恋にもがく中学生

折原さゆみ

文字の大きさ
7 / 25

1加藤紗那(かとうさな)⑦

しおりを挟む
「悪かったよ、さな。だから、これ以上、しいをいじめないでくれ。オレが話さなかったのが悪いんだから」

「キーンコーンカーンコーン」

 タイミング悪く、昼休み終了のチャイムが鳴ってしまった。仕方ない。理由は帰りにゆっくりと聞くことにしよう。怒りはすでに限界突破していたが、何とか冷静さを取り戻し、二人を置いて教室に戻ることにした。

「放課後、しっかり話を聞くから覚悟しなさいよ」

 まるで、私が悪者みたいな感じになったが、捨て台詞を二人に吐くことを押さえることはできなかった。これくらいは仕方ないことだろう。

 たまたま運のいいことに、この日は図書室を利用している人はなお君と転校生以外にいなかったようだ。図書委員が居てもおかしくはなかったが、そういえば、なお君が図書委員だったと思い出したのは、廊下を小走りで歩いている最中だった。




 結局、なお君と転校生は付き合ってないということが判明した。どうやら、二人はいとこのようだ。なお君の母の妹の子供が小山内さんらしい。彼女の父親が転勤の多い仕事のようで、なかなか二人は会う機会がなかったようで、転校生としてやってきて、互いに驚いたようだ。

「ごめんね。さなさんとなおと君が付き合っていることを知らなくて。わたし、なおと君に話しかけてばっかりだったから、やきもちやいていたんだね」

「悪かった」

 図書室の騒動のあったその日は、ミーちゃんの話が長引き、帰りの会が終わるとすぐに部活に行かなくてはならなかったので、二人とゆっくりと話すことができなかった。それに、図書室での自分のあまりの失態に私が気まずくなって、話を聞くどころではなかった。部活中も二人と視線を合わせないようにし、部活終了後も、急いで一人で帰宅してしまった。

 週末になって、やっと私は、二人を近くの公園に呼びだして、図書室での話の内容を聞く決心がついた。すでに夏休みに突入していたが、特に二人に用事は内容で、私の提案を受け入れてくれた。

 公園では、二人に自分たちがいとこ同士ということを話していないことで、私にいらぬやきもちを焼かせたこと、自分たちの話に夢中で私に不快な思いをさせたことを謝られた。私も、早とちりで二人に怒鳴ってしまったので、お互い様だということで、許してあげることにした。



「おはようございます」

「おはよう、さなちゃん。今日も元気だねえ。直人ならまだ寝ていると思うから、起こしてやってちょうだい」

「わかりました」

 転校生がなお君と付き合っていないことを知って、安心した。とはいえ、これからも他の転校生がいつ来ないかとわからない。それに、今はなお君にアタックしてこない女子も、いつアタックしてくるかわからない。

 転校生の件で、これからも、なお君のことを大好きアピールしていかなくてはいけないと思った。だからこそ、私は今日も一緒に学校に行くために、なお君を起こしに家まで押しかける。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...