め、急におろおろ所在なさげに視線を宙にさまよわせ始めた。珍しい光景だ。今まで私ばかりが大鷹さんに翻弄されていた。今度は私が主導権を握る番だ。
「実は成人式にあまりいい思い出がないんです。それなのに紗々さんが急に成人式と言い出すから、紗々さんが成人式での甘酸っぱい思い出を語り始めたらどうしようかと思って」
私の興味津々な瞳に負けて、しぶしぶ大鷹さんが語り始めたのは意外なことだった。いや、こんなにモテモテな男なので予想はできていた。モテる男はイベントごとが苦手なものだ。私から見たら二次元の話だが、大鷹さんにとっては実際に体験したことだ。大鷹さんの話を聞いた後は、私の成人式と看病イベントでも話しておこう。
大鷹さんとは違う理由で、私も成人式に良い思い出がない。
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