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番外編【看病イベント】3監視、されている?
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「ブーブー」
マンションの駐車場に車を停めて、車から出るとすっかり日が暮れてあたりは夕闇に包まれていた。日が暮れて一層冷えてきた気がする。コートの前をしっかりと閉めてマンションに向かって歩いていると、カバンの中のスマホが振動していることに気づく。
「大鷹家って、私の事を監視でもしているのだろうか」
思わずつぶやきたくなるほど、タイミングが良いのか悪いのか。スマホに表示された相手にため息が出る。
「もしもし、倉敷ですけど」
「いまだに旧姓はどうかと思うわよ。攻君が風邪を引いたみたいね。紗々さんは大丈夫?」
どこから情報が漏れたのだろうか。もしかして、きらりさんだろうか。もしそうだとしたら仕事が早すぎる。
「私は元気です。その、千沙さんに聞きたいんですけど、大鷹さんが寝こむと何がおこ」
「どうしたの?」
電話の相手は大鷹さんの叔母にあたる千沙さんだった。大鷹さんがお母さんと呼んでしまうほど、幼少期はお世話になったそうだ。彼女なら彼女たちの忠告の理由を教えてくれるだろう。しかし、口を開いた私の言葉は途中で止まってしまった。スマホ越しに千沙さんの声が聞こえるがそれどころではない。
「千沙さん、いったん電話切りますね。また後でかけなおします」
千沙さんが何か言っているのが聞こえたが無視して通話を終える。スマホをコートのポケットにしまってマンションのエントランス近くで立ち尽くす女性の間を通り抜けようとする。
「このマンションの住人ですか?」
私の存在に気づいた女性に声をかけられる。さっさと中に入らないのはマンションの住人ではないからだ。女性を見たときからうすうす気づいていた。だとすると、この女性はだれなのか。まるでアイドルの出待ちをしているかのような女性は、あっさりと私に正体を明かしてくれた。
「大鷹さんっていますよね?わたし、彼の職場の同僚なんです。彼、今日具合が悪くて早退したみたいで、看病をしに来たんですけどお」
私が返事をしないのをいいことに、女性がべらべらと遠慮なしに話し出す。私とは正反対の女性だった。髪は明るい茶髪でセミロングの髪を緩くカールさせている。胸元がやけに開いたフリルのブラウスにタイトスカートをはいていた。スカートの丈がやけに短いのが気になる。化粧もばっちりでまつげがバサバサでアイメイクも派手。唇は真っ赤に彩られていた。
ここで自分が「大鷹の妻は私である」とばらしてもいいだろうか。もし私がこの女性と張り合える容姿や服装をしていたら話は違ったかもしれないが、あいにく今の格好は大鷹さん目当ての女性を追い払うほどの効力はない。
ベージュのキルトコートに下はジーパン。中は紺のタートルネックに緑のカーディガンで色気のかけらもない。化粧も最低限で勝てる要素が見当たらない。
どうしたものか。このまま無視してマンションに入ってしまおうか。とりあえず無視してエントランスまで入ったが、案の定、女性は私の後ろにぴったりとくっついてきた。
「あの、私は部屋に戻るので、誰かと待ち合わせているのならその人に開けてもら」
「ヤッホー。さすがおおたかっちだねえ。この光景は懐かしさすら覚えるよ」
「おや、その話し方。攻君を知っている風な感じだね」
やはり、私は彼女たちに監視されているのだ。まあ、一人は毎日仕事で顔を合わせているので監視とは言わないが。
「きらりさん、それに河合さんまで。どうして?」
「お嬢さん。会社の人のことはこの女性に任せて、今からお茶でもしませんか?いえ、私は決して怪しいものじゃあありませんよ」
「私もご一緒してもいいかしら?」
疑問が頭に飛び交っているが、どうやら二人は私のために行動してくれているようだ。とはいえ、いきなり女性(男装姿)にお茶に誘われて応じるとは思えない。なぜか河合さんはそれに便乗しようとしている。
「でも、彼の無事な姿を一目見ないと、心配でここから離れられ」
『ご心配なく』
そういえば、河合さんと千沙さんは今日が初対面ではないだろうか。それなのにどうしてこうも息の合った行動をとっているのか。今も、見事なハモリを見せて女性や私を困惑させていた。
「そもそも、その会社の人ってさ、奥さんいるよね?しかも、その奥さん、目の前にいるけど、気づかないわけ?」
「そうそう、奥さんいるのに無事かどうか一目見たいなんて、意味わかんないよねえ」
『ねえ』
「あの、私は別に彼を寝取ろうなんて気は」
私が黙っているのをいいことに、彼女たちは女性に厳しい指摘をしている。事実なので特に反論することもないのだが、このまま傍観していてよいものだろうか。いや、このままでいいのかもしれない。エントランスの入り口からまた新たに、マンションの住人ではない女性が二人ほど入ってきた。
マンションの駐車場に車を停めて、車から出るとすっかり日が暮れてあたりは夕闇に包まれていた。日が暮れて一層冷えてきた気がする。コートの前をしっかりと閉めてマンションに向かって歩いていると、カバンの中のスマホが振動していることに気づく。
「大鷹家って、私の事を監視でもしているのだろうか」
思わずつぶやきたくなるほど、タイミングが良いのか悪いのか。スマホに表示された相手にため息が出る。
「もしもし、倉敷ですけど」
「いまだに旧姓はどうかと思うわよ。攻君が風邪を引いたみたいね。紗々さんは大丈夫?」
どこから情報が漏れたのだろうか。もしかして、きらりさんだろうか。もしそうだとしたら仕事が早すぎる。
「私は元気です。その、千沙さんに聞きたいんですけど、大鷹さんが寝こむと何がおこ」
「どうしたの?」
電話の相手は大鷹さんの叔母にあたる千沙さんだった。大鷹さんがお母さんと呼んでしまうほど、幼少期はお世話になったそうだ。彼女なら彼女たちの忠告の理由を教えてくれるだろう。しかし、口を開いた私の言葉は途中で止まってしまった。スマホ越しに千沙さんの声が聞こえるがそれどころではない。
「千沙さん、いったん電話切りますね。また後でかけなおします」
千沙さんが何か言っているのが聞こえたが無視して通話を終える。スマホをコートのポケットにしまってマンションのエントランス近くで立ち尽くす女性の間を通り抜けようとする。
「このマンションの住人ですか?」
私の存在に気づいた女性に声をかけられる。さっさと中に入らないのはマンションの住人ではないからだ。女性を見たときからうすうす気づいていた。だとすると、この女性はだれなのか。まるでアイドルの出待ちをしているかのような女性は、あっさりと私に正体を明かしてくれた。
「大鷹さんっていますよね?わたし、彼の職場の同僚なんです。彼、今日具合が悪くて早退したみたいで、看病をしに来たんですけどお」
私が返事をしないのをいいことに、女性がべらべらと遠慮なしに話し出す。私とは正反対の女性だった。髪は明るい茶髪でセミロングの髪を緩くカールさせている。胸元がやけに開いたフリルのブラウスにタイトスカートをはいていた。スカートの丈がやけに短いのが気になる。化粧もばっちりでまつげがバサバサでアイメイクも派手。唇は真っ赤に彩られていた。
ここで自分が「大鷹の妻は私である」とばらしてもいいだろうか。もし私がこの女性と張り合える容姿や服装をしていたら話は違ったかもしれないが、あいにく今の格好は大鷹さん目当ての女性を追い払うほどの効力はない。
ベージュのキルトコートに下はジーパン。中は紺のタートルネックに緑のカーディガンで色気のかけらもない。化粧も最低限で勝てる要素が見当たらない。
どうしたものか。このまま無視してマンションに入ってしまおうか。とりあえず無視してエントランスまで入ったが、案の定、女性は私の後ろにぴったりとくっついてきた。
「あの、私は部屋に戻るので、誰かと待ち合わせているのならその人に開けてもら」
「ヤッホー。さすがおおたかっちだねえ。この光景は懐かしさすら覚えるよ」
「おや、その話し方。攻君を知っている風な感じだね」
やはり、私は彼女たちに監視されているのだ。まあ、一人は毎日仕事で顔を合わせているので監視とは言わないが。
「きらりさん、それに河合さんまで。どうして?」
「お嬢さん。会社の人のことはこの女性に任せて、今からお茶でもしませんか?いえ、私は決して怪しいものじゃあありませんよ」
「私もご一緒してもいいかしら?」
疑問が頭に飛び交っているが、どうやら二人は私のために行動してくれているようだ。とはいえ、いきなり女性(男装姿)にお茶に誘われて応じるとは思えない。なぜか河合さんはそれに便乗しようとしている。
「でも、彼の無事な姿を一目見ないと、心配でここから離れられ」
『ご心配なく』
そういえば、河合さんと千沙さんは今日が初対面ではないだろうか。それなのにどうしてこうも息の合った行動をとっているのか。今も、見事なハモリを見せて女性や私を困惑させていた。
「そもそも、その会社の人ってさ、奥さんいるよね?しかも、その奥さん、目の前にいるけど、気づかないわけ?」
「そうそう、奥さんいるのに無事かどうか一目見たいなんて、意味わかんないよねえ」
『ねえ』
「あの、私は別に彼を寝取ろうなんて気は」
私が黙っているのをいいことに、彼女たちは女性に厳しい指摘をしている。事実なので特に反論することもないのだが、このまま傍観していてよいものだろうか。いや、このままでいいのかもしれない。エントランスの入り口からまた新たに、マンションの住人ではない女性が二人ほど入ってきた。
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