見た目と性格が一致しなくてもいいですか?

折原さゆみ

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27私は今、幸せです

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「あれから、もう2年ですね。時が経つのは早いです」

「確かに、あの時は大変でしたね」

「でも、そのおかげでルリさんと付き合うことができたので……。あの時はつらかったですけど、今は幸せなので結果オーライです」

「まったく、真珠さんには敵いませんね」

 ふふふと私たちはお互いを見つめ合い、自然と微笑みあう。

 私は元カレと別れてから、ルリさんとすぐに付き合うことはなかった。とはいえ、お互いにあれきり会わないという選択肢は無く、定期的に二人でランチをしたり、美術館や博物館などを一緒に見に行ったりしていた。それを見ていた弟達に急かされて、私から思い切って告白した。今度こそ、幸せになってやるぞと気合を入れて。出会ってから3か月でようやく決心がついた。

「真珠さんが告白してくれた時は、すごくうれしかったです」

「ルリさんが告白をOKしてくれた時は、本当にほっとしました」

 もともと、ルリさんには嫌われていないことはわかっていた。普通、好きでもない相手と二人きりで何度も会うことはない。二人きりで会ってくれている時点で勝算はあった。とはいえ、振られないという確証はなかった。だから、ルリさんも告白しようと思っていたと知った時は、信じられない気持ちでいっぱいだった。相手も私と同じ気持ちだったことにこんなに喜んだのは初めての経験だった。

 ちなみに元カレと同棲していたマンションの部屋には、三回ほど荷物を持ち出しに戻るだけで、泊まることは二度となかった。元彼からの連絡はすべて拒否し、最終的に連絡先は削除して、ブロックした。だから、彼が今、誰と付き合っているのか、あのままあの部屋に住み続けているのかも不明だ。

「それにしても、ダイヤたちの結婚式、素晴らしかったですね。私たちもあんな風に出来たらいいなと……」

「出来たらじゃなくて、ダイヤたち以上の素晴らしい結婚式にしましょう!」

 私は今、ルリさんと同棲している。そして、先月、籍を入れたため、晴れて私たちは恋人から夫婦になった。弟とアリアさんは、私が元彼と別れたあとに籍を入れて、結婚式をつい最近あげたばかりだ。彼らは私にとって幸せの家族像そのものだ。

「真珠さんのウェディングドレス姿、きれいでしょうね。モデル撮影している真珠さんも素敵だけど」

 私はルリさんと正式に付き合うことになり、事務員を辞めて、モデルの仕事に復帰した。元彼との買い物の時にいた私のファンや、アリアさんを見て、私のことを認めてくれている人たちの存在を身近に感じた。ルリさんと付き合うにあたり、対等な関係でいるためには、昔の私から成長しなくてはならない。

 現在では、昔のファンや新規のファンも増えて、徐々に私のモデルとしての人気が出始めている。ルリさんやダイヤには敵わないが、それでもファンがいてくれるだけで感謝している。

「そもそも、真珠さんのその性格が暗いとギャップがあるとか、そういう風に言う人がおかしいです。内向的で料理や家事が好きだったら、モデルをしてはいけないなんて決まりはないし、僕としてはとても助かっています!もちろん、僕だって料理とかできるように練習しますからね!」

 ルリさんのおかげで私は少しずつだが、卑屈な自分に自信が持てるようになってきた。いまでも自分なんかが、とネガティブな気持ちになることもあるが、それでも前向きに生きていけるようになった。

 ブー、ブー。

 ルリさんと話していたら、テーブルに置かれた私のスマホがメッセージを受信した。スマホの通知画面を確認すると、アリアさんからだった。

『四人分のチケットが手に入ったので、四人の予定が空いた日に、美術館に行きませんか?』

「アリアさんからです。今度四人で美術館に行きたいそうです」

「いつもいきなり予定を入れてきますね」

「でも、四人で行くのは楽しみです。も、もちろん、ルリさんと行く二人きりでのお出かけも楽しいですけど」

「では、手始めに今からランチに出掛けますか?」

「準備するのでちょっと、待ってくださいね」

 私は外出する支度をするために席を立つ。席を立つ際に、ちらりと自分の指に目を向ける。左手の薬指にはキラキラと輝くプラチナの結婚指輪が光っている。ルリさんの手元を見ると、そこにも同じように輝く結婚指輪が光っていた。

 私とルリさんの幸せな生活はまだ始まったばかりだ。
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