5 / 59
1日常
4
しおりを挟む
紫陽はこの異常な状況に、急に気分が悪くなる。スマホを離さず一日中、他人とつながっていたいというのに、現実の生活では他人の言葉に耳を貸そうともしない。この世界はどうなっていくのだろうかと、将来が不安になる。そんな紫陽の気持ちをよそに、自己紹介は進んでいく。
男子の自己紹介がようやく終わり、女子の自己紹介が始まった。すぐにあやのの番が来た。
「鵜飼あやの(うかいあやの)です。鷹崎紫陽とは幼馴染です。住んでいる場所も紫陽の家の近くで、幼稚園からの付き合いです。趣味は紫陽をいじること。よろしくお願いします!」
あやのは紫陽との関係を入学早々に暴露してしまった。これはあとからいろいろクラスメイトに詰問されそうである。そんなことを思いながらも、どうせクラスメイトはスマホに気を取られていて、あやのの自己紹介をまともに聞いていないだろう。彼女が自己紹介を終えて席に着くのを確認して、周囲の反応をうかがう。
予想通り、クラスメイトの反応は何もなかった。
「隼瀬あきら(はやせあきら)です。うちの高校の近くに住んでいます。趣味は特にありません。よろしくお願いします」
入学式で新入生代表の挨拶を行った彼女の自己紹介の番が回ってくる。味気ない自己紹介にも、今までと同じ、誰も何も言うことはなかった。
隼瀬あきらは、クラスメイト一人一人を眺めて席に着く。その時に紫陽と目が遭ったが、すぐに目をそらされた。顔に何かついていただろうかと紫陽は自分の顔を手で確認するが、何も変わったところは見つからなかった。
「自己紹介も終わったことだし、次は委員会やクラスの係りを決めていこうか?できれば、立候補でサクッと決めていきたいから、皆、積極的に手を挙げるように。手始めにクラスの委員長を決めていこう。誰か、やりたい人はいますか?」
自己紹介が終わり、今度は委員会とクラスの係り決めをすることになった。担任ののんきな声を耳にしても、誰一人、教室の正面に顔を向ける者はいない。このままだと、どの委員会も係りも決まりそうにない。
クラスをまとめるクラス委員長をやる人間も、もちろんいない。担任の言葉に誰も応える様子はない。
「僕がやります」
しばらく教室には沈黙が続いた。誰も面倒なクラス委員長をやりたがらない。そのまま時間は過ぎていくばかりだと思われたが、一人の男子生徒の立候補により沈黙は破られた
「立候補ありがとう。他に立候補する人はいないから、君がこのクラスの委員長だ。よろしく頼むよ」
他に誰も立候補する者はいなかったので、そのまま彼が委員長に決まった。
その後は、驚くほどスムーズに委員会や係りが決められていく。まるで初めから打ち合わせしていたかのように、誰一人係りが被ることなく、委員会や係りが決定していく。新しく委員長になった男子生徒が委員会や係りの名前を口にするたびに、一人の生徒が手を挙げて、滞りなく進んでいく。あっという間に委員会とクラスの係り決めの時間は終わった。
紫陽は、あまりにもスムーズに進められていく様子にあっけに取られていた。クラスメイトの突然の連携ぶりに怖気づいてしまい、立候補するのが遅れてしまった。最後に残っていた係りに決まってしまった。最後まで手を挙げなかったのは、紫陽だけではなかった。隼瀬あきらも紫陽と同様に、最後に残った係りを引き受けることになった。
彼らに与えられたのは図書委員だった。二人は図書委員という役割を与えられた。
紫陽は気付いていなかったが、すでにこの時からクラス内でのスマホでの連絡の取り合いは行われていた。それに参加していないのは、スマホを持っていない紫陽と隼瀬あきらの二人だけだった。そのため、SNSアプリ「コネクト」のクラスのグループに参加することができず、あまりものの委員会になってしまった。
男子の自己紹介がようやく終わり、女子の自己紹介が始まった。すぐにあやのの番が来た。
「鵜飼あやの(うかいあやの)です。鷹崎紫陽とは幼馴染です。住んでいる場所も紫陽の家の近くで、幼稚園からの付き合いです。趣味は紫陽をいじること。よろしくお願いします!」
あやのは紫陽との関係を入学早々に暴露してしまった。これはあとからいろいろクラスメイトに詰問されそうである。そんなことを思いながらも、どうせクラスメイトはスマホに気を取られていて、あやのの自己紹介をまともに聞いていないだろう。彼女が自己紹介を終えて席に着くのを確認して、周囲の反応をうかがう。
予想通り、クラスメイトの反応は何もなかった。
「隼瀬あきら(はやせあきら)です。うちの高校の近くに住んでいます。趣味は特にありません。よろしくお願いします」
入学式で新入生代表の挨拶を行った彼女の自己紹介の番が回ってくる。味気ない自己紹介にも、今までと同じ、誰も何も言うことはなかった。
隼瀬あきらは、クラスメイト一人一人を眺めて席に着く。その時に紫陽と目が遭ったが、すぐに目をそらされた。顔に何かついていただろうかと紫陽は自分の顔を手で確認するが、何も変わったところは見つからなかった。
「自己紹介も終わったことだし、次は委員会やクラスの係りを決めていこうか?できれば、立候補でサクッと決めていきたいから、皆、積極的に手を挙げるように。手始めにクラスの委員長を決めていこう。誰か、やりたい人はいますか?」
自己紹介が終わり、今度は委員会とクラスの係り決めをすることになった。担任ののんきな声を耳にしても、誰一人、教室の正面に顔を向ける者はいない。このままだと、どの委員会も係りも決まりそうにない。
クラスをまとめるクラス委員長をやる人間も、もちろんいない。担任の言葉に誰も応える様子はない。
「僕がやります」
しばらく教室には沈黙が続いた。誰も面倒なクラス委員長をやりたがらない。そのまま時間は過ぎていくばかりだと思われたが、一人の男子生徒の立候補により沈黙は破られた
「立候補ありがとう。他に立候補する人はいないから、君がこのクラスの委員長だ。よろしく頼むよ」
他に誰も立候補する者はいなかったので、そのまま彼が委員長に決まった。
その後は、驚くほどスムーズに委員会や係りが決められていく。まるで初めから打ち合わせしていたかのように、誰一人係りが被ることなく、委員会や係りが決定していく。新しく委員長になった男子生徒が委員会や係りの名前を口にするたびに、一人の生徒が手を挙げて、滞りなく進んでいく。あっという間に委員会とクラスの係り決めの時間は終わった。
紫陽は、あまりにもスムーズに進められていく様子にあっけに取られていた。クラスメイトの突然の連携ぶりに怖気づいてしまい、立候補するのが遅れてしまった。最後に残っていた係りに決まってしまった。最後まで手を挙げなかったのは、紫陽だけではなかった。隼瀬あきらも紫陽と同様に、最後に残った係りを引き受けることになった。
彼らに与えられたのは図書委員だった。二人は図書委員という役割を与えられた。
紫陽は気付いていなかったが、すでにこの時からクラス内でのスマホでの連絡の取り合いは行われていた。それに参加していないのは、スマホを持っていない紫陽と隼瀬あきらの二人だけだった。そのため、SNSアプリ「コネクト」のクラスのグループに参加することができず、あまりものの委員会になってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる