結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【波乱の新年の幕開け】8食事会

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「いってきます。今日は河合さんと当間と食事をしてくるので、帰りは遅くなります」

「ワカリマシタ。気をつけて言ってきてください。帰る時間がわかったら連絡ください。いってらっしゃい」

「いや、車で行くし、お酒を飲む予定はないから、迎えはいらないですよ。時間を連絡するほどでも」

「……」

「ハイ」

 金曜日の朝、家を出るときに今日の予定を伝えたら、大鷹さんに妙な圧をかけられた。別にあの二人と一緒にご飯を食べたところで、不埒なことが起こる可能性は皆無だ。相変わらず、心配性な夫である。仕方ないので、帰る時間を連絡することを約束して、私は出勤の為に家を出た。


「おはようございます、先輩」

「河合さん、オハヨウゴザイマス」

朝、出社して更衣室で着替えをしていると、河合さんがやってきた。たまたま更衣室には私と河合さん以外に人はいなかった。お互いに挨拶をして着替えに取りかかる。周りに誰もいないことを確認して、河合さんは小声で私に話し掛けてきた。

「今日の食事会、楽しみですね。ていうか、先輩、今日はなんだか元気ないですね。もしかして、当間さんと一緒に食事をするのが楽しみ過ぎて、夜眠れなかったんですか?」

 河合さんが余計なことをするからですよ。

 口から出そうになった言葉を慌てて飲み込む。河合さんにそんなことを言っても、意味はない。彼女は自分のやりたいことをやりたいようにやるだけだ。とりあえず、食事会が楽しみだという訳の分からない理由だけは否定しておく。

「別に体調が悪いとかではないのでご安心を。そもそも、楽しみ過ぎて夜眠れないとか、小学生の遠足とかじゃあるまいし、ありえないです」

「そういうもんですかね」

「おはようございます。何を話していたんですか」

「いえ、特には。今日が金曜日で明日休みだから、今日一日頑張ろうと話していたんです」

 ここで河合さんとの会話は中断された。更衣室に安藤さんや平野さんなどのほかの社員が着替えにやってきたからだ。私は慌てて着替えを済ませて、更衣室を出る。河合さんも会釈して私についてきた。


 私たちは定時後、各自の車で店に向かった。店は河合さんおすすめのイタリアンのレストランで、車で10分ほどの場所にあった。三人で一緒に会社をでるところを見られるのは嫌だという私の希望が通り、現地集合となった。些細なことだが、私の希望が通ったのは少しだけうれしかった。

「ここのパスタは生パスタを使用していて、もっちりしていて、人気なんです。ピザもカリカリの薄い生地がやみつきになりますよ!」

 私と河合さんはほぼ同時に店の駐車場に到着した。1月と言えば、まだまだ冬の寒さが厳しい季節だ。私たちは先に店に入ることにした。


 店内は人気という事だけあって、席はほぼ満席に近い状態だった。しかし予約をしていたので、私たちはすんなりと席に案内された。テーブル席に私と河合さんが隣同士で座る。当間は私たちの向かい側に座らせることにした。

「やっぱり、予約は大切ですね。当間さんは来ていないですけど、先に注文しますか?」

一日仕事を頑張ってきたので、お腹はとても減っている。このまま当間が来なかったら、二人だけの女子会になる。そっちの方が私としては嬉しいが、世の中そう甘くはなかった。

「そうですね。お腹もすいたので、先に」

「すいません。場所がわからなくて。遅くなりました」

 先に注文しようとメニュー表に手を伸ばしかけたところで、当間が私たちの元にやってきた。こうして、私たちの食事会が幕を開けた。


「当間さんの入社をお祝いして、乾杯!」

『乾杯!』

 三人とも車で来ているので、お酒は飲めないので代わりにドリンクバーを頼み、私たちはノンアルコールで乾杯をした。音頭を取っているのは当然、河合さんだ。

「それで、当間さんと先輩は幼馴染だって聞いたんですけど、実際、子どものころはどんな感じだったんですか?」

「僕と紗々ちゃんはね、家が隣同士だったんだ。と言っても、僕が小学生のころに引っ越してきたから、すごい長い付き合いってわけでもないんだ。高校も大学も違ったしね」

 河合さんおすすめのピザと生パスタを注文して、待っている間、河合さんが当間に質問する。それに対して、当間は馬鹿正直に答えている。私の個人情報でもあるのに、許可も得ずに話していてイラっと来たが、今日の目的を思い出す。当間のことを知りたい河合さんが開催した食事会なので、苛立ちは抑えるしかない。

 何か、こいつ(当間)の面白いネタ(弱み)でも握ってやらなくては気が済まない。そういうのを聞きだすのも河合さんは得意だ。とりあえず、私は黙って二人の会話に耳を傾けることにした。
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