41 / 69
28.発出
しおりを挟む
[39]
別にどこも悪くはない。
おれは元気なんだ。
夜、ベッドに横たわる時にはそんな風に思っているのに――
翌朝目覚めてみれば、ひどく身体がダルい。
たぶん、よく眠れていないのだろう。
いろんな夢を見ている気がする。朝になれば、どれもモヤの向こうに思い出せないような夢を。
だからほとんど、学校に行けてない。遅刻して、昼前にやっと顔を出せるくらいで。
熱っぽかったり眩暈がしたりで、予定の検診以外にも、病院に行く回数が増えていた。
ダルさは「薬」のせいもあるらしい。
「少しまとめて、学校を休んでみる?」なんて。
医者も、そんな提案を口にするようになった。
冗談だろ。留年なんてゴメンだ――
そんなおれの気持ちを見透かすように、
「一、二年の学年のズレなんて、長い人生ではそう大したことじゃないのよ? ほら、留学なんかすれば普通のコトだしね」なんて。
看護師さんも囁いてきたりしたりしてさ。
そうやって部屋にいれば、ときどき酷くイライラしたりして。
母さんが買い物に出た隙に、おれの指先は。
――そうだよ。
このところペニスは、いつだって緩く勃起していていて。
自慰が止まらない。
その場所が痛みを覚えるほどの頻度で、おれはマスターベーションを繰り返していた。
それでもなぜか、心底、満足できない気がするんだ。
ジンジンと疼いて仕方がないのが、一体「どこ」なのか。
指先は疲れ果てて、刺激に擦れ過ぎたペニスも、それ以上弄ることもできなくなって。
おれは床のクッションの上で腰を蠢かせる。
当たっているのは、陰嚢の奥。
ほとんど尾てい骨に近い部分だった。
なぜだか、ジワリとこみ上げてくる熱っぽさが後を引いて、腰の動きが止まらなくなる。
「あっ、あ……あ、っ……」
短い声が、くちびるから漏れ出した。
止められぬままに、ゴリゴリと擦りつけている場所が肛門であることに、おれももう、気づいていて。なのに――
ドロリと。
「その部分」から、熱いものが溢れ出すのを感じた。
排泄物を失禁でもしたんじゃないかと、焦る気持ちに耳たぶが熱くなる。
でも、そんな匂いはまったくなくて。
ただ、やたらと甘ったるい何かが、空気中に充満していった。
蠢かす腰のリズムに合わせて、ニチャリ、ニチャリと音が響く。
腰骨を伝うように、どうしようもないキモチ良さがせり上がってきた。
喘ぎ声が止まらない。
腰を揺らしながら、ペニスに触れた。
そしてすぐに指を離し、そのまま腹の上を伝って、胸の……乳首に触ってしまう。
頭の中に一瞬、前にみたセックス動画の女の姿が浮かんだ。
アクメ顔で男に乳首を舐られる横顔が。
股間が痺れる。
腹の奥がひたすらに熱くて、もどかしくて。
玄関のカギが開く音が、遠く聞こえた。
ドアの開け閉め。「ただいま」と、独り言めいた母親の声も。
でもそれでも。
頭の中は真っ白に焼き切れて、身体の自由がきかなくて。
荒い呼吸、アンアンと止まらない嬌声。
階段を上がってくる足音。
こないで、こないで。
ノック。
――かなちゃん? どうかした? かなちゃん。
そして、ドアの外で息を飲む気配。
そこに母さんがいるって、分かってる。
わかってるのに、おれは。
グチグチと尻を濡らしながら、床オナニーを止められずに、啜り泣きのようなイキ声を上げ続けていて。
立ち込めてむせかえるオメガ臭の中で、おれは。
羞恥とやるせなさとミジメさと。
あらゆる自己嫌悪を噛みしめて。
ああ、いっそ、もう死んでしまいたい――と。
生まれて初めて、そんな希死念慮と。
そして、空怖ろしい性的快感に、思考を乗っ取られていた。
別にどこも悪くはない。
おれは元気なんだ。
夜、ベッドに横たわる時にはそんな風に思っているのに――
翌朝目覚めてみれば、ひどく身体がダルい。
たぶん、よく眠れていないのだろう。
いろんな夢を見ている気がする。朝になれば、どれもモヤの向こうに思い出せないような夢を。
だからほとんど、学校に行けてない。遅刻して、昼前にやっと顔を出せるくらいで。
熱っぽかったり眩暈がしたりで、予定の検診以外にも、病院に行く回数が増えていた。
ダルさは「薬」のせいもあるらしい。
「少しまとめて、学校を休んでみる?」なんて。
医者も、そんな提案を口にするようになった。
冗談だろ。留年なんてゴメンだ――
そんなおれの気持ちを見透かすように、
「一、二年の学年のズレなんて、長い人生ではそう大したことじゃないのよ? ほら、留学なんかすれば普通のコトだしね」なんて。
看護師さんも囁いてきたりしたりしてさ。
そうやって部屋にいれば、ときどき酷くイライラしたりして。
母さんが買い物に出た隙に、おれの指先は。
――そうだよ。
このところペニスは、いつだって緩く勃起していていて。
自慰が止まらない。
その場所が痛みを覚えるほどの頻度で、おれはマスターベーションを繰り返していた。
それでもなぜか、心底、満足できない気がするんだ。
ジンジンと疼いて仕方がないのが、一体「どこ」なのか。
指先は疲れ果てて、刺激に擦れ過ぎたペニスも、それ以上弄ることもできなくなって。
おれは床のクッションの上で腰を蠢かせる。
当たっているのは、陰嚢の奥。
ほとんど尾てい骨に近い部分だった。
なぜだか、ジワリとこみ上げてくる熱っぽさが後を引いて、腰の動きが止まらなくなる。
「あっ、あ……あ、っ……」
短い声が、くちびるから漏れ出した。
止められぬままに、ゴリゴリと擦りつけている場所が肛門であることに、おれももう、気づいていて。なのに――
ドロリと。
「その部分」から、熱いものが溢れ出すのを感じた。
排泄物を失禁でもしたんじゃないかと、焦る気持ちに耳たぶが熱くなる。
でも、そんな匂いはまったくなくて。
ただ、やたらと甘ったるい何かが、空気中に充満していった。
蠢かす腰のリズムに合わせて、ニチャリ、ニチャリと音が響く。
腰骨を伝うように、どうしようもないキモチ良さがせり上がってきた。
喘ぎ声が止まらない。
腰を揺らしながら、ペニスに触れた。
そしてすぐに指を離し、そのまま腹の上を伝って、胸の……乳首に触ってしまう。
頭の中に一瞬、前にみたセックス動画の女の姿が浮かんだ。
アクメ顔で男に乳首を舐られる横顔が。
股間が痺れる。
腹の奥がひたすらに熱くて、もどかしくて。
玄関のカギが開く音が、遠く聞こえた。
ドアの開け閉め。「ただいま」と、独り言めいた母親の声も。
でもそれでも。
頭の中は真っ白に焼き切れて、身体の自由がきかなくて。
荒い呼吸、アンアンと止まらない嬌声。
階段を上がってくる足音。
こないで、こないで。
ノック。
――かなちゃん? どうかした? かなちゃん。
そして、ドアの外で息を飲む気配。
そこに母さんがいるって、分かってる。
わかってるのに、おれは。
グチグチと尻を濡らしながら、床オナニーを止められずに、啜り泣きのようなイキ声を上げ続けていて。
立ち込めてむせかえるオメガ臭の中で、おれは。
羞恥とやるせなさとミジメさと。
あらゆる自己嫌悪を噛みしめて。
ああ、いっそ、もう死んでしまいたい――と。
生まれて初めて、そんな希死念慮と。
そして、空怖ろしい性的快感に、思考を乗っ取られていた。
10
あなたにおすすめの小説
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
八月は僕のつがい
やなぎ怜
BL
冬生まれの雪宗(ゆきむね)は、だからかは定かではないが、夏に弱い。そして夏の月を冠する八月(はつき)にも、弱かった。αである八月の相手は愛らしい彼の従弟たるΩだろうと思いながら、平凡なβの雪宗は八月との関係を続けていた。八月が切り出すまでは、このぬるま湯につかったような関係を終わらせてやらない。そう思っていた雪宗だったが……。
※オメガバース。性描写は薄く、主人公は面倒くさい性格です。
交際0日婚の溺愛事情
江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。
だから緩やかに終わりを探して生きていた。
──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。
誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。
そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。
■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。
■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
拾ってくれたスパダリ(?)が優しすぎて怖い
澪尽
BL
生来、内気で自分に自身を持てない性格の朝哉は、入学当初の騒動によりいっそう内に籠るようになっていた。
家族は彼とは正反対の明るい人々ばかりで何となく居所がなく、その事件に関しても理解を得られない。
そんな彼を憐れみ、ほとんど単なる同居人か家政夫同然の名ばかり≪彼氏≫として扱ってくれていた女性も、愛想が尽きたのか朝哉がバイトをクビになったのを機に唐突に家を追い出されてしまう。
途方にくれた朝哉が最寄りのコンビニに向かうと、そこには憧れの男性の姿が。
どういう偶然なのか、会うたびに朝哉と同じような格好をしている彼。
名前も職業も何も知らないけれど、週に二度は出くわしてしまうため、なんとなく目で追うようになって半年。
ひょんなことから彼のもとで暮らすこととなるが、それと同時に、あの≪騒動≫の影がふたたび日常を蝕むようになり…?
包容力高めの美人お兄さんの手で気弱&卑屈な大学生くんが前向きになっていく話。
もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる