19 / 45
19彼は一体何者だろうか
しおりを挟む
「ま、雅人君、どうしてまだ大学に」
「まだって失礼だなあ。僕が大学にいてはいけない理由はないでしょ。学校なら問題はないよ。そんなことより、そこの女はどうするの?朔夜さんのことが気になって見に来たら、何か大変なことになっていたから、つい彼女の記憶を操作したけど」
綾崎さんを見ると、彼女はぼうっとして、目の焦点が合っていなかった。そしてそのまま気を失って、廊下に倒れこみそうになる。慌てて綾崎さんが廊下の床に頭をぶつけないように支えると、彼女は気を失っていた。呼吸を確かめたり、身体に怪我がないか調べたりしたが、気を失っている以外は特に異常は見られなかった。しかし、西園寺雅人が綾崎さんに能力を使ったところを私は確認していない。そんなことが可能なのだろうか。
「ああ、心配しなくても大丈夫だよ。僕はこう見えて、いろいろなことができるんだ。離れていても対象に触ることなく記憶を操作することは造作もない」
西園寺雅人は、綾崎さんの記憶を消したことを自慢するでもなく、さらっととんでもないことを言いだした。
「それにしても、記憶操作の能力は役に立つね。ああ、そこの女性はどうしようか?確か、彼女は能力者みたいだけど、朔夜さんが望むなら、いくらでも記憶のかいざんでも消去でもしてあげるよ」
「お断りします。あなたが能力を使った彼女ですが、どこまでの記憶を消去したのですか。それ次第では、私はあなたに能力を使わざるを得ない次第ですよ」
そう言いながらも、この場は急いで離れた方がいいと、私の直感が告げていた。ジャスミンの手を取り、とりあえず、この場を離れる準備を始める。綾崎さんも気を失っているが、この場に残しておくのは危険だ。肩に乗せて綾崎さんも一緒にこの場を離れられるようにする。私の行動を西園寺雅人はつまらなそうな顔で見ていた。
「別に大したことはしていないよ。朔夜さんが能力を使っているところと、僕とこの場で出会ったことを忘れてもらっただけ。それにしても、なんで彼が朔夜さんを選んだのか、まだわからないなあ。でも、普通の人より興味深いな。ただ言えるのは、西園寺桜華よりは興味深くて面白そうだ」
西園寺雅人は、私たちの行動を追及はしなかった。彼が何もしてこないなら、そのままこの場を一刻も早く立ち去るのみ。私はジャスミンに目配せして一気に走り出した。綾崎さんを肩に抱えてなので、走るとは言っても、普通に走れることはなく、早歩き程度だが、それでも全力で西園寺雅人から逃れるように歩を進める。
「さて、九尾、さっさと僕のもとに戻ってもらうよ。そうでないと、困るんだよね」
西園寺雅人は、私たちが去っていった方向を見ながら、ぽつりとつぶやく。その言葉は静かになった廊下に響き渡った。そして、彼は私たちとは反対方向に向かって歩き出した。
「ね、ねえ。蒼紗、もうそろそろ手を放してくれてもいいんじゃない?」
「ああ、すいません。つい……」
私たちは、雅人君から離れようとしたあまり、大学を出てしまった。校門を出てすぐのところで、ジャスミンが声を上げたので、慌てて手を離した。その拍子に綾崎さんが目を覚ます。
「蒼紗、本当にごめん。今日は大事な用事があるから、これで私は帰るわ。たぶん、今日でいろいろ決着がつくと思うから。蒼紗に迷惑をかけないためにも、今日は蒼紗のお願いでも聞けない」
ジャスミンの真剣な言葉に、私は彼女が私の知らないところで、面倒なことに巻き込まれていることを知る。私に迷惑をかけないために、ジャスミンは何をしようとしているのだろうか。
「ええと、ここは、確か私たちは佐藤さんを追いかけて、控室に向かっていて。あれ、そのあと……」
「大丈夫ですよ。あれから、ジャスミンと会って、話を聞きました。それで、今日は授業を休もうということになりました。もし、綾崎さんがこの後、授業を受けるというのなら、ジャスミンと私の分のダイヘンをしてくると助かります」
駒沢や西園寺雅人と話し、その後、大学の外まで出てきてしまった。そのため、大学の壁に設置してある時計を見ると、すでに授業が始まっている時間だった。今から授業に向かってもいいのだが、ジャスミンに追及したいことがあるので、今日は休むことにした。ジャスミンも授業に戻る気はないようだ。
「そうそう、私と蒼紗は授業を休むから、綾崎さんがダイヘンしてくれると助かるわあ」
「蒼紗さんが休むというのなら、私も今日は授業を休もうかな。次の授業は別に出席で単位が決まるわけではないし」
私とジャスミンが授業のダイヘンを頼むが、綾崎さんも授業を休むらしい。ダイヘンを頼んだが、実際には、綾崎さんも授業を休んだ方がいいと思っていたので、彼女自身が休むと言ってくれて、正直助かった。西園寺雅人の記憶の操作の影響がどれくらいのものなのか、私にはわからない。今日は安静にした方がいいだろう。それに、西園寺雅人がまだ大学に残っている可能性があるので、私の知り合いを大学内に残しておくのは心配だ。
「そういうことなら、今日はみんなで授業を休みましょう。ジャスミンのせいで、なんだか疲れました。家に帰ってゆっくり休養して、明日また頑張りましょう」
『じゃあ、また明日』
私たち三人は大学の校門前で別れた。ジャスミンは、私にはわからない何か大切な用事のために、綾崎さんは家に、私は……。
自分の家に向かうふりをして、途中で来た道を振り返り、ジャスミンのことを追いかけることにした。今度こそ、ジャスミンが何をしようとしているか、確かめるためだ。
今度こそ、誰かにジャスミンの尾行を邪魔されないようにしなければ。慎重に、周りから怪しまれないように、ジャスミンとの距離を取りつつ、尾行を続けた。当然、校門前で別れたときに、大学に戻って大学生らしい服装に着替えることは忘れなかった。今は、黒い忍者姿ではなく、ベージュのダウンジャケットに、ジーパンという普通の恰好をしているので、よほど目立つ行動をしなければ問題はないだろう。
「まだって失礼だなあ。僕が大学にいてはいけない理由はないでしょ。学校なら問題はないよ。そんなことより、そこの女はどうするの?朔夜さんのことが気になって見に来たら、何か大変なことになっていたから、つい彼女の記憶を操作したけど」
綾崎さんを見ると、彼女はぼうっとして、目の焦点が合っていなかった。そしてそのまま気を失って、廊下に倒れこみそうになる。慌てて綾崎さんが廊下の床に頭をぶつけないように支えると、彼女は気を失っていた。呼吸を確かめたり、身体に怪我がないか調べたりしたが、気を失っている以外は特に異常は見られなかった。しかし、西園寺雅人が綾崎さんに能力を使ったところを私は確認していない。そんなことが可能なのだろうか。
「ああ、心配しなくても大丈夫だよ。僕はこう見えて、いろいろなことができるんだ。離れていても対象に触ることなく記憶を操作することは造作もない」
西園寺雅人は、綾崎さんの記憶を消したことを自慢するでもなく、さらっととんでもないことを言いだした。
「それにしても、記憶操作の能力は役に立つね。ああ、そこの女性はどうしようか?確か、彼女は能力者みたいだけど、朔夜さんが望むなら、いくらでも記憶のかいざんでも消去でもしてあげるよ」
「お断りします。あなたが能力を使った彼女ですが、どこまでの記憶を消去したのですか。それ次第では、私はあなたに能力を使わざるを得ない次第ですよ」
そう言いながらも、この場は急いで離れた方がいいと、私の直感が告げていた。ジャスミンの手を取り、とりあえず、この場を離れる準備を始める。綾崎さんも気を失っているが、この場に残しておくのは危険だ。肩に乗せて綾崎さんも一緒にこの場を離れられるようにする。私の行動を西園寺雅人はつまらなそうな顔で見ていた。
「別に大したことはしていないよ。朔夜さんが能力を使っているところと、僕とこの場で出会ったことを忘れてもらっただけ。それにしても、なんで彼が朔夜さんを選んだのか、まだわからないなあ。でも、普通の人より興味深いな。ただ言えるのは、西園寺桜華よりは興味深くて面白そうだ」
西園寺雅人は、私たちの行動を追及はしなかった。彼が何もしてこないなら、そのままこの場を一刻も早く立ち去るのみ。私はジャスミンに目配せして一気に走り出した。綾崎さんを肩に抱えてなので、走るとは言っても、普通に走れることはなく、早歩き程度だが、それでも全力で西園寺雅人から逃れるように歩を進める。
「さて、九尾、さっさと僕のもとに戻ってもらうよ。そうでないと、困るんだよね」
西園寺雅人は、私たちが去っていった方向を見ながら、ぽつりとつぶやく。その言葉は静かになった廊下に響き渡った。そして、彼は私たちとは反対方向に向かって歩き出した。
「ね、ねえ。蒼紗、もうそろそろ手を放してくれてもいいんじゃない?」
「ああ、すいません。つい……」
私たちは、雅人君から離れようとしたあまり、大学を出てしまった。校門を出てすぐのところで、ジャスミンが声を上げたので、慌てて手を離した。その拍子に綾崎さんが目を覚ます。
「蒼紗、本当にごめん。今日は大事な用事があるから、これで私は帰るわ。たぶん、今日でいろいろ決着がつくと思うから。蒼紗に迷惑をかけないためにも、今日は蒼紗のお願いでも聞けない」
ジャスミンの真剣な言葉に、私は彼女が私の知らないところで、面倒なことに巻き込まれていることを知る。私に迷惑をかけないために、ジャスミンは何をしようとしているのだろうか。
「ええと、ここは、確か私たちは佐藤さんを追いかけて、控室に向かっていて。あれ、そのあと……」
「大丈夫ですよ。あれから、ジャスミンと会って、話を聞きました。それで、今日は授業を休もうということになりました。もし、綾崎さんがこの後、授業を受けるというのなら、ジャスミンと私の分のダイヘンをしてくると助かります」
駒沢や西園寺雅人と話し、その後、大学の外まで出てきてしまった。そのため、大学の壁に設置してある時計を見ると、すでに授業が始まっている時間だった。今から授業に向かってもいいのだが、ジャスミンに追及したいことがあるので、今日は休むことにした。ジャスミンも授業に戻る気はないようだ。
「そうそう、私と蒼紗は授業を休むから、綾崎さんがダイヘンしてくれると助かるわあ」
「蒼紗さんが休むというのなら、私も今日は授業を休もうかな。次の授業は別に出席で単位が決まるわけではないし」
私とジャスミンが授業のダイヘンを頼むが、綾崎さんも授業を休むらしい。ダイヘンを頼んだが、実際には、綾崎さんも授業を休んだ方がいいと思っていたので、彼女自身が休むと言ってくれて、正直助かった。西園寺雅人の記憶の操作の影響がどれくらいのものなのか、私にはわからない。今日は安静にした方がいいだろう。それに、西園寺雅人がまだ大学に残っている可能性があるので、私の知り合いを大学内に残しておくのは心配だ。
「そういうことなら、今日はみんなで授業を休みましょう。ジャスミンのせいで、なんだか疲れました。家に帰ってゆっくり休養して、明日また頑張りましょう」
『じゃあ、また明日』
私たち三人は大学の校門前で別れた。ジャスミンは、私にはわからない何か大切な用事のために、綾崎さんは家に、私は……。
自分の家に向かうふりをして、途中で来た道を振り返り、ジャスミンのことを追いかけることにした。今度こそ、ジャスミンが何をしようとしているか、確かめるためだ。
今度こそ、誰かにジャスミンの尾行を邪魔されないようにしなければ。慎重に、周りから怪しまれないように、ジャスミンとの距離を取りつつ、尾行を続けた。当然、校門前で別れたときに、大学に戻って大学生らしい服装に着替えることは忘れなかった。今は、黒い忍者姿ではなく、ベージュのダウンジャケットに、ジーパンという普通の恰好をしているので、よほど目立つ行動をしなければ問題はないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
翡翠の歌姫-皇帝が封じた声-サスペンス×中華×切ない恋
雪城 冴 (ゆきしろ さえ)
キャラ文芸
宮廷歌姫の“声”は、かつて皇帝が封じた禁断の力? 翠蓮は孤児と蔑まれるが、才能で皇子や皇后の目を引き、後宮の争いや命の危機に引きずり込まれていく。
『強情な歌姫』翠蓮(スイレン)は、その出自ゆえか素直に甘えられず、守られるとついつい罪悪感を抱いてしまう。
そんな彼女は、田舎から歌姫を目指して宮廷の門を叩く。しかし、さっそく罠にかかり、いわれのない濡れ衣を着せられる。
翠蓮に近づくのは、真逆のタイプの二人の皇子。
優しく寄り添う“学”の皇子・蒼瑛(ソウエイ)と、危険な香りをまとう“武”の皇子・炎辰(エンシン)。
嘘をついているのは誰なのか――
声に導かれ、三人は王家が隠し続けてきた運命へと引き寄せられていく。
【中華サスペンス×切ない恋】
ミステリー要素あり/ドロドロな重い話あり/身分違いの恋あり
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる