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「これからどうしますか」
「タクシーでも呼べばいいでしょ。耳と尻尾はパーカーで隠せるし」
店を出た私たちは、家に帰るためのタクシーを呼ぶことにした。ジャスミンが気を利かせ、タクシー会社に電話している間に、九尾たちの様子をじっくり観察する。
「九尾たちは、人間ではないのに、お酒に酔うなんてことがあるのでしょうか?」
九尾たちは、私たちに引きずられるように店を出たが、様子がどうもおかしかった。調子よく酒を飲んでいたのが嘘のように、今はぐっすりと眠っていた。三人とも、気持ちよさそうに寝ているところを見ると、ただ疲れて寝ているように見えるが、彼らは人間ではないのだ。本来なら、食事も睡眠もいらない身体である。
「蒼紗、タクシーが来たわよ!」
考えているうちに、ジャスミンが呼んだタクシーが私たちの目の前に停車する。急いでタクシーに乗り込こもうとしたが、この場にいる全員を乗せることができないことに気が付く。私とジャスミン、九尾たち全員を乗せることはできない。6人もの人間を1台のタクシーでは無理だろう。いや、今回はやむを得ないので、無理やり乗せてもらうことにしよう。
「蒼紗、タクシーは2台用意したから、能力は使わなくていいわよ」
私がタクシー運転手に能力を発動させようとしたのがばれたのか、ジャスミンにとめられた。周囲を見渡すと、彼女の言う通り、もう1台、タクシーが私たちの近くに停まっていた。
「ジャスミンにしては気が利きますね」
「いや、その言い方はほめているのかしら」
「ほめています。とりあえず、私とジャスミンは別々に乗り込みましょう。ああ、でも、ジャスミンは家に帰りますよね。どうしたら」
ジャスミンも家に帰りたいはずなのに、私の家まで同行させてしまうのはかわいそうだ。やはり、ここは能力を使って、1台に無理やり乗り込んで帰った方がいいだろうか。
「何を考えているのか、想像ができるけど、今更だからね。さっき、タクシーを呼んだ後に、親に連絡を入れといたから、大丈夫よ。蒼紗の家に泊まると伝えたら、了解してくれた」
先ほどまでうろこを出して酔っぱらっていたとは思えない行動ぶりに驚いたが、ジャスミンの申し出はありがたく受けることにした。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、九尾たちを私の家までお願いします」
「ワカリマシタ」
タクシーに乗り込む際に、ふと夜空を見上げると、雲が広がっていて、星一つ見えない、真っ暗な空が広がっていた。ひゅうっと、春とはいえど、冷たい風が吹いていた。
私は七尾と翼君をタクシーに押し込んだ。ううんとうなり声をあげて一瞬目を開けた二人だが、寝ぼけていたのか、タクシーに乗り込むと、また目を閉じて寝てしまった。もう一台には、九尾と狼貴君、ジャスミンが乗り込んだ。
タクシーに家の住所を告げると、ようやくタクシーが動き出す。そこでようやく私はほっとすることができた。サークルの飲み会というものに、今回初めて参加した。一度目の大学生活では、パッとしない生活を送っていたため、サークルには所属せず、大学と自宅、バイト先の往復しかしていなかった気がする。
「初めての飲み会でしたが、とんだ災難でした」
いまだに眠っている九尾たちをしり目に私も眠気に襲われたが、何とか家に着くまで頬をつねったり、足を動かしたりして、耐えたのだった。
「ただいま」
「お邪魔します」
家にたどりつき、鍵を開けて、家の中に入る。当然、誰もいない家だが、つい習慣で帰宅の挨拶をしてしまう。それに倣い、ジャスミンも挨拶する。
「まさか、飲み物に眠り薬が仕込まれているとは思わなかった。その上、薬には人外を強制的に酩酊させる作用も含まれていたな」
「九尾、お前ともあろうものが見抜けないとは、落ちたものだな」
「おぬしも一緒に飲んでいたくせに、よく言う」
「蒼紗さん、すいません。僕たちがついていながら、飲み会を台無しにしてしまって」
「すまない」
一度、リビングに全員上がり、飲み会の状況を私が説明すると、彼らは注文した飲み物に人外に効果がある薬が仕込まれていたと証言した。
「薬、ですか?しかも、人外の存在にしか効果のない、特殊な薬……」
九尾の言葉に驚いたが、そうなると、私たちが飲み会に参加することを知った誰かの仕業ということが考えられる。
しかし、いったい、誰が何の目的で九尾たちに飲ませたのだろうか。いや、そもそもどこからそんな薬を入手したのかも気になるところだ。
「飲み物の中に薬が仕込まれていたから、酒を飲んでいない、私やそこの少年たちにも効いたわけね。でも、蒼紗が大丈夫だったのはなぜ?」
「それは、こやつの特異体質のせいかもしれんが、よくわからんな。とりあえず、その薬とやらを仕込んだ奴と、その仕入先、目的を調べる必要があるな」
「僕たちも手伝います」
「オレも協力する」
新歓コンパに参加しただけなのに、大変なことになってしまった。人外にしか作用しない薬が出てきたとあれば、今後、九尾たちがまたこのような目にあうとも限らない。それに、人間であるジャスミンにも効果があったということは、能力者にも効果があるともいえる。被害は拡大する可能性がある。
「ふああああ」
いろいろ考えなければならないことがあったが、眠気には勝てず、ついあくびが出てしまった。
「今日はもう遅い。この話はまた明日以降、考えることにしよう」
「そうね。夜更かしはお肌の大敵だもの」
今夜はもう寝ることにした。話を終えた私たちは、飲み会で汚れた身体をシャワーで洗い流した。ジャスミンには私の服を貸した。七尾も泊まっていくらしいので、彼には九尾の服を貸すことにした。
「また、蒼紗の家に泊まれて、ある意味、今日はラッキーだったわ」
「そうですかね。ジャスミンには今日もお世話になりました。迷惑ばかりかけてすみません」
「蒼紗が気にすることはないわ。さっさと犯人を捕まえて、懲らしめてやればいいんだから」
「ふふ、ジャスミンが言うと、少し気が楽になります。なんだか今日は疲れました。おやすみなさい」
「疲れたのは確かね。おやすみ、蒼紗」
私とジャスミンは私の部屋で、九尾たちは自分の部屋で、七尾も一緒に寝るらしい。
新歓コンパの騒動が、私たちの日常をこれからさらに大変なことにするとは知らず、私たちは眠りについた。
「タクシーでも呼べばいいでしょ。耳と尻尾はパーカーで隠せるし」
店を出た私たちは、家に帰るためのタクシーを呼ぶことにした。ジャスミンが気を利かせ、タクシー会社に電話している間に、九尾たちの様子をじっくり観察する。
「九尾たちは、人間ではないのに、お酒に酔うなんてことがあるのでしょうか?」
九尾たちは、私たちに引きずられるように店を出たが、様子がどうもおかしかった。調子よく酒を飲んでいたのが嘘のように、今はぐっすりと眠っていた。三人とも、気持ちよさそうに寝ているところを見ると、ただ疲れて寝ているように見えるが、彼らは人間ではないのだ。本来なら、食事も睡眠もいらない身体である。
「蒼紗、タクシーが来たわよ!」
考えているうちに、ジャスミンが呼んだタクシーが私たちの目の前に停車する。急いでタクシーに乗り込こもうとしたが、この場にいる全員を乗せることができないことに気が付く。私とジャスミン、九尾たち全員を乗せることはできない。6人もの人間を1台のタクシーでは無理だろう。いや、今回はやむを得ないので、無理やり乗せてもらうことにしよう。
「蒼紗、タクシーは2台用意したから、能力は使わなくていいわよ」
私がタクシー運転手に能力を発動させようとしたのがばれたのか、ジャスミンにとめられた。周囲を見渡すと、彼女の言う通り、もう1台、タクシーが私たちの近くに停まっていた。
「ジャスミンにしては気が利きますね」
「いや、その言い方はほめているのかしら」
「ほめています。とりあえず、私とジャスミンは別々に乗り込みましょう。ああ、でも、ジャスミンは家に帰りますよね。どうしたら」
ジャスミンも家に帰りたいはずなのに、私の家まで同行させてしまうのはかわいそうだ。やはり、ここは能力を使って、1台に無理やり乗り込んで帰った方がいいだろうか。
「何を考えているのか、想像ができるけど、今更だからね。さっき、タクシーを呼んだ後に、親に連絡を入れといたから、大丈夫よ。蒼紗の家に泊まると伝えたら、了解してくれた」
先ほどまでうろこを出して酔っぱらっていたとは思えない行動ぶりに驚いたが、ジャスミンの申し出はありがたく受けることにした。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、九尾たちを私の家までお願いします」
「ワカリマシタ」
タクシーに乗り込む際に、ふと夜空を見上げると、雲が広がっていて、星一つ見えない、真っ暗な空が広がっていた。ひゅうっと、春とはいえど、冷たい風が吹いていた。
私は七尾と翼君をタクシーに押し込んだ。ううんとうなり声をあげて一瞬目を開けた二人だが、寝ぼけていたのか、タクシーに乗り込むと、また目を閉じて寝てしまった。もう一台には、九尾と狼貴君、ジャスミンが乗り込んだ。
タクシーに家の住所を告げると、ようやくタクシーが動き出す。そこでようやく私はほっとすることができた。サークルの飲み会というものに、今回初めて参加した。一度目の大学生活では、パッとしない生活を送っていたため、サークルには所属せず、大学と自宅、バイト先の往復しかしていなかった気がする。
「初めての飲み会でしたが、とんだ災難でした」
いまだに眠っている九尾たちをしり目に私も眠気に襲われたが、何とか家に着くまで頬をつねったり、足を動かしたりして、耐えたのだった。
「ただいま」
「お邪魔します」
家にたどりつき、鍵を開けて、家の中に入る。当然、誰もいない家だが、つい習慣で帰宅の挨拶をしてしまう。それに倣い、ジャスミンも挨拶する。
「まさか、飲み物に眠り薬が仕込まれているとは思わなかった。その上、薬には人外を強制的に酩酊させる作用も含まれていたな」
「九尾、お前ともあろうものが見抜けないとは、落ちたものだな」
「おぬしも一緒に飲んでいたくせに、よく言う」
「蒼紗さん、すいません。僕たちがついていながら、飲み会を台無しにしてしまって」
「すまない」
一度、リビングに全員上がり、飲み会の状況を私が説明すると、彼らは注文した飲み物に人外に効果がある薬が仕込まれていたと証言した。
「薬、ですか?しかも、人外の存在にしか効果のない、特殊な薬……」
九尾の言葉に驚いたが、そうなると、私たちが飲み会に参加することを知った誰かの仕業ということが考えられる。
しかし、いったい、誰が何の目的で九尾たちに飲ませたのだろうか。いや、そもそもどこからそんな薬を入手したのかも気になるところだ。
「飲み物の中に薬が仕込まれていたから、酒を飲んでいない、私やそこの少年たちにも効いたわけね。でも、蒼紗が大丈夫だったのはなぜ?」
「それは、こやつの特異体質のせいかもしれんが、よくわからんな。とりあえず、その薬とやらを仕込んだ奴と、その仕入先、目的を調べる必要があるな」
「僕たちも手伝います」
「オレも協力する」
新歓コンパに参加しただけなのに、大変なことになってしまった。人外にしか作用しない薬が出てきたとあれば、今後、九尾たちがまたこのような目にあうとも限らない。それに、人間であるジャスミンにも効果があったということは、能力者にも効果があるともいえる。被害は拡大する可能性がある。
「ふああああ」
いろいろ考えなければならないことがあったが、眠気には勝てず、ついあくびが出てしまった。
「今日はもう遅い。この話はまた明日以降、考えることにしよう」
「そうね。夜更かしはお肌の大敵だもの」
今夜はもう寝ることにした。話を終えた私たちは、飲み会で汚れた身体をシャワーで洗い流した。ジャスミンには私の服を貸した。七尾も泊まっていくらしいので、彼には九尾の服を貸すことにした。
「また、蒼紗の家に泊まれて、ある意味、今日はラッキーだったわ」
「そうですかね。ジャスミンには今日もお世話になりました。迷惑ばかりかけてすみません」
「蒼紗が気にすることはないわ。さっさと犯人を捕まえて、懲らしめてやればいいんだから」
「ふふ、ジャスミンが言うと、少し気が楽になります。なんだか今日は疲れました。おやすみなさい」
「疲れたのは確かね。おやすみ、蒼紗」
私とジャスミンは私の部屋で、九尾たちは自分の部屋で、七尾も一緒に寝るらしい。
新歓コンパの騒動が、私たちの日常をこれからさらに大変なことにするとは知らず、私たちは眠りについた。
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