恋にもがく中学生

折原さゆみ

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1加藤紗那(かとうさな)⑥

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 七月に入り、もうすぐ待ちに待った夏休み。その一週間くらい前の昼休み。私はたまたま、図書室に向かっていた。朝の自習の時間に読む本が亡くなってしまったので、新たに借りようと思ったのだ。

 私の足は図書室に入る前にピタリと止まってしまった。図書室の中で、男女のひそひそした話し声が聞こえたからだ。私の足音は中の男女に聞こえていないらしく、話は続いていく。

 人の話を盗み聞ぎするような悪趣味ではないのだが、話を聞いているうちに、その男女の声が、幼馴染のなお君と、転校生だと気が付いた。そして、話の内容が、私についてだということがわかったとたん、私の中の何かが破裂した。


「私に隠れて、なにを話しているのかなあ!」

 図書館は静かにというルールを忘れて、私は扉を乱暴に開き、思わず叫んでしまった。ここで、図書室に乗り込むことが悪手でしかないことは明白だが、その時の私は正気ではなかった。乗り込んでしまってやっと自分の失態に気付いた。

「さ、さな。どうしてここに」

「ええと、さなさん、これはね……」

 驚くなお君と、戸惑う転校生に怒りがわいてきた。転校生が来てからたまっていたストレスが一気に口から飛び出していく。

「なお君!」

 びしっと人差し指で刺してやると、ハイっと背筋を伸ばして返事をするなお君。

「転校生と付き合うことにしたなら、はっきりと私に伝えて欲しい。私だって、なお君のことが好きだから、こんな中途半端な状態は傷つきます。なお君の浮気者!」

「それから」

 今度は転校生を指さす。はい、とか細い声で返事をする転校生にイライラが募っていく。この後に及んでも可愛らしさを演出しているようだ。本人にその気はなくても、すでに泣きそうな目をして、ウルウルこちらを見ていれば、そうも見えてくる。

「私のなお君を奪うなら、もっと正々堂々勝負しなさいよ。こんな二人きりの場所でイチャイチャするのは、付き合ってからでしょう。告白はしたの?キスは?返事は聞いたの?どうなの!」

「ええと、ええと、なおと君。だから、私はさなさんに話して置こうって言ったのに」

「私はあなたに聞いているの!どうなの。」

 転校生は、私の質問に答えようとせず、なお君に答えを求めていた。それは、火に油を注ぐようなものだ。私の怒りはさらに燃え盛っていく。きっと、私の顔はとても怖いことになっているだろう。自分の顔を鏡で確認できないので、想像しかできないが。

 目の前の転校生は、私のあまりの形相に泣き出してしまった。

「ううう。ひっく、ひっく」

 泣き方も可愛らしいのが腹が立つ。私の怒りは、一向に静まることはなかった。そんな私の怒りを鎮めたのは、なお君、ではなかった。なお君もまた、私の怒りを増幅させた。
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