恋にもがく中学生

折原さゆみ

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3小山内詩衣(おさないしい)~高橋澪(たかはしみお)①~

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 私は、中学校に入って、初めて転校を経験した。父親の仕事の都合で、今まで住んでいた地域を離れることになり、父親に八つ当たりもした。しかし、父親についていくことはすでに家族の間での決定事項だったので、仕方なく、住み慣れた地域から引っ越すこととなった。

 転校は中学校三年間に三度経験した。最初の転校先には、なお君という、母親の妹の子供、私から見たら、いとこがいた。お盆や正月に何度かあっているので、うれしい再会だった。しかし、それもつかの間、どうやら、そのなお君には、幼馴染の女子がいたようで、彼女に私たちの仲を疑われてしまった。

 私は、別になお君のことが嫌いではなかったので、付き合っているということになっていても、別に構わなかったのだが、彼は違ったようだ。必死で私との仲を説明していた。どうやら、なお君とその幼馴染は、お互いに思い合っているようで、いわゆる「両想い」という奴だったらしい。

 ということで、せっかく知り合いに再会したというのに、なお君とは話す機会が減ってしまった。私との仲を幼馴染の女子に誤解されたくないという、なお君の判断だ。私も、なお君と話していて、そこに不機嫌そうな視線を四六時中浴びるのはごめんこうむるので、仕方ないことだった。




 さて、知り合いと再会した後、その中学校で三年間過ごすことなく、また転校となった。二回目の転校である。そこで、人生初の告白を受けた。私は普通の女子だったはずだ。人よりもかわいいと言われることが多かったのだが、それでも、告白されるほどではなかった。

 だというのに、私は告白を受けてしまった。きっと、これが人生で、最初で最後の告白だと思う。


「わたしは、あなたのことが好きなの。女の子同士でって変かもしれないけど……」


 告白してきたのは、なんと、私と同じクラスの女子だった。確かに転校当初から、私に積極的に話しかけてくれて、すぐに打ち解けて、仲良くはなったが、まさか、その思いが友情ではなく、恋愛感情だったとは知らなかった。


「ええと、その、告白は素直にびっくりだけど、その、あの、なんていうか、ちょっとまって……」

「ごめんなさい」

 放課後の教室で、二人きりで話しがあると言われ、いったい何の話だろうと思ったら、告白だった。驚きと戸惑いで、とっさに謝ってしまった。私は今まで異性、男子しか好きになったことがなかった。まさか、人生初の告白を女子から受けるなんて考えたことがなかった。謝るしかできなくて、相手には悪いことをしたなとは思ったが、どうしたらよかったのだろうか。

 私の返事に相手は困ったような、傷ついたような顔をしていたが、私にはどうしようもなかった。それでも、相手はとてもやさしい女子だった。

 その後、私は三度目の転校となり、彼女との関係は疎遠になってしまったが、彼女は元気に過ごしているだろうか。告白から数日後、彼女から友達として、これからも仲良くしようと提案された。その提案にほっとしている自分に、なんとも言えない気持ちになった。

 結局、彼女とは、転校するまで、友達として付き合うこととなった。まるで、告白がなかったかのように、私たちは、はたから見たら、仲の良い、親友のように見えた。それでよかったのだろうと自分に言い聞かせているが、今でも最善の行動はなんだったのかわからない。
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