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番外編【看病イベント】2ここで会うのは珍しい
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「いったい、河合さんは私に何を忠告したかったのだろう」
午後の業務は特に面倒なお客さんにあたることなく平穏に終わった。定時に仕事を終えることが出来たので、急いで帰宅の準備をして銀行を出る。冬至も過ぎて、日は一時期よりも長くなっている。日が暮れる前に会社を出た私は、大鷹さんのために買い物をすることにした。
「あら、こんなところで会うなんて珍しい」
「こんばんは」
いつもの行きつけのスーパーに足を運ぶと、知り合いに遭遇した。大鷹さんの弟の奥さんの李江(りえ)さんだ。子供を連れていなかったので、保育園にでも預けているのだろうか。知り合いに会うことはめったにないので驚いていると、李江さんに笑われてしまう。
「なんだか久しぶりに会った気がするけど、お正月にあったばかりだったわね」
「そうですね」
李江さんとは昨年の冬にいろいろあったが、その問題は解決して私たちの関係は良好だと思う。とはいえ、いきなり会って話す話題は見つからない。会話のネタを必死に探していると、向こうから話題を振ってくれた。
「私に対してそこまで気を遣わなくていいのに。そのかごの中身を見る限り、お義兄さんの体調でも悪いの?」
どうしてこうも、自分の心情や周りの出来事を当てられてばかりなのか。慌ててかごの中身を確認する。かごの中にはスポーツドリンクにプリンなどのゼリー類、熱さましシート、栄養ドリンク瓶、冷凍うどん、おかゆのパックなどが入っていた。病人の看病グッズの定番がしっかり入ったかごに、自分でも苦笑してしまう。
この中身で当てられないほうがおかしい。私自身がこうして買い物に来ているということで、相手が体調不良だという推測は簡単にできてしまう。おまけに私がコミュ障で友達もろくにいないことは、大鷹家の親せきの皆さんには周知の事実だ。
「気をつけてくださいね。亨(きょう)から、お義兄さんのことは聞いたことがあります。風邪とかで寝込むと大変みたいですから」
「はあ」
本日二人目の忠告である。私の夫は体調不良だと何をやらかしてくれるのか。
「レジが空きましたね。では私はこれで」
スーパーのレジ前の邪魔にならないところで話していたが、李江さんの言葉でハッとする。こんなところで長居をしている場合ではなかった。私たちは空いたレジに向かって歩きだす。
大鷹さんはいったい、何をやらかしてくれるのだろうか。
「あらあら、こんなところで会うなんて珍しい」
「こんばんは」
なぜ、今日はこんなにも大鷹家の親せきに遭遇するのか。まったくもって謎であるが、会ってしまった以上、挨拶しないわけにもいかない。スーパーを出て駐車場まで歩いていたら声を掛けられた。
「今日も寒いねえ。こんな日は鍋とかしたいよねえ。ささ、さんも今日はうちで一緒に鍋食べる?」
相変わらず、きらりさんは男装していた。それがしっかりと似合っているからこのまま話していたら面倒なことになりそうだ。既に私たちの周りからびしびしと熱い視線を感じる。
「クシュンッ。すいません。二月に入りましたが、まだまだ寒いですね。今日は夕食を決めてしまっているので、残念ですがまたの機会に誘ってください」
暖かい日があるとはいえ、二月はまだまだ寒い日が多い。寒くてくしゃみが出た私は、さっさとその場を離れて家に帰ろうとした。
「別にいいじゃん。浮気っていうのなら、攻(おさむ)君も誘えばいいよ。ねえ、いいでしょ、大ちゃん!」
「他人の事情も考えろ」
「イテッ。いきなり殴らなくてもいいでしょ」
きらりさん一人で買い物をしていたのかと思ったら、後ろから大柄の男性が現れた。きらりさんの旦那さんだった。いきなり自分の奥さんを殴るのはどうかと思うけど、きらりさんも旦那さんも気にしていない。
「いつもすいません」
「いえいえ」
「浮気だあ!大ちゃんが私以外の人に浮気してる!」
急にきらりさんが幼児退行して、ぷりぷりと怒り出した。せっかくのカッコいい男装姿が台無しである。
「ところで、どうして断ったの?何か特別な理由でもあるの?」
「エエト」
ここで大鷹さんの体調不良を話しても良いものか。悩んでいたら、じいと二人に見つめられる。彼らは大鷹さんの親せきである。話したところで問題はない。
「実は……」
「アハハハハハハ!こりゃ大変だ。急いでこのことをみんなに知らせないと!」
私の話を聞き終えたきらりさんは、今度は急に大声で笑い始める。きらりさんの旦那さんは、難しそうな表情で片手をあごに当てていた。これはもしや。
『ご愁傷様』
これと同じ状況を今日は何度体験しただろうか。本当に大鷹さんは体調不良の時、何をやらかすのだろうか。
「こりゃあ、さ、さささんをこんなところで引き止めている場合じゃないね。ごめんね。私たちはこれで帰るよ」
きらりさんの切り替えは早かった。あっという間にその場から離れていった。旦那さんも私に会釈してそそくさといなくなった。残された私もこのまま外にいたら風邪を引いてしまうので、さっさと車に乗り込んで家を目指すことにした。
午後の業務は特に面倒なお客さんにあたることなく平穏に終わった。定時に仕事を終えることが出来たので、急いで帰宅の準備をして銀行を出る。冬至も過ぎて、日は一時期よりも長くなっている。日が暮れる前に会社を出た私は、大鷹さんのために買い物をすることにした。
「あら、こんなところで会うなんて珍しい」
「こんばんは」
いつもの行きつけのスーパーに足を運ぶと、知り合いに遭遇した。大鷹さんの弟の奥さんの李江(りえ)さんだ。子供を連れていなかったので、保育園にでも預けているのだろうか。知り合いに会うことはめったにないので驚いていると、李江さんに笑われてしまう。
「なんだか久しぶりに会った気がするけど、お正月にあったばかりだったわね」
「そうですね」
李江さんとは昨年の冬にいろいろあったが、その問題は解決して私たちの関係は良好だと思う。とはいえ、いきなり会って話す話題は見つからない。会話のネタを必死に探していると、向こうから話題を振ってくれた。
「私に対してそこまで気を遣わなくていいのに。そのかごの中身を見る限り、お義兄さんの体調でも悪いの?」
どうしてこうも、自分の心情や周りの出来事を当てられてばかりなのか。慌ててかごの中身を確認する。かごの中にはスポーツドリンクにプリンなどのゼリー類、熱さましシート、栄養ドリンク瓶、冷凍うどん、おかゆのパックなどが入っていた。病人の看病グッズの定番がしっかり入ったかごに、自分でも苦笑してしまう。
この中身で当てられないほうがおかしい。私自身がこうして買い物に来ているということで、相手が体調不良だという推測は簡単にできてしまう。おまけに私がコミュ障で友達もろくにいないことは、大鷹家の親せきの皆さんには周知の事実だ。
「気をつけてくださいね。亨(きょう)から、お義兄さんのことは聞いたことがあります。風邪とかで寝込むと大変みたいですから」
「はあ」
本日二人目の忠告である。私の夫は体調不良だと何をやらかしてくれるのか。
「レジが空きましたね。では私はこれで」
スーパーのレジ前の邪魔にならないところで話していたが、李江さんの言葉でハッとする。こんなところで長居をしている場合ではなかった。私たちは空いたレジに向かって歩きだす。
大鷹さんはいったい、何をやらかしてくれるのだろうか。
「あらあら、こんなところで会うなんて珍しい」
「こんばんは」
なぜ、今日はこんなにも大鷹家の親せきに遭遇するのか。まったくもって謎であるが、会ってしまった以上、挨拶しないわけにもいかない。スーパーを出て駐車場まで歩いていたら声を掛けられた。
「今日も寒いねえ。こんな日は鍋とかしたいよねえ。ささ、さんも今日はうちで一緒に鍋食べる?」
相変わらず、きらりさんは男装していた。それがしっかりと似合っているからこのまま話していたら面倒なことになりそうだ。既に私たちの周りからびしびしと熱い視線を感じる。
「クシュンッ。すいません。二月に入りましたが、まだまだ寒いですね。今日は夕食を決めてしまっているので、残念ですがまたの機会に誘ってください」
暖かい日があるとはいえ、二月はまだまだ寒い日が多い。寒くてくしゃみが出た私は、さっさとその場を離れて家に帰ろうとした。
「別にいいじゃん。浮気っていうのなら、攻(おさむ)君も誘えばいいよ。ねえ、いいでしょ、大ちゃん!」
「他人の事情も考えろ」
「イテッ。いきなり殴らなくてもいいでしょ」
きらりさん一人で買い物をしていたのかと思ったら、後ろから大柄の男性が現れた。きらりさんの旦那さんだった。いきなり自分の奥さんを殴るのはどうかと思うけど、きらりさんも旦那さんも気にしていない。
「いつもすいません」
「いえいえ」
「浮気だあ!大ちゃんが私以外の人に浮気してる!」
急にきらりさんが幼児退行して、ぷりぷりと怒り出した。せっかくのカッコいい男装姿が台無しである。
「ところで、どうして断ったの?何か特別な理由でもあるの?」
「エエト」
ここで大鷹さんの体調不良を話しても良いものか。悩んでいたら、じいと二人に見つめられる。彼らは大鷹さんの親せきである。話したところで問題はない。
「実は……」
「アハハハハハハ!こりゃ大変だ。急いでこのことをみんなに知らせないと!」
私の話を聞き終えたきらりさんは、今度は急に大声で笑い始める。きらりさんの旦那さんは、難しそうな表情で片手をあごに当てていた。これはもしや。
『ご愁傷様』
これと同じ状況を今日は何度体験しただろうか。本当に大鷹さんは体調不良の時、何をやらかすのだろうか。
「こりゃあ、さ、さささんをこんなところで引き止めている場合じゃないね。ごめんね。私たちはこれで帰るよ」
きらりさんの切り替えは早かった。あっという間にその場から離れていった。旦那さんも私に会釈してそそくさといなくなった。残された私もこのまま外にいたら風邪を引いてしまうので、さっさと車に乗り込んで家を目指すことにした。
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