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31.You Gotta Be――(2)
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[44]
「……『ふつう』に、暮らそうぜ」
悠一が話し出す。
「俺は別に、ずっと……奏と普通に、一緒に帰ってワッフル喰ったりするつもりだし」
悠一を見上げていた奏が、ふと、やるせないように呆れたように、強ばった頬を小さく緩めた。
「…奏のコト、俺はなによりまず友達だと思ってる。それはその……友達以上の気持ち…に、なっちゃってるかもっていうのはさ、ウソじゃないけど」
――そうなんだ、やっぱり「俺は」そう思ってる。
「けど、オマエがそういうの迷惑だって思ってるんだったら、仕方ねぇ…っていうか。俺は俺でまあ、勝手に奏のコト、『好きだな』って思ってればいいし。あ…別に、ヘンなコトとかもしない」
ゆういち……と。奏がやわりと割って入る。
「『しない』で『いられなくする』のが……おれとかなんだよ、『オメガ』なんだよ」
「いや、しないし」
低く、だがキッパリと悠一が言い返せば、
「ばか!」と、奏が声を張った。
「悠一は、なにも分かってない!!」
「かなで」
「なんだよ? ベータのクセに、分かったようなコト言うな! おれ…っおれは…」
そこで奏は、ハタと自分の発言に恥じ入って、口をつぐむ。
悠一は、ただ黙って奏を見下ろしている。
「分かんないんだ、おれだって、どう…なるのか、どうしたらいいのか、ぜんぜん、分かんなくて」
そして奏は――
「だから、こわい」と。
そう噛みしめてうなだれた。
悠一が、ブランコの鎖を押さえていた両手を下へと滑らせる。
そして、冷え切って白い奏の指先ごと、強く握りしめた。
しばらくの間、冷たい奏の手を温めるように、熱を移すように佇んで、そして――
悠一が口を開く。
「俺が……助けるから。なんかあっても、絶対に。だから、心配すんな。奏」
奏は無言のまま、奥歯を食いしばっていた。
「だからさ。また学校来て、描けよ。好きなんだろ? 絵」
水音がした。
奏のダッフルコートの腿に、涙の雫で小さくいくつものシミができる。
サラサラと微風を孕む奏の髪。
その耳朶が、突然、薔薇色に染まっていく。
「ゆ、…いち。ダメ、はなれて」
嗚咽を飲み込んだかすれ声で、奏が言う。
グワリ、込み上げて溢れる。
なにか。
甘い、金木犀の甘すぎる匂いが、冷えた空気の中に広がって――
「クスリ、つらくて、飲めなくて……うまく効かないときも、多くて」
奏が言葉を絞り出した。
悠一はくちびるを噛んで、きつく眉根を寄せる。
鼻腔を刺激し、頭の奥を痺れさせる――
香り。
オメガの発情の臭い。
生理的に反射的に、反応を示してしまう下腹部を気づかれたくなくて、奏に知られたくなくて。
悠一は思わず、膝を曲げ、軽く足を引いた。
奏が、俯いたまま横を向いて言う。
「ゆういち、お願い、おれから離れて、はやく…遠くに、いって」
そして、奏は顔を上げて悠一を見すえ、今一度告げる。
「オネガイだから、ゆういち……」と。
奏の手から、悠一の長い指が解かれる。
ブランコの鎖が、ひとつ大きく揺れた。
ゆっくりと、悠一の両腕が下ろされて。
そして――
その腕はそのまま、鎖ごと、奏を抱き締める。
「……『ふつう』に、暮らそうぜ」
悠一が話し出す。
「俺は別に、ずっと……奏と普通に、一緒に帰ってワッフル喰ったりするつもりだし」
悠一を見上げていた奏が、ふと、やるせないように呆れたように、強ばった頬を小さく緩めた。
「…奏のコト、俺はなによりまず友達だと思ってる。それはその……友達以上の気持ち…に、なっちゃってるかもっていうのはさ、ウソじゃないけど」
――そうなんだ、やっぱり「俺は」そう思ってる。
「けど、オマエがそういうの迷惑だって思ってるんだったら、仕方ねぇ…っていうか。俺は俺でまあ、勝手に奏のコト、『好きだな』って思ってればいいし。あ…別に、ヘンなコトとかもしない」
ゆういち……と。奏がやわりと割って入る。
「『しない』で『いられなくする』のが……おれとかなんだよ、『オメガ』なんだよ」
「いや、しないし」
低く、だがキッパリと悠一が言い返せば、
「ばか!」と、奏が声を張った。
「悠一は、なにも分かってない!!」
「かなで」
「なんだよ? ベータのクセに、分かったようなコト言うな! おれ…っおれは…」
そこで奏は、ハタと自分の発言に恥じ入って、口をつぐむ。
悠一は、ただ黙って奏を見下ろしている。
「分かんないんだ、おれだって、どう…なるのか、どうしたらいいのか、ぜんぜん、分かんなくて」
そして奏は――
「だから、こわい」と。
そう噛みしめてうなだれた。
悠一が、ブランコの鎖を押さえていた両手を下へと滑らせる。
そして、冷え切って白い奏の指先ごと、強く握りしめた。
しばらくの間、冷たい奏の手を温めるように、熱を移すように佇んで、そして――
悠一が口を開く。
「俺が……助けるから。なんかあっても、絶対に。だから、心配すんな。奏」
奏は無言のまま、奥歯を食いしばっていた。
「だからさ。また学校来て、描けよ。好きなんだろ? 絵」
水音がした。
奏のダッフルコートの腿に、涙の雫で小さくいくつものシミができる。
サラサラと微風を孕む奏の髪。
その耳朶が、突然、薔薇色に染まっていく。
「ゆ、…いち。ダメ、はなれて」
嗚咽を飲み込んだかすれ声で、奏が言う。
グワリ、込み上げて溢れる。
なにか。
甘い、金木犀の甘すぎる匂いが、冷えた空気の中に広がって――
「クスリ、つらくて、飲めなくて……うまく効かないときも、多くて」
奏が言葉を絞り出した。
悠一はくちびるを噛んで、きつく眉根を寄せる。
鼻腔を刺激し、頭の奥を痺れさせる――
香り。
オメガの発情の臭い。
生理的に反射的に、反応を示してしまう下腹部を気づかれたくなくて、奏に知られたくなくて。
悠一は思わず、膝を曲げ、軽く足を引いた。
奏が、俯いたまま横を向いて言う。
「ゆういち、お願い、おれから離れて、はやく…遠くに、いって」
そして、奏は顔を上げて悠一を見すえ、今一度告げる。
「オネガイだから、ゆういち……」と。
奏の手から、悠一の長い指が解かれる。
ブランコの鎖が、ひとつ大きく揺れた。
ゆっくりと、悠一の両腕が下ろされて。
そして――
その腕はそのまま、鎖ごと、奏を抱き締める。
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