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第5章 いじめの代償~席替え~
2(19)クラスを観察する女
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席替えがあった。どうやって席替えをするかの話し合いが行われた。紫苑すみれによって無理やり委員長にさせられた男子が意見を集めている。
そんな様子をぼんやりと眺めながら、わたしは紫苑すみれについて考えていた。どうしていつも、あんなに堂々としていられるのかわからない。先ほどから、席替えについての意見をさりげなく委員長に意見している。
どう考えても、親の七光りみたいなものだ。それさえなくなれば、すぐにクラスの底辺に落ちてしまうような危うい地位である。
だとしたら、この堂々とした自信に満ち溢れたような態度は、単なるバカだからゆえの能天気さから来ているのか。それとも、もっと別の何かから来ているのだろうか。ついつい、紫苑すみれの様子を観察してしまう。紫苑すみれと同じクラスになった人間は皆、彼女の行動一つ一つをよく見ることになる。次のいじめの対象にならないための自己防衛機能が働くのだ。
わたしもたぶん、その防衛機能が働いているのだろうか。とりあえず、観察していて気付いたことがある。彼女は実は頭がいい。テストの点数で満点を取ることこそないが、毎回、そこそこの点数を取っている。
ただし、わたしは知っていた。紫苑すみれは、本当は満点をとれるほどの実力があるのだと知っている。
そんなことを考えているうちにどうやら席替えの方法が決まったようだ。どうやら、くじ引きで決めてそれから、不満があったらその都度変えていくようだ。
先生がくじびきのための箱を用意して、数字を書いた紙を箱に入れていく。一応、男女の偏りがないようにするために、男子は男子、女子は女子でそれぞれ別の箱からくじを引くことになった。
わたしの席は、無難に黒板の真正面の列の前から4番目だった。べつに視力が悪いわけではないので、特に問題はなかった。
さて、あたりを見回すと、席替えはいろいろ問題が起こりそうな結果となっていた。まず、わたしのクラスの人数は33人であり、奇数である。そのために、一人があぶれる席となるのは仕方のないことである。
そのあぶれた席になったのが、転校生だった。そういえば、紫苑すみれは現在、転校生に執着している。
絶賛、クラス中が転校生を無視する週間に突入している。その中で唯一、彼女に話しかけているのが、紫苑すみれである。彼女は転校生にやさしく、あくまで気を使った感じを装って、転校生に声をかける。
「水無月さんは、その席で大丈夫かしら。転校してきたばかりなのに、その席では可哀想だわ。私が変わってあげようかしら。でも、私も一人の席は仲間外れの感じがして嫌だけれど。」
そして、あたかも名案とばかりに手を打って話を続ける。
「じゃあ、こうしましょう。この席に学校に来ていない彼を当てましょう。だって、学校に来ていないということは、学校に来る気がないということだもの、どの席になっても文句は言えないでしょう。」
こうして、席は決まった。紫苑すみれは窓際の一番後ろ、その前の席に転校生を配置した。紫苑すみれ以外に席替えに文句をいうクラスメイトはいなかった。もし、文句があっても、言わないと思うが。
「でも、くじ引きで決まったのだから、私だけが席を変えてもらうわけにはいかないと思う……。」
転校生は、最初、自分だけが席を変えてもらうことに遠慮していた。それはそうだろう。自分一人だけ席を変えてもらうのに遠慮するのは当たり前だ。視力や身長などの問題で、授業に支障が出るということなら、自分一人でも変わってもらうことを頼むかもしれない。しかし、今回の理由はそうではなかった。
「いいのよ。だって、水無月さんは転校生なのだから。まだ、クラスに来て、間もないんだから、一人で寂しい思いをするのはダメ。みんなも、そう思うでしょう。」
しかし、そんなことで食い下がる紫苑すみれではなかった。転校生本人は、席の変更を拒否しているのに、そんなことはお構いなしである。クラスに自分の意見の同調を求め始めた。
「そ、そうね。確かに転校生なのに、一人の席にあたったのは、かわいそう。」
「不登校の彼は、新しい学年になってから一度も学校に来ていないし、これからも来ないかもしれないし、いいと思う。」
クラスメイトは、紫苑すみれに賛同する。小学生だって、自分を守る術を知っている。ここで、紫苑すみれに反抗すればどうなるのか知らないクラスメイトはいない。
「じゃあ、それで決まりね。先生も構わないでしょう。」
最後に紫苑すみれは担任に席の変更の許可を得る。ただの建て前であって、実際にはすでに彼女の中では決定事項なのである。それに反論する担任ではない。
「そうだね。他に席の変更を希望する子は……。いないようだね。では、これで、席は決定だ。各自、机を新しい席に移動させてください。」
こうして、席替えは終了した。幸い、わたしの席は、紫苑すみれからは離れている。彼女から離れていればいじめられないという確証はないが、それでも、ある程度余裕をもって、クラスの状況を見ることができる。
わたしは、意外にもクラスを観察するのが、好きみたいである。
そんな様子をぼんやりと眺めながら、わたしは紫苑すみれについて考えていた。どうしていつも、あんなに堂々としていられるのかわからない。先ほどから、席替えについての意見をさりげなく委員長に意見している。
どう考えても、親の七光りみたいなものだ。それさえなくなれば、すぐにクラスの底辺に落ちてしまうような危うい地位である。
だとしたら、この堂々とした自信に満ち溢れたような態度は、単なるバカだからゆえの能天気さから来ているのか。それとも、もっと別の何かから来ているのだろうか。ついつい、紫苑すみれの様子を観察してしまう。紫苑すみれと同じクラスになった人間は皆、彼女の行動一つ一つをよく見ることになる。次のいじめの対象にならないための自己防衛機能が働くのだ。
わたしもたぶん、その防衛機能が働いているのだろうか。とりあえず、観察していて気付いたことがある。彼女は実は頭がいい。テストの点数で満点を取ることこそないが、毎回、そこそこの点数を取っている。
ただし、わたしは知っていた。紫苑すみれは、本当は満点をとれるほどの実力があるのだと知っている。
そんなことを考えているうちにどうやら席替えの方法が決まったようだ。どうやら、くじ引きで決めてそれから、不満があったらその都度変えていくようだ。
先生がくじびきのための箱を用意して、数字を書いた紙を箱に入れていく。一応、男女の偏りがないようにするために、男子は男子、女子は女子でそれぞれ別の箱からくじを引くことになった。
わたしの席は、無難に黒板の真正面の列の前から4番目だった。べつに視力が悪いわけではないので、特に問題はなかった。
さて、あたりを見回すと、席替えはいろいろ問題が起こりそうな結果となっていた。まず、わたしのクラスの人数は33人であり、奇数である。そのために、一人があぶれる席となるのは仕方のないことである。
そのあぶれた席になったのが、転校生だった。そういえば、紫苑すみれは現在、転校生に執着している。
絶賛、クラス中が転校生を無視する週間に突入している。その中で唯一、彼女に話しかけているのが、紫苑すみれである。彼女は転校生にやさしく、あくまで気を使った感じを装って、転校生に声をかける。
「水無月さんは、その席で大丈夫かしら。転校してきたばかりなのに、その席では可哀想だわ。私が変わってあげようかしら。でも、私も一人の席は仲間外れの感じがして嫌だけれど。」
そして、あたかも名案とばかりに手を打って話を続ける。
「じゃあ、こうしましょう。この席に学校に来ていない彼を当てましょう。だって、学校に来ていないということは、学校に来る気がないということだもの、どの席になっても文句は言えないでしょう。」
こうして、席は決まった。紫苑すみれは窓際の一番後ろ、その前の席に転校生を配置した。紫苑すみれ以外に席替えに文句をいうクラスメイトはいなかった。もし、文句があっても、言わないと思うが。
「でも、くじ引きで決まったのだから、私だけが席を変えてもらうわけにはいかないと思う……。」
転校生は、最初、自分だけが席を変えてもらうことに遠慮していた。それはそうだろう。自分一人だけ席を変えてもらうのに遠慮するのは当たり前だ。視力や身長などの問題で、授業に支障が出るということなら、自分一人でも変わってもらうことを頼むかもしれない。しかし、今回の理由はそうではなかった。
「いいのよ。だって、水無月さんは転校生なのだから。まだ、クラスに来て、間もないんだから、一人で寂しい思いをするのはダメ。みんなも、そう思うでしょう。」
しかし、そんなことで食い下がる紫苑すみれではなかった。転校生本人は、席の変更を拒否しているのに、そんなことはお構いなしである。クラスに自分の意見の同調を求め始めた。
「そ、そうね。確かに転校生なのに、一人の席にあたったのは、かわいそう。」
「不登校の彼は、新しい学年になってから一度も学校に来ていないし、これからも来ないかもしれないし、いいと思う。」
クラスメイトは、紫苑すみれに賛同する。小学生だって、自分を守る術を知っている。ここで、紫苑すみれに反抗すればどうなるのか知らないクラスメイトはいない。
「じゃあ、それで決まりね。先生も構わないでしょう。」
最後に紫苑すみれは担任に席の変更の許可を得る。ただの建て前であって、実際にはすでに彼女の中では決定事項なのである。それに反論する担任ではない。
「そうだね。他に席の変更を希望する子は……。いないようだね。では、これで、席は決定だ。各自、机を新しい席に移動させてください。」
こうして、席替えは終了した。幸い、わたしの席は、紫苑すみれからは離れている。彼女から離れていればいじめられないという確証はないが、それでも、ある程度余裕をもって、クラスの状況を見ることができる。
わたしは、意外にもクラスを観察するのが、好きみたいである。
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