結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【新年の目標】3私の恋人は(梨々花視点)

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 私の名前は梨々花(りりか)。銀行で窓口業務をしている。1年前から、私は10歳ほど年上の男性とお付き合いしている。彼は私のことをとてもかわいがってくれる。

 もともと、私は二次元でいうあざと可愛い系の女性に似ているとよく言われる。身長は150cmの小柄で目はぱっちり二重の色白。化粧をすると、あっという間に男子から可愛がられやすい容姿の完成だ。だからこそ、私の容姿とあざといブリッこな性格(嘘の性格)に騙されて、男性からはちやほやされることが多かった。

 そうなると、必然的に女性からは嫌われがちになる。しかし、私としては男にちやほやされるのは気分がよいので、女性から嫌われていても気にすることはなかった。


「1月から入社した営業の当間爽太(とうまそうた)君だ。当間君、みんなに挨拶を」

「1月からこちらで働くことになった当間と申します。精一杯仕事に取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いします」

 仕事中、私は恋人との出会いを思い出していた。当間爽太。彼は昨年の1月に中途採用で私の会社にやってきた。180cm超えの高身長で糸目のひょろっと細長い感じの彼は、私の好みではなかった。しかし、朝礼の時に自己紹介している彼が見ている視線の先にいた存在を見て、急激に彼に興味が湧いた。

 視線の先にいたのは、倉敷という地味な女性だった。私より10歳ほど年上で、私とは正反対の男性からはモテそうにない、私からしたら可哀想な部類の女性だった。どうして、出社初日で、そんな地味な女性を見つめているのか。

 考えられることは二つ。

① 漫画みたいな展開で、彼女が知り合いだった
② 彼の女性のタイプだった

すぐに②の可能性を消去する。地味な女性が好みという男性もいるが、それは直感的に違う気がした。そうなると、彼と彼女がどういう関係なのか。


「佐藤梨々花(さとうりりか)です。これから、よろしくお願いしますね。当間さんより年下ですけど、会社には長くいるので、わからないことがあったら、どんどん聞いてください!わかる範囲でお答えします」

 気になることがあれば、すぐに聞いてみる。彼が自己紹介を終えて、上司などから仕事の説明もあらかた聞き終えたタイミングでコッソリと彼に近付く。

 私の身長は150cmで、立っている彼と話すためには上を見上げなくてはならない。必然的に上目遣いになるのだが、これが結構、男性には好ポイントらしい。例外に漏れず、彼もまた、私を見下ろす視線にはさっそく、好意が見て取れた。

「ありがとう、佐藤さんだっけ。僕は営業だけど、その言葉、とてもうれしいよ」

「佐藤はたくさんいるので、皆さん、梨々花って呼んでいます。当間さんも梨々花って呼んでくれれば大丈夫です」

 佐藤という苗字は平凡すぎて嫌いだったが、下の名前で呼んで欲しいと頼むことができる。名前で呼ばれたいですと気軽に言える。男性は苗字ではなく名前で私を呼ぶことで、一気に私たちの距離が縮まったように感じるらしい。大抵の場合、これだけで男性は私に好意を持つのだから、単純な生き物だ。だから、今は佐藤という苗字は嫌いだが感謝している。

「みんなが呼んでいるのなら、僕も梨々花さんって呼ぼうかな」

「そうしてください。それで、当間さんにひとつ、お聞きしたいことがあるんですけど……」

「僕に答えられるものであればなんでもどうぞ」

 名前呼びで親しみやすさを演出する。そうすると、相手の懐は緩むので、大抵のことは話してくれるようになる。初対面の相手にいきなりする質問ではないが、さっそく朝礼の時のことを質問する。

「朝礼の時、倉敷さんのことを見つめていましたよね?彼女と知り合いなんですか?」

「エエト……」

 やはり、彼と彼女の間には何かしらの関係があるようだ。私の質問に当間さんは困惑した様子を見せる。目がきょろきょろと動いて挙動不審だ。

「そんなに僕、わかりやすく彼女を見ていたかな?」

「さあ、私は気づきましたけど、他の人が気づいたかどうかはわかりません」

 おそらく、見つめられていた本人、倉敷さんは気づいていないだろう。地味なうえに鈍感だと聞いている。しかし、彼女にまとわりついている河合さんあたりは気づいているかもしれない。

「梨々花さんには言うけど、実は彼女は……」

 僕の幼馴染なんだ。

 照れながらつぶやいた言葉になるほどと納得する。そうなると、今後、彼が取る行動として考えられるのは。

幼馴染との運命の再会からの猛アタック。

 なんともチープな展開だ。漫画の読みすぎなのかもしれないが、そのような展開になったところで何も面白くない。そもそも、あんな地味な女性に猛アタックするのは変人だけだ。目の前の男がそこまで変人とは思えない。

「幼馴染と同じ会社に転職なんて、すごい偶然ですね」

 とはいえ、彼女は既婚者だ。彼が猛アタックしたところでどうにもならない。どうにかなるとしたら、泥沼的展開になること間違いなし。しかし、そんな地味女性を巡って二人の男性が争うところなど見たくない。

「でも、倉敷さんは」

 そんな展開にならないように、先に彼に事実を教えようと口を開いたが、途中で考えを改める。これは、本人から直接聞かされた方がいいのかもしれない。それに、他人が勝手に話したとなれば、相手も気分がよくないだろう。私だって、空気が読める社会人だ。

「どうしたの?紗々ちゃんがどうかした?」

 紗々ちゃん。

 まさかの大のおとなをちゃん付で呼ぶとは。これはもう、猛アタックの可能性が見えてきた。変人ではないが、偶然の再会というシチュエーションに酔っているのだろう。

「仲が良かったんですね。でも、仕事とプライベートはしっかり分けてくださいね」

「そ、そうだね」

 倉敷さんにはイケメンの旦那がいるという噂だが、実際に見たことはない。あんな地味女性が言うイケメンだ。たかが知れているだろう。

「なんだか燃えてきた」

 寝取るという言葉は好きではないが、今回は別に寝取るわけではない。他人への好意を自分に向けさせるだけだ。

「じゃあ、私は仕事に戻ります。お互い、お仕事頑張りましょうね」

 こうして、私は彼を堕とすことを始めた。そして、私と彼の仲が進展するのはあっという間だった。


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