見た目と性格が一致しなくてもいいですか?

折原さゆみ

文字の大きさ
14 / 27

14私にはもったいない

しおりを挟む
「それっていったい……」

「連れて来たよー。あれ、何か話の途中だった?」

 私が弟に質問の意味を問いかけようとしたが、アリアさんが玄関から戻ってきたことで中断された。アリアさんの後ろには、アリアさんが助っ人して呼んだ【私に紹介したい男性】が立っていた。

「紹介したい男性って……。ルリさん、だったんですか」

 アリアさんが呼んだのは、弟と同様の超人気モデルのルリだった。弟のダイヤは、私とよく似た中性的な容姿を売りにしていたが、ルリは身長が183cmと高く、すらりとした体躯に適度な筋肉がついていて、セクシーさを売りにしていた。弟とは違う路線で人気となっている。 

 弟のダイヤは私と同じ吊り目できつい印象を受けがちだが、ルリは切れ長の瞳を細めた柔らかい笑みで読者を魅了している。右目の下のほくろも相まって、大人の印象を与え、そこが魅力の一つとなっていた。

「良かった。お姉さんも知っていて助かりました。もし、知らないなんて言われたらどうしようかと思ってました。ルリ、自己紹介よろしく。今回の件で重要なのは、あんたの演技力なんだから」

「いきなりすぎるだろ。まず、真珠さんが俺と一緒に行動するのが嫌だったらどうする?そもそも、仮とはいえ、俺と恋人の振りをするなんて俺は反対だ」

「姉さんじゃあ、不満ってわけか?お前今、フリーだったよな?」

「そうだけど、それとこれとは話が別だ」

 何やら、ルリさんと弟たちの雰囲気がよろしくない。ルリさんは丁寧な言葉遣いをしている印象があったので、砕けた話し方をしているルリさんは意外だった。

 それにしても、アリアさんは既に私の離婚の問題をルリさんに話していたようだ。ルリさんは私の心配をしているみたいだが、心配するのはご自身の方ではないか。

「あ、あの。さすがに超人気モデルのルリさんを恋人役にするのは」

 ファンの人にご迷惑が。

「ルリじゃダメでした?真珠さんと釣り合う人間を探すにあたり、身近なところから連れてきたんですけど。確かに容姿は完ぺきだけど、性格が少しナヨナヨしているところがあるかもしれないですね」

「現状、ルリより良い男となると、僕、くらいしか思いつかないし、もっと姉さんにふさわしい奴を探すにしても時間が」

「真珠さん、すみません。僕なんかが恋人役は、やはり不満ですよね?」

 なぜ、私が彼を振ったみたいな感じになっているのか。私はただ、超人気モデルのルリが私の仮とはいえ、恋人関係になるのは分不相応だと言いたいだけなのに。モデルなら、彼のファンの女性たちもきっと多いはずだ。そんな彼女たちのお眼鏡にかなうような恋人が彼の隣にふさわしい。

 そもそも、今回の助っ人というのもおかしな話だ。赤の他人のルリさんを巻き込んでしまうのはさすがに心苦しい。

(ルリさんの隣には、私みたいな人間より、自信に満ち溢れた人がいい)

「まあ、せっかく来てくれたし、今夜は泊っていくでしょ?このまま帰らせるのはさすがに申し訳ないし」

「そうだな。ちょうど、僕が作った肉じゃが大量に余っているし。明日、みんなで食べよう」

「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

 ルリは謙虚な性格のようだ。しっかりと頭を下げる。心なしか、弟のダイヤの「肉じゃが」という言葉に嬉しそうな顔を見せた気がした。


「ルリ、その性格、悪くはないけど、もっとワイルドになりなよ。その容姿で謙虚で律儀な性格はギャップ萌えでいいけどさ。事務所にも言われているんじゃないの?」

「別にいいだろ。僕は今のルリだから、こうして家に呼ぶまでの関係になったんだから」

 リビングのソファに私とダイヤ、その正面にアリアさんとルリさんが座る。アリアさんが気を利かせて、温かいルイボスティーを出してくれた。

 3人はかなり親しい関係のようだ。超人気モデルのダイヤとルリ。彼らに臆することなく、楽しそうに会話するアリアさん。この中で場違いな存在はただ一人。会話に参加できずにただ、淹れてくれたお茶を飲む。

「ねえ、ダイヤ。やっぱり、今日は泊りはなしで。家を掃除していないから、掃除しないと。彼は汚い部屋が嫌いだから」

 これ以上、この場に居てもむなしいだけだ。そもそも、私たち恋人同士の問題に弟を巻き込んだ私がおかしい。彼がいる家に戻りたくはないが、この場の空気間には耐えられない。私は弟の家を出るために、席を立とうと立ち上がった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

私を嫌っていた冷徹魔導士が魅了の魔法にかかった結果、なぜか私にだけ愛を囁く

魚谷
恋愛
「好きだ、愛している」 帝国の英雄である将軍ジュリアは、幼馴染で、眉目秀麗な冷血魔導ギルフォードに抱きしめられ、愛を囁かれる。 混乱しながらも、ジュリアは長らく疎遠だった美形魔導師に胸をときめかせてしまう。 ギルフォードにもジュリアと長らく疎遠だったのには理由があって……。 これは不器用な魔導師と、そんな彼との関係を修復したいと願う主人公が、お互いに失ったものを取り戻し、恋する物語

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...