年を取らない子供たち~EC(エターナルチルドレン)~

折原さゆみ

文字の大きさ
26 / 28
第5章 いじめの代償~席替え~

3(15)不登校Aの友達

しおりを挟む
 先日、席替えがあった。5年生になってから初めての席替えだ。席替えに良い思い出がないぼくは、あまり楽しみではなかった。席替えのせいで、ぼくのともだちは、学校に来れなくなってしまったから。


 ぼくのともだちは、明るい方ではなかったけれど、暗い性格でもなかった。アニメやマンガが他の人より好きというだけで、それ以外はふつうの人間だった。だから、ぼくは気づくことができなかった。ふつうの人間を彼女は狙うことはあまりないからだ。彼女が標的に定めるのは、クラスの中でも弱い存在、いってみれば、スクールカースト底辺の奴らからつぶしていくのだ。

 ぼくのともだちは、クラス内での地位はそこまで低くはなかった。勉強も運動もそこそこできるし、顔も不細工ではなかった。ただ、人より少しだけくらい性格なだけだ。いじめられる理由がわからない。それでも、実際にぼくのともだちは、彼女につぶされた。だからこそ、今、彼は学校に来ていない。

 いじめのきっかけとなったのは、おそらく、席替えだと思う。その時も、席替えはくじ引きで行われた。たまたま、運悪く、紫苑すみれの隣の席になったのが、ぼくのともだちだった。ぼくのともだちも紫苑すみれのうわさは耳にしていた。だからこそ、細心の注意を払っていたはずだった。紫苑すみれの視界を遮らないよう、怒らせないよう、隣の席であるにも関わらず、まるで隣に誰もいないように存在を消して過ごしていた。


 それなのに、彼は、彼女の標的にされてしまった。彼には、何の落ち度がなかったのに。





「どうして、ぼくのともだちをここまで追いつめたんだ。何もしていないだろう。あんたに迷惑もかけていないし、クラスにも迷惑をかけていない。クラスの隅でおとなしく過ごしていただけだ。」

「だって、アニメやマンガにはまる人なんて、クズしかいないじゃない。だから、当然のことをしたまで。それとも、あなたも、お友達と一緒に家に引きこもりたいの。」

 ぼくのともだちがクラス中から無視をされ、物を隠され、机に落書きをされ、とうとう精神的に追い詰められて、学校に来れなくなって、ぼくはようやく行動を起こした。震える足をたたき、紫苑すみれに直接怒鳴り込みに行った。そこまで何もしなかったことには理由があった。

 彼女、紫苑すみれのうわさを耳にしていたからだ。彼女に逆らうと、ひどい目にあう。最悪の場合、自分だけでなく、自分の大切な人、家族や親せきなどにも被害が及ぶ。そんなことを耳にしていたので、実際にともだちがいじめられているのを見ても、動けなかった。ただ、見ているだけしかできなかった。

「ともだちを見捨てることができるほど、お前は薄情なのか。」
 ぼくの心の中のともだちを思う心は、いくども、ともだちを救えと訴えていた。しかし、同時にこうも思っていた。

「自分を守るためなら、やむを得ない。人間、自分が一番大切だ。」

 最終的にぼくは、紫苑すみれに食って掛かることにした。しかし、僕の決死の覚悟も、彼女はどこ吹く風だった。おどろいたことに、ぼくの反抗に目をつむるとまで言い出した。


「彼は、クズだったけど、その友達もクズと言い切るのにはまだ早い。それに、同じような系統をいじめ続けるのも飽きてしまうし。」

『あなたのことはいじめるのをやめておく。ありがたくおもうことね。』

 ぼくの耳もとでささやく彼女の声は、ひどく甘く気持ちの悪い声だった。あまりの気持ち悪さに、ぼくは、その場にしゃがみ込み、吐き気を押さえるのが精いっぱいだった。そんなぼくを彼女は見ることもしないで、その場を去っていく。


 それ以降、ぼくは、席替えが苦手となった。最悪なことに、今年も紫苑すみれと同じクラスになってしまった。

 願わくば、紫苑すみれと席がなるべく離れていますように。そして、今の標的である転校生ができる限り、標的で居続けてくれますようにと願わずにはいられない、醜い心を持ったぼくだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...