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33.告解
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玄関を開けて、たたきに入れば、家の空気はシンと沈殿していた。
母親が出かけたのは、きっとかなり前のことなのだろうと察し取れるような、そんな静寂の色。
靴を踏み脱ぐ。
脱ぎ散らかして揃えぬまま、汗で汚れたトレーニングウェアもショルダーバッグから取り出さぬまま。
悠一は階段を駆け上がった。
二階の自室に入って、後ろ手にドアを閉める。
和風の古い家。
扉も壁も、そう厚くはない部屋。
ドサリと肩からバッグを滑り落して、上着も制服も脱がずに、悠一はベッドに倒れ込む。
安物のベッドフレームが、ギシリときしんだ。
心拍数が上がっていく。
息が苦しい。
固く目を閉じる。
移り香が――奏の「匂い」が、制服から一気に立ち上ってくる気がした。
それは、あまいあまいあまい。
あますぎて。
悠一のスラックスと下着の内側が、急速に熱く張り詰める。
すぐにでも、手で、指筒で摺り上げて。
――たい、したい、射精したい。
快楽をただ貪りつくしたい。
それしか考えられなくて。
でも。
――ダメだ。
ダメだ、ダメだ……イヤだ、なんで。
あんなに苦しんでる奏を目の当たりにして。
なんで俺は、こんなイヤらしいことしか考えられないんだ。
「なにもしない」って、そう約束した。
普通に暮らそうって、買い食いしてダベって。
学校に来て絵を描けって、俺が誘った。
どうしたらいいのか分からない、怖いと。
冷たく震えて怯える奏を抱きしめて。
俺が助ける。
心配するなと、そう言ったのは俺なんだ。
だから。
触らない。絶対。奏には触れない、汚さない。
でも――
指は勝手に動いて、スラックスのファスナーを下ろしそうになって、
だから、悠一は懸命に両手でベッドのパイプを掴む。
強く強く握りしめて、爪が皮膚に食い込むほどに。
うっ血した皮が裂けて、血が滲み出すほどに。必死に。
ただ、強くつよく。
そして身悶えて、飲み下す唾液。
なのに。
はずみで触れた掛布団の刺激に、限界に達していた陰茎が弾けるように射精した。
口の内側をきつく噛んで、押し殺す嬌声。
それは甘ったるい震えとなって、鼻の奥を抜けていく。
その音の、あまりの卑猥さと、大鐘を打ち鳴らすようなエクスタシーに、悠一は、あっけなく陥落してしまう。
いやだいやだいやだ、かなでかなで――
くるしんでほしくない、きずついてほしくない。
あまい、あまいあまいあまいあまい。
吐精物をグチャグチャと掌にまみれさせ、欲望を扱いて擦る。
そんな指の動きが止まらない。
きたない、きたないきたないあまいあまいあまい
おかしくなる、おかしく……俺は、おかしく。
いやだいやだ、こんなのはいやだいやなのに。
奏を傷つけたくない、なのに。
犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい。
何度達し、幾度汚濁を吐き出したのか――
硬直と痙攣と弛緩を繰り返しつくした、全身の筋肉が限界を迎えて、悠一が乱れ切ったベッドの上で、ぐったりと瞼を閉じる。
やるせなくて情けなくて。ただひたすら、ミジメで恥ずかしくて。
グルグルと止まらない自己嫌悪で、吐き気と眩暈を覚えつつも。
悠一は――
奏の抜けるように白いうなじや、柔らかい髪の毛や、長く繊細な指先や、
睫毛やくちびるを思い返さずにはいられなくて。
それに触れたくてたまらなくなって。
くちづけたくて、自分の唾液で、奏のすべてを蹂躙したくてたまらなくなって。
そうやって啜り泣きながら、深く吸い込んだ空気は、やはり甘ったるく。
でもそれは。
今、わずかに、銀木犀の花の香のような澄んだ涼しさを取り戻しているような気がして。すこしだけ。
本当にすこしだけ、なにかが赦されたような気がしていた。
玄関を開けて、たたきに入れば、家の空気はシンと沈殿していた。
母親が出かけたのは、きっとかなり前のことなのだろうと察し取れるような、そんな静寂の色。
靴を踏み脱ぐ。
脱ぎ散らかして揃えぬまま、汗で汚れたトレーニングウェアもショルダーバッグから取り出さぬまま。
悠一は階段を駆け上がった。
二階の自室に入って、後ろ手にドアを閉める。
和風の古い家。
扉も壁も、そう厚くはない部屋。
ドサリと肩からバッグを滑り落して、上着も制服も脱がずに、悠一はベッドに倒れ込む。
安物のベッドフレームが、ギシリときしんだ。
心拍数が上がっていく。
息が苦しい。
固く目を閉じる。
移り香が――奏の「匂い」が、制服から一気に立ち上ってくる気がした。
それは、あまいあまいあまい。
あますぎて。
悠一のスラックスと下着の内側が、急速に熱く張り詰める。
すぐにでも、手で、指筒で摺り上げて。
――たい、したい、射精したい。
快楽をただ貪りつくしたい。
それしか考えられなくて。
でも。
――ダメだ。
ダメだ、ダメだ……イヤだ、なんで。
あんなに苦しんでる奏を目の当たりにして。
なんで俺は、こんなイヤらしいことしか考えられないんだ。
「なにもしない」って、そう約束した。
普通に暮らそうって、買い食いしてダベって。
学校に来て絵を描けって、俺が誘った。
どうしたらいいのか分からない、怖いと。
冷たく震えて怯える奏を抱きしめて。
俺が助ける。
心配するなと、そう言ったのは俺なんだ。
だから。
触らない。絶対。奏には触れない、汚さない。
でも――
指は勝手に動いて、スラックスのファスナーを下ろしそうになって、
だから、悠一は懸命に両手でベッドのパイプを掴む。
強く強く握りしめて、爪が皮膚に食い込むほどに。
うっ血した皮が裂けて、血が滲み出すほどに。必死に。
ただ、強くつよく。
そして身悶えて、飲み下す唾液。
なのに。
はずみで触れた掛布団の刺激に、限界に達していた陰茎が弾けるように射精した。
口の内側をきつく噛んで、押し殺す嬌声。
それは甘ったるい震えとなって、鼻の奥を抜けていく。
その音の、あまりの卑猥さと、大鐘を打ち鳴らすようなエクスタシーに、悠一は、あっけなく陥落してしまう。
いやだいやだいやだ、かなでかなで――
くるしんでほしくない、きずついてほしくない。
あまい、あまいあまいあまいあまい。
吐精物をグチャグチャと掌にまみれさせ、欲望を扱いて擦る。
そんな指の動きが止まらない。
きたない、きたないきたないあまいあまいあまい
おかしくなる、おかしく……俺は、おかしく。
いやだいやだ、こんなのはいやだいやなのに。
奏を傷つけたくない、なのに。
犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい。
何度達し、幾度汚濁を吐き出したのか――
硬直と痙攣と弛緩を繰り返しつくした、全身の筋肉が限界を迎えて、悠一が乱れ切ったベッドの上で、ぐったりと瞼を閉じる。
やるせなくて情けなくて。ただひたすら、ミジメで恥ずかしくて。
グルグルと止まらない自己嫌悪で、吐き気と眩暈を覚えつつも。
悠一は――
奏の抜けるように白いうなじや、柔らかい髪の毛や、長く繊細な指先や、
睫毛やくちびるを思い返さずにはいられなくて。
それに触れたくてたまらなくなって。
くちづけたくて、自分の唾液で、奏のすべてを蹂躙したくてたまらなくなって。
そうやって啜り泣きながら、深く吸い込んだ空気は、やはり甘ったるく。
でもそれは。
今、わずかに、銀木犀の花の香のような澄んだ涼しさを取り戻しているような気がして。すこしだけ。
本当にすこしだけ、なにかが赦されたような気がしていた。
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