4 / 59
1日常
3
しおりを挟む
入学式は退屈だった。校長が話をして、新入生代表が挨拶する。その後、上級生による校歌斉唱があったが、中学の時とほとんど変わらない内容だった。ただし、一年生代表で挨拶を行った生徒は印象に残った。
その生徒は隼瀬あきら(はやせあきら)と名前らしい。教室の廊下に貼られていたクラス表に名前が書かれていたのを思い出す。紫陽のクラスメイトが新入生代表の挨拶をしていた。
「この学校に入学できたことを誇りに思い、三年間しっかり勉学に取り組みます」
彼女の声は体育館に響き渡った。決して大声を出しているわけでもないのに、その声は良く通る澄み切った声だった。長い黒髪を一つにまとめ、スカートの長さも他の生徒よりも長く、ひざ下くらいの長さであり、真面目そうな印象を受けた。壇上から降りるときに顔を一瞬見ることができたが、入学式というめでたい日というのに険しい顔をしていた。
教室に戻ると、担任は生徒たち自己紹介をするよう指示した。
「自己紹介といっても、それだけだと何を話していいのかわからないと思うから、話す内容は僕が指示しようか。とりあえず、自分の名前はもちろんだけど、他に自分の住んでいる地域、趣味は最低限話すことにしよう。後は入りたい部活とか、高校で頑張りたいことも言ってくれるといいかな」
担任は、生徒たちが自己紹介をしやすいように、話す内容を指示した。自己紹介は、名簿順で、男子から始まった。
「浅井浩紀(あさいこうき)です。○×市に住んでいます。野球が好きで、中学では野球部でした。高校でも野球部に入るつもりです」
自己紹介する際には、席を立ち教室を見渡しながら話し、話し終えたら席に着く。最初の男子が自己紹介を終えると、次の男子が席を立って話し出す。終わったら席に着く。その繰り返しでどんどん自己紹介は進んでいく。
「高井孝弘(たかいたかひろ)です。趣味はゲームで、スマホゲームにはまっています。中学はこの近くの△×中学です。部活は特に決めていません。一年間よろしく」
紫陽の前の席に座っている生徒が席に着く。いよいよ、自己紹介の番が回ってきた。今までの男子たちと同じように席を立ち、自己紹介を始める。
「鷹崎紫陽(たかさきしよう)です。住んでいる地域は隣の市の×□市です。趣味は……」
一瞬、言葉に詰まってしまった。趣味は何を言えばいいだろうか。他の男子生徒の自己紹介を聞きながら、自分の趣味を考えていたが、周囲の反応がよさそうなものが思い浮かばず、自分の番がきてしまった。読書は好きだが、それではあまりにも普通すぎる。それにオタクだと思われかねない。
「趣味は、人間観察です。僕も部活は特に決めていません。よろしくお願いします」
どこぞの誰か言いそうな、中二病丸出しの発言をしてしまった。あながち嘘でもない自分の発言に紫陽は苦笑してしまう。他人を観察するのは案外楽しくて、暇な時やぼうっとしているときはついつい他人を眺めてしまう。
紫陽の発言に反応するものはいなかった。高校生にもなると、他人の自己紹介にいちいち一喜一憂することもないようだ。
自己紹介が終わり、紫陽は席に着く。すぐに次の男子の自己紹介が始まった。席に着いてこっそり周囲を見渡すと、生徒たちは皆、顔を俯かせて机の下を見ている。その一人に注目すると、机に隠してスマホをいじっていた。
もう一度、周囲をよく確認すると、クラスメイトの大半は下を向き、机の下でスマホを操作していた。隣の席の男子はSNSアプリ「コネクト」を開いて、誰かと連絡を取っていた。指が高速に動いて、メッセージが表示される。後ろをふり向くと、音声こそ聞こえないが、派手なアクションゲームをしている男子がいた。やっていることは一人一人違えど、スマホを操作していることに変わりはない。
スマホを操作していない生徒が何をしているかといえば、机に伏して寝ていた。入学式当日から寝ていることに紫陽は驚いた。スマホをこっそりと机の下で操作する者、寝ている者がいることに、担任はどう思っているのだろうか、担任の様子をうかがうと、特に何とも思わないのか、そのまま自己紹介の様子を眺めているだけだった。
その生徒は隼瀬あきら(はやせあきら)と名前らしい。教室の廊下に貼られていたクラス表に名前が書かれていたのを思い出す。紫陽のクラスメイトが新入生代表の挨拶をしていた。
「この学校に入学できたことを誇りに思い、三年間しっかり勉学に取り組みます」
彼女の声は体育館に響き渡った。決して大声を出しているわけでもないのに、その声は良く通る澄み切った声だった。長い黒髪を一つにまとめ、スカートの長さも他の生徒よりも長く、ひざ下くらいの長さであり、真面目そうな印象を受けた。壇上から降りるときに顔を一瞬見ることができたが、入学式というめでたい日というのに険しい顔をしていた。
教室に戻ると、担任は生徒たち自己紹介をするよう指示した。
「自己紹介といっても、それだけだと何を話していいのかわからないと思うから、話す内容は僕が指示しようか。とりあえず、自分の名前はもちろんだけど、他に自分の住んでいる地域、趣味は最低限話すことにしよう。後は入りたい部活とか、高校で頑張りたいことも言ってくれるといいかな」
担任は、生徒たちが自己紹介をしやすいように、話す内容を指示した。自己紹介は、名簿順で、男子から始まった。
「浅井浩紀(あさいこうき)です。○×市に住んでいます。野球が好きで、中学では野球部でした。高校でも野球部に入るつもりです」
自己紹介する際には、席を立ち教室を見渡しながら話し、話し終えたら席に着く。最初の男子が自己紹介を終えると、次の男子が席を立って話し出す。終わったら席に着く。その繰り返しでどんどん自己紹介は進んでいく。
「高井孝弘(たかいたかひろ)です。趣味はゲームで、スマホゲームにはまっています。中学はこの近くの△×中学です。部活は特に決めていません。一年間よろしく」
紫陽の前の席に座っている生徒が席に着く。いよいよ、自己紹介の番が回ってきた。今までの男子たちと同じように席を立ち、自己紹介を始める。
「鷹崎紫陽(たかさきしよう)です。住んでいる地域は隣の市の×□市です。趣味は……」
一瞬、言葉に詰まってしまった。趣味は何を言えばいいだろうか。他の男子生徒の自己紹介を聞きながら、自分の趣味を考えていたが、周囲の反応がよさそうなものが思い浮かばず、自分の番がきてしまった。読書は好きだが、それではあまりにも普通すぎる。それにオタクだと思われかねない。
「趣味は、人間観察です。僕も部活は特に決めていません。よろしくお願いします」
どこぞの誰か言いそうな、中二病丸出しの発言をしてしまった。あながち嘘でもない自分の発言に紫陽は苦笑してしまう。他人を観察するのは案外楽しくて、暇な時やぼうっとしているときはついつい他人を眺めてしまう。
紫陽の発言に反応するものはいなかった。高校生にもなると、他人の自己紹介にいちいち一喜一憂することもないようだ。
自己紹介が終わり、紫陽は席に着く。すぐに次の男子の自己紹介が始まった。席に着いてこっそり周囲を見渡すと、生徒たちは皆、顔を俯かせて机の下を見ている。その一人に注目すると、机に隠してスマホをいじっていた。
もう一度、周囲をよく確認すると、クラスメイトの大半は下を向き、机の下でスマホを操作していた。隣の席の男子はSNSアプリ「コネクト」を開いて、誰かと連絡を取っていた。指が高速に動いて、メッセージが表示される。後ろをふり向くと、音声こそ聞こえないが、派手なアクションゲームをしている男子がいた。やっていることは一人一人違えど、スマホを操作していることに変わりはない。
スマホを操作していない生徒が何をしているかといえば、机に伏して寝ていた。入学式当日から寝ていることに紫陽は驚いた。スマホをこっそりと机の下で操作する者、寝ている者がいることに、担任はどう思っているのだろうか、担任の様子をうかがうと、特に何とも思わないのか、そのまま自己紹介の様子を眺めているだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる