人類はスマホに寄生されました

折原さゆみ

文字の大きさ
58 / 59
12それから〇〇年後

しおりを挟む
 〇〇年前のあの日、高校生だった紫陽と中学生だったすみれは、人間の手にスマホが寄生する事態を引き起こした元凶となる、池谷という女性と会うことになった。彼女は人類の生活を豊かにするために、人間にスマホの寄生を考えていたが、結果は思わぬ事態を引き起こした。世界にスマホの寄生が広まり、その影響で死者が多数出てしまった。

 彼女もまた、スマホに寄生された人間となった。そして、彼女の意識はスマホに乗っ取られてしまった。スマホの気まぐれによって、彼女の意識は紫陽たちが出会った時に存在していたが、途中で消されてしまう。その直前に託された願いとは。

スマホと人類との間の架け橋になってほしいのです。


彼女は、すでにスマホの寄生を止めることは不可能だとわかっていた。だからこそ、これ以上、スマホの寄生による死者を減らして欲しいとの思いを込めての願いだったのだろう。


『スマホの寄生を失くして欲しいというのがなくなると途端に、それか?それは我たちもメリットはあるが、難しい話だな』

 話を聞いたは難しいと言ったが、紫陽はそうとは思えなかった。紫陽たち兄妹にとって、スマホの寄生を止め、人間の両手がまた自由に使える未来が望ましかったが、無理だと言われてしまう。だからこそ、彼女の願いは何としてでも叶えようと決意した。

「今は、スマホと人間の思いが食い違っています。スマホに寄生された人間は片手がふさがれ、不便な生活を強いられることになり、大抵の人間はスマホごと手を切り落とす手術に踏み切る人が多い。ですがそれはあなたがたにとって、良くないことではないですか?」

『人間に切り捨てられるか、人間とともに亡くなるか。我らにとっての違いはその程度でしかない。人間の意識を変えたところで意味がないな』

「オレ達はそうは思いません」

紫陽は自分の考えを彼らに聞かせることにした。


『なるほど。その考えは一理ある。検討の余地あり、だな。お前はどう思う?』

「何度も言っているが、我に決定権はない。意見を求めるだけ無駄だ」

『同じスマホとしての考えを聞きたかったまでだ。まあいい、紫陽、とか言ったな。今言った発言を実現するためには、相当な時間と労力がかかると思うが、覚悟はできているのか』

 話を聞き終えたは紫陽の考えを認めてはいたが、問題は多いと感じていた。


 スマホの寄生を止められないのなら、人間側の意識を変えて見せる。だから、スマホの肥大を止める努力をして欲しい。

 紫陽が語ったのは、スマホの寄生を恐れて拒否するのではなく、人間自らがスマホの寄生を受け入れることだった。スマホの寄生を防ぐのが無理というのならば、それを受け入れる世間の意識改革をするしかない。そのための努力を紫陽は惜しむつもりはなかった。

「あなたたちは、オレ達人間がスマホの寄生を拒否しているがために、それを感じ取って肥大化して道連れに亡くなっているのではないですか?」

 スマホだって、せっかく寄生した人間と一緒に死にたくはないだろう。しかし、人間に拒否されてしまえば、どうしようもない。だからこそ、反発して肥大化してしまったのではないか。

『なるほど、面白いことを考える。それで、それを我たちに要求するというわけか』

「お互いにとって、メリットが大きいと思いますが」

 自分の考えを伝えた紫陽だが、それが簡単に実現できるとは思っていなかった。それでも、現状をよくするためにできる最善の策だと考えていた。しばらく考え込んでいただが、紫陽の考えを否定することはなかった。

『よかろう。我が肥大化についてはどうにかするとしよう』

「お、お願いします」


「ねえ、お兄ちゃんが言っている計画は、私たち自身がスマホに寄生されていないと、説得力がないと思うんだけど」

 協力を得られたことに安堵する紫陽だが、妹のすみれの言葉がそれを打ち消した。確かに協力を要請する自分たちがスマホに寄生されていないのなら、人々の賛同を得るのは難しいだろう。

「紫陽たちは、我らが寄生しにくい体質を持っている。寄生するのは難しいだろう。とはいえ、我らの創造主が賛成しているのだ。我が協力してやろう」

「お前が手伝ってくれるというのか?」


『ならば、お前が協力してやれ。それと、こいつの信者がいるだろう?そいつらを使えばいい』


 紫陽たちは、と隼瀬たちを使い、スマホと人間の共生のために奮闘するのだった。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...