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14部活動
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明寿は甲斐と別れた後、職員室で担任に部活に入るために、文化部について教えてくださいと伝えた。担任は明寿に運動部に入るように熱心に勧誘してきた。運動部の魅力や自分が顧問を務める陸上部について、興奮したように目をギラギラさせて鼻息荒く語りだした。
「高校生の青春を部活に懸けるのはどうか、という保護者もいるが、先生はそうは思わない。せっかくの3年間を、仲間と一緒に汗を流して頑張るというのも悪くないと思う」
「はあ」
「まあ、最終的になんの部活に入るのかは、本人が決めることだから、私がとやかく言ってはいけないね。文化部については……。ちょっと待ってくれ」
てっきり、運動部に入ることを強要されるかと身構えていた明寿だったが、担任は運動部の魅力を語り終えて満足したらしい。落ち着いたいつも通りの表情で、部活の資料を探し始める。数分後、担任は紙の束を明寿に差し出す。
「これが部活動のリストと紹介だ。4月に行われた部活動紹介のときに、生徒たちがPRのために作った資料だ。これを見て、部活を見学してみてもいいし、そのまま入部を決めてもいい」
書類を受け取った明寿は、紙の束をめくって中身を確認する。一枚目は部活動のリストで二枚目からは活動日時や活動場所、部活動の内容などが部活ごとに詳しく書かれていた。
「ありがとうございます。部活動を決める参考にします」
担任にお礼を言って、職員室を出る。廊下を歩いていると、校庭で活動している野球部の練習の掛け声が聞こえてくる。5月のこの季節、廊下の窓は開けられ、心地よい風が吹いてている。4階にある音楽室からは吹奏楽部のトランペットなどの管楽器の音が聞こえてきた。
(懐かしいな。私もこんな若いころがあった)
明寿は高校時代、部活動に熱心に取り組んでこなかった。陸上部に所属していたが、運動神経が悪く、記録が出なかったので一年生のうちに辞めてしまった。妻の文江に出会ったのは高校生のころだ。文江は陸上部のマネージャーをしていた。文江は明寿より二歳年上で、明寿が一年生の時は既に三年生。部活でのかかわった期間は短かったが、足が遅かった明寿にもほかの部員と同じように接してくれた。
「あれから、いろいろあったなあ」
高校という場所が明寿の昔の記憶をよみがえらせる。明寿は部活のリストをみながら、どの部活を見学しようかと考える。このまま帰宅しようとも考えたが、甲斐にも見学するといった手前、帰るのは惜しい気がした。
「文芸部、科学部、写真部、調理部、ミステリー研究部、ゲーム部、放送部……。結構、文化部の種類があるんだな」
昔を思い出すが、当時は文化部にあまり興味がなかったので、気にしたことがなかった。部活を辞めた後は帰宅部として、放課後はすぐに帰宅していた。
(ミステリー研究部とかいったい、何を研究するのやら)
なんとなく気になったこの怪しげな部活。明寿はさっそくミステリー研究部が活動している教室にむかった。
「部活の見学、ですか?」
ミステリー研究部が活動しているのは、二階にある視聴覚室だった。扉をたたくと、すぐに返事があり、すぐに明寿を迎え入れてくれた。明寿がここに来た目的を伝えると、対応した男子生徒は驚いたような顔をしていたが、すぐに笑顔になって部長らしき相手に報告していた。
「珍しいね。ああ、もしかして君が季節外れの転校生?」
「ま、まあGW明けにこの学校に来ましたけど」
転校生がそこまで珍しいのだろうか。明寿の不審そうな顔に気づいたのか、部長らしき相手は笑って説明してくれた。
「ごめんね。僕はミステリー研究部の部長、三年生の不破研徒(ふわけんと)。部活の名前からわかると思うけど、普通と違うことに敏感でね。5月なんて大抵の生徒は部活を決めてしまっているから、見学にくる人間は限られている。そのスリッパの色から一年生と判断できる。あとは」
「僕が、最近、転校生がきたことを部長に伝えていました。ああ、僕は君と同じ一年生の多田春平(ただしゅんぺい)。流星君のことは友達から聞いているよ」
「そう、でしたか」
明寿は二人から聞かされた内容で納得する。辺りを見渡すと、視聴覚室には二人以外、他の部員が見当たらない。部員が少ないのだろうか。
「ああ、今日は僕と部長しかいないよ。基本的に活動は週に三日で、部活に出る義務はない。出たいときにここに集まって、各自、自分が決めたテーマを調べていく。二か月に一回、活動報告をしてもらうけど、それ以外は自由な部活だよ」
部長の目はギラギラしていた。明寿を部活に引き入れる気が見え見えの視線に苦笑する。研究テーマを決めて調べる。だとしたら、明寿が調べたいテーマなど一つしかない。
「【新百寿人】について調べてもいいですか?」
正直、部活に入るのは面倒だと思っていた。だから、部活は楽な文化部にしようと決めていたほどだ。しかし、ここにきて考えが変わった。この部活に入れば、【新百寿人】について堂々と調べることが可能だ。
「流星君も【新百寿人】に興味があるんだ!これはもう、運命だね。僕も部長も【新百寿人】について調べているんだ」
多田の言葉を聞き、明寿はミステリー研究部に入部することにした。
「高校生の青春を部活に懸けるのはどうか、という保護者もいるが、先生はそうは思わない。せっかくの3年間を、仲間と一緒に汗を流して頑張るというのも悪くないと思う」
「はあ」
「まあ、最終的になんの部活に入るのかは、本人が決めることだから、私がとやかく言ってはいけないね。文化部については……。ちょっと待ってくれ」
てっきり、運動部に入ることを強要されるかと身構えていた明寿だったが、担任は運動部の魅力を語り終えて満足したらしい。落ち着いたいつも通りの表情で、部活の資料を探し始める。数分後、担任は紙の束を明寿に差し出す。
「これが部活動のリストと紹介だ。4月に行われた部活動紹介のときに、生徒たちがPRのために作った資料だ。これを見て、部活を見学してみてもいいし、そのまま入部を決めてもいい」
書類を受け取った明寿は、紙の束をめくって中身を確認する。一枚目は部活動のリストで二枚目からは活動日時や活動場所、部活動の内容などが部活ごとに詳しく書かれていた。
「ありがとうございます。部活動を決める参考にします」
担任にお礼を言って、職員室を出る。廊下を歩いていると、校庭で活動している野球部の練習の掛け声が聞こえてくる。5月のこの季節、廊下の窓は開けられ、心地よい風が吹いてている。4階にある音楽室からは吹奏楽部のトランペットなどの管楽器の音が聞こえてきた。
(懐かしいな。私もこんな若いころがあった)
明寿は高校時代、部活動に熱心に取り組んでこなかった。陸上部に所属していたが、運動神経が悪く、記録が出なかったので一年生のうちに辞めてしまった。妻の文江に出会ったのは高校生のころだ。文江は陸上部のマネージャーをしていた。文江は明寿より二歳年上で、明寿が一年生の時は既に三年生。部活でのかかわった期間は短かったが、足が遅かった明寿にもほかの部員と同じように接してくれた。
「あれから、いろいろあったなあ」
高校という場所が明寿の昔の記憶をよみがえらせる。明寿は部活のリストをみながら、どの部活を見学しようかと考える。このまま帰宅しようとも考えたが、甲斐にも見学するといった手前、帰るのは惜しい気がした。
「文芸部、科学部、写真部、調理部、ミステリー研究部、ゲーム部、放送部……。結構、文化部の種類があるんだな」
昔を思い出すが、当時は文化部にあまり興味がなかったので、気にしたことがなかった。部活を辞めた後は帰宅部として、放課後はすぐに帰宅していた。
(ミステリー研究部とかいったい、何を研究するのやら)
なんとなく気になったこの怪しげな部活。明寿はさっそくミステリー研究部が活動している教室にむかった。
「部活の見学、ですか?」
ミステリー研究部が活動しているのは、二階にある視聴覚室だった。扉をたたくと、すぐに返事があり、すぐに明寿を迎え入れてくれた。明寿がここに来た目的を伝えると、対応した男子生徒は驚いたような顔をしていたが、すぐに笑顔になって部長らしき相手に報告していた。
「珍しいね。ああ、もしかして君が季節外れの転校生?」
「ま、まあGW明けにこの学校に来ましたけど」
転校生がそこまで珍しいのだろうか。明寿の不審そうな顔に気づいたのか、部長らしき相手は笑って説明してくれた。
「ごめんね。僕はミステリー研究部の部長、三年生の不破研徒(ふわけんと)。部活の名前からわかると思うけど、普通と違うことに敏感でね。5月なんて大抵の生徒は部活を決めてしまっているから、見学にくる人間は限られている。そのスリッパの色から一年生と判断できる。あとは」
「僕が、最近、転校生がきたことを部長に伝えていました。ああ、僕は君と同じ一年生の多田春平(ただしゅんぺい)。流星君のことは友達から聞いているよ」
「そう、でしたか」
明寿は二人から聞かされた内容で納得する。辺りを見渡すと、視聴覚室には二人以外、他の部員が見当たらない。部員が少ないのだろうか。
「ああ、今日は僕と部長しかいないよ。基本的に活動は週に三日で、部活に出る義務はない。出たいときにここに集まって、各自、自分が決めたテーマを調べていく。二か月に一回、活動報告をしてもらうけど、それ以外は自由な部活だよ」
部長の目はギラギラしていた。明寿を部活に引き入れる気が見え見えの視線に苦笑する。研究テーマを決めて調べる。だとしたら、明寿が調べたいテーマなど一つしかない。
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正直、部活に入るのは面倒だと思っていた。だから、部活は楽な文化部にしようと決めていたほどだ。しかし、ここにきて考えが変わった。この部活に入れば、【新百寿人】について堂々と調べることが可能だ。
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