結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【変人になりたい】2イメチェンする理由

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「さて、まずはネタを決めていかないと」

 とりあえず、パソコンの電源を入れた私だがここからが問題である。いくらやる気があろうとも、書く内容が思いつかなければなんともならない。やる気だけが空回りしてしまう。

「書き出すことで頭が整理される」

 よく言われることだ。脳内だけで考えるのには限界がある。紙などに自分の考えていることを書きだすと、脳内が整理されて考えもまとまるというものだ。小説を書いていなかった間も、スマホでしっかりと情報は頭に入れていた。

「インプット期間だと思えば、あのダラダラなスマホ時間も有意義なものといえよう」

 何事も、ポジティブに考えることが大切だ。過ぎた時間が戻ることはないので、そう思うことにしよう。


【スマホで見ていた動画】
・不倫、離婚、浮気系
・料理系(オムライス)
・不動産
・メイク、ダイエット、イメチェン
・教育系
・メイド
・看護師
・保育士
・ボカロのMV、歌ってみた、歌手のライブ映像
・イラスト制作
・クイズ
・アニメの切り抜き(公式)

 箇条書きにしてみたが、こうして並べてみると、私は執筆していない期間をかなり有意義に過ごしていたのではないだろうか。もし、これらの知識が身についているのなら、どんな物語だって余裕で生み出せそうだ。

 一番上の不倫系については、SNSでよく見かけてつい読んでしまった。現在離婚を考えている人や離婚した人、不倫された人などリアルなものがたくさんあり、これは創作ではないか疑ってしまうほどの内容もあった。漫画などでは王道の展開であるが、現実世界でも似たようなことが起こっているかと思うと、世の中、まだまだ私の知らないことがあるのだと改めて実感させられた。

 ネタとしては書きやすいが、その系統のジャンルは漫画も小説もドラマも映画も多数存在する。商業化されている作品の数が圧倒的に多い。ライバルたちを抜いて読まれるほどの文才があるかと言えば、なかなか厳しい。

 とはいえ、書けば一定数の読者がつくと思うので書いてみるに越したことはない。

 ほかのものについては、専門で動画をあげている人が多いということで、私も何か得意分野を作ってそれを主にして小説を執筆したら、もっと読者が増えそうだ。私の得意分野……。これは追々考えていこう。

 書きだしたものを一つ一つ吟味していくのも、それはそれで面白そうだが、時間がかかり過ぎる。今まで書いたものだとメイク、ダイエット、イメチェン辺りは私も良く小説のネタとして使用している。容姿が変わるというのはネタになる。

「でも、これもまた、王道展開だからなあ」

 だがしかし、面白いから人気で王道なのだ。イメチェンについては、最近、精神的に参っているときの自分の体験が生きてくる気がする。

「見た目が華やぐと気分が上がるしなあ」


「トントン」

 独り言を呟いたタイミングで扉をノックする音がした。大鷹さんに決まっているが、毎回律儀にノックしてくれるところはありがたい。

「どうぞ」

 ガチャリと入ってきた大鷹さんは、何やら深刻そうな顔をしていた。手にはスマホをもっている。常に大鷹さんに対して何かしらのやらかしに心当たりがある私は、深刻そうな表情の大鷹さんを見ると、不安になってしまう。

 いったい、私は今回、何をやらかしたのか。

「紗々さん、もしかして忙しいのは嘘で、ふ、不倫とかしていませんよね?」

「?」

「ちょうど、広告で不倫系の漫画を読んでいたのですが、急にオシャレに目覚め始めたのはおかしい、みたいな感じで。ああ、これって紗々さんにも当てはまるなと思って」

「あまりにもベタ過ぎません?それ、本気で言ってます?」

 何を言い出すのかと思ったら、そんなことか。心配するだけ無駄だった。

「いや、紗々さんに限って不倫とかないと思いますけど、じゃあいったい、急にオシャレに目覚めたのはなんでだろうって」

「ふむ」

 そこまで急にオシャレに目覚めたわけではない。ただ単に少しイメチェンをしたいなと思ったのと、きれいにした方が気分も上がるかなと思っただけだ。

「髪色に関しては、たまには冒険したいなと思って明るい色に挑戦しただけですし、爪に関しては、冬場に乾燥で二枚爪になって、みっともないのと保湿の為にネイルをしているだけです。服に関しては、広告でワンピースが流れてきて、これなら一枚で着れるし、丈もそこまで短くないから着てみようかとおも」 

 ちなみに、髪色は職場のこともあるので金髪とかそこまで明るい髪色ではない。ピンク系の明るい茶色。爪だって薄いピンクのナチュラルな色合いのものだ。ワンピースだって、普段使いできそうなシャツワンピースで、世間一般からしたら大したことではない。

 理由を聞かれたから、つい長々と説明してしまった。チラリと大鷹さんを見ると、ふむふむと首を縦にして頷き、納得してくれたようだ。

 派手な外見にする人の理由がわからなかったが、少し明るい色を取り入れただけで気分が上がったので、きっと彼らは自分のテンションをあげるためにやっているのだろう。新たな発見だった。

「なるほど……。あれ、じゃあ、僕のためっていうのはないんですか?」

「いや、それを自分で言います?これだからモテる男は……」

 私の言葉に納得した大鷹さんが次に口にしたのは、普通の人からしたらだいぶ痛い質問だった。

「別にいいじゃないですか?僕たち夫婦ですよ。これくらい普通だと思いますけど」

 どうやら、大鷹さんの脳内はバグを起こしているようだ。しかし、イメチェンというのはやはり面白い。前にも書いた気がするのだが、今回もリハビリがてら、このネタでいってみよう。

「ありがとうございます」

「ええと、その顔を見る限り、何か良いアイデアを思い付いたみたいですね。投稿、楽しみにしていますね。『紗々の葉先生』」

「その先生って呼び方辞めてもらえます。あと、ペンネームを口にするのも」

「いいじゃないですか。僕は先生の『一番』のファンですから!」

 一番のところが妙に強調された言い方が気になったが、一番であることには変わりないので気にしないことにした。
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