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番外編【看病イベント】7河合視点①
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私の名前は河合江子(かわいえこ)。最近、転職をしたうら若き20代の女性である。今の職場には一人、変わった先輩が働いている。
ちなみにその彼女がまさかの、私の元カレと結婚していた。まさか、元カレが結婚していたとは。イケメンで異性からモテすぎていて、若干の女性嫌いになっていた彼がと驚いたが、その相手が職場の先輩、ということが私に更なる衝撃を与えた。
別に彼に未練があるという訳ではない。付き合っていたのは大学時代の話で、お互い未練なく別れられたと思っている。まあ、相手はまったく私のことが眼中に入らないくらい、先輩に夢中だった。
「もしかして、紗々先輩の最愛の旦那、おおたかっちに何かありました?」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
「だって、すごい不安そうな顔をしていましたよ。紗々先輩をそんな顔にさせるのって、一人しかいませんよね?」
「……。黙秘します」
二月のはじめ、元カレが体調を崩した。元カレだと未練がましいので先輩の旦那、とこれからは呼んでいこう。先輩が昼休みに真剣にスマホを確認して何やら文字を入力しているように見えたので、カマをかけてみたら図星だった。先輩は表情が顔に出やすいのでからかいがあって面白い。確かに周りから見たら、無表情に見えがちだろうが、先輩をよく見ていたらそんなわけはないのがよくわかる。
先輩の旦那は異性からかなりモテる。そんなわけで、彼が体調を崩すと、ある厄介なことが起こってしまう。先輩は私の言葉に首をかしげていたので、まだそういった状況に陥ったことがないのだろう。
「そうそう、黙秘は構いませんが、気を付けたほうがいいですよ。おおたかっちが調子悪くなると厄介ですから」
「厄介?」
とりあえず忠告と、彼の起こす厄介ごとを話そうと思っていたら、昼休憩が終わってしまった。まったく、タイミングが悪いことこの上ない。さすがに他の職員に先輩の旦那のことを話すわけにはいかない。あとで連絡することを伝えて私は午後の業務に戻った。
仕事中にスマホをいじるわけにはいかない。そもそも、スマホは基本的に更衣室のロッカーにしまいこんでいるため、使えるのは昼休憩と退勤後になってしまう。定時になると、先輩はすぐに退勤して仕事場を出ていった。旦那が心配なのだろう。旦那思いの妻を持った元カレは幸せ者だ。
「この調子だと、スマホにメッセージを入れるより、直接家に行ったほうが早い、か」
予定変更だ。とはいえ、先輩は定時に上がっていたが、私は面倒なお客にあたり少し残業しなくてはならない。終わり次第、先輩の家に直行しよう。
先輩の家は前におとずれたことがあるので知っている。なんとか無事に仕事を終えた私は急いで先輩の家に向かう。途中で何かお見舞いの品でも買っていこうかと考えたが、そんなことをしている暇に奴らがやってきていたらと思うと、気が気ではない。そのため、先輩には悪いが、何も持たずに車を走らせた。
先輩のマンション近くのコインパーキングに車を停めてマンションに向かって歩いていると、既に招かれざる客がエントランス前で待ち伏せしていた。あれはどう考えても先輩の旦那の待ち伏せで間違いない。
「ああ、少し遅かったか」
先輩は買い物にでも寄っていたのか、両手に大きな荷物を抱えていた。待ち伏せていた女生と先輩が話を始めた。このまま観察を続けてもいいが、そうなると私がここまで足を運んだ意味がない。
「ヤッホー。さすがおおたかっちだねえ。この光景は懐かしさすら覚えるよ」
「おや、その話し方。攻君を知っている風な感じだね」
声を掛けようと先輩たちに近付いて声をかけると、その声は別の女性の声とかぶってしまった。隣を見ると、いつからいたのか妙にカッコいい女性が立っていた。男性物の服を着ているが、私の目はごまかせない。彼女は女性である。しかし、元カレのことを名前で呼ぶとはいったい、どこのどなただろうか。もし、先輩と元カレの仲を引き裂くような相手だったら。
そんな心配は杞憂に終わった。その女性はどうやら先輩の味方のようだった。待ち伏せ女性(またの名をストーカー)をお茶に誘って先輩から引き離そうとしていた。さすが元カレ、一人だけではなく、新たに二人のストーカーを引き寄せた。彼女達を半ば強引にその女性はお茶に誘って連行していく。
本来なら、その役目は私のはずだったのだ。それを奪うのはいただけない。そのため、私も彼女に便乗して、一緒に彼女達と楽しいお茶会のご同伴に預かることにした。
ちなみにその彼女がまさかの、私の元カレと結婚していた。まさか、元カレが結婚していたとは。イケメンで異性からモテすぎていて、若干の女性嫌いになっていた彼がと驚いたが、その相手が職場の先輩、ということが私に更なる衝撃を与えた。
別に彼に未練があるという訳ではない。付き合っていたのは大学時代の話で、お互い未練なく別れられたと思っている。まあ、相手はまったく私のことが眼中に入らないくらい、先輩に夢中だった。
「もしかして、紗々先輩の最愛の旦那、おおたかっちに何かありました?」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
「だって、すごい不安そうな顔をしていましたよ。紗々先輩をそんな顔にさせるのって、一人しかいませんよね?」
「……。黙秘します」
二月のはじめ、元カレが体調を崩した。元カレだと未練がましいので先輩の旦那、とこれからは呼んでいこう。先輩が昼休みに真剣にスマホを確認して何やら文字を入力しているように見えたので、カマをかけてみたら図星だった。先輩は表情が顔に出やすいのでからかいがあって面白い。確かに周りから見たら、無表情に見えがちだろうが、先輩をよく見ていたらそんなわけはないのがよくわかる。
先輩の旦那は異性からかなりモテる。そんなわけで、彼が体調を崩すと、ある厄介なことが起こってしまう。先輩は私の言葉に首をかしげていたので、まだそういった状況に陥ったことがないのだろう。
「そうそう、黙秘は構いませんが、気を付けたほうがいいですよ。おおたかっちが調子悪くなると厄介ですから」
「厄介?」
とりあえず忠告と、彼の起こす厄介ごとを話そうと思っていたら、昼休憩が終わってしまった。まったく、タイミングが悪いことこの上ない。さすがに他の職員に先輩の旦那のことを話すわけにはいかない。あとで連絡することを伝えて私は午後の業務に戻った。
仕事中にスマホをいじるわけにはいかない。そもそも、スマホは基本的に更衣室のロッカーにしまいこんでいるため、使えるのは昼休憩と退勤後になってしまう。定時になると、先輩はすぐに退勤して仕事場を出ていった。旦那が心配なのだろう。旦那思いの妻を持った元カレは幸せ者だ。
「この調子だと、スマホにメッセージを入れるより、直接家に行ったほうが早い、か」
予定変更だ。とはいえ、先輩は定時に上がっていたが、私は面倒なお客にあたり少し残業しなくてはならない。終わり次第、先輩の家に直行しよう。
先輩の家は前におとずれたことがあるので知っている。なんとか無事に仕事を終えた私は急いで先輩の家に向かう。途中で何かお見舞いの品でも買っていこうかと考えたが、そんなことをしている暇に奴らがやってきていたらと思うと、気が気ではない。そのため、先輩には悪いが、何も持たずに車を走らせた。
先輩のマンション近くのコインパーキングに車を停めてマンションに向かって歩いていると、既に招かれざる客がエントランス前で待ち伏せしていた。あれはどう考えても先輩の旦那の待ち伏せで間違いない。
「ああ、少し遅かったか」
先輩は買い物にでも寄っていたのか、両手に大きな荷物を抱えていた。待ち伏せていた女生と先輩が話を始めた。このまま観察を続けてもいいが、そうなると私がここまで足を運んだ意味がない。
「ヤッホー。さすがおおたかっちだねえ。この光景は懐かしさすら覚えるよ」
「おや、その話し方。攻君を知っている風な感じだね」
声を掛けようと先輩たちに近付いて声をかけると、その声は別の女性の声とかぶってしまった。隣を見ると、いつからいたのか妙にカッコいい女性が立っていた。男性物の服を着ているが、私の目はごまかせない。彼女は女性である。しかし、元カレのことを名前で呼ぶとはいったい、どこのどなただろうか。もし、先輩と元カレの仲を引き裂くような相手だったら。
そんな心配は杞憂に終わった。その女性はどうやら先輩の味方のようだった。待ち伏せ女性(またの名をストーカー)をお茶に誘って先輩から引き離そうとしていた。さすが元カレ、一人だけではなく、新たに二人のストーカーを引き寄せた。彼女達を半ば強引にその女性はお茶に誘って連行していく。
本来なら、その役目は私のはずだったのだ。それを奪うのはいただけない。そのため、私も彼女に便乗して、一緒に彼女達と楽しいお茶会のご同伴に預かることにした。
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