Kiss

hosimure

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甘々なキス・13

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あたしには幼馴染の男がいる。

出来が良くて、格好良くて、モテる。

…けど、あまりあたしはこの幼馴染が好きではない。

同じ歳で、しっかりしすぎて、あたしの面倒まで見てくれる。

でもいくら何でも、20歳を越えたら、ちょっと変わるもんじゃないだろうか?

などと思いながら、あたしは食器を洗っている幼馴染に声をかける。

「…ねぇ、何か甘い物食べたい」

「今、夕飯を食べたばかりだろう? それにデザートにコーヒーゼリーを食べたし」

…そう。つい30分ほど前まで、あたしはコイツと夕飯を食べていた。

コイツは手料理が上手で、今日もクリームパスタとフルーツサラダ、コーヒーゼリーまで作った。

美味しく頂いたけれど…。

「コーヒーゼリーってあんまり甘くないもん。生クリーム余っているなら、それ使ってなんか作ってよ」

「ったく…。太ったって知らないぞ?」

そう言いつつ、冷蔵庫を見始めるから、作る気満々だ…。

家が隣同士ということもあり、小さな頃からコイツとは一緒だった。

幼稚園・小学校・中学校・高校に大学まできたら、流石に一緒にいることに飽きてくるんじゃないだろうか?

コイツは精神的に成長が早く、いっつもあたしは面倒を見てもらっていた。

でも流石に中学生ぐらいではそういうのもうっとおしくなって、離れようとした。

…でも長年、コイツに頼りっきりの生活を送ってきたせいか、なかなか上手くいかず、結局今までズルズルと…。

大学に入ってからは、マンションに一人暮らしするようになった。

コイツの親戚が、大学近くに結構立派なマンションを持っていたので、紹介で住むことになった―までは良かった。

けれどもれなくコイツまで、あたしの隣に引っ越してきたのは、どういうことだろう?

まあ同じ大学に通っているから、不思議ではない。

…問題は、何故毎日あたしの部屋に来ては、あたしの面倒を見ているか、だ。

家事をしてくれるのはもちろんのこと、私生活のことでも面倒を見てくれる。

不思議に思いつつも、受け入れているあたしもあたしか…。

「ほら、できたぞ」

考え事をしている間に、注文の品はできた。

「フルーツ入りのクレープ。お前、好きだろう?」

「うん、ありがと」

ナイフとフォークを使い、切り分けていると、アイツは紅茶を淹れてくれる。

何と言うか、本当に甲斐甲斐しい。

そう思いながらも、美味しいクレープと紅茶を食べて、満足。

アイツは食器を持って、流し場へ向かう。

なんのかんのと言いながらも、あたしのワガママは全部聞いてくれる。

だから昔から、周囲には恋人扱いされてきた。

でも…そういうのは一切なかったりする。

けれどあえて否定しなかったのは、そう言うことで面倒な恋愛事を避けたかったから。

恋愛なんてめんどくさい。

それだったら、コイツに面倒を見てもらう生活を送る方が楽。

出来がよすぎることに頭にきた時もあったけど、今はただ便利としか思えない。

…でも流石に、何時までもこういうことは続けていられない。

もう二十歳。

そろそろお互いに本当に一緒にいたい相手を見つけたり、自立したほうがいいだろう。

…まあコイツはとっくに自立しているけど。

あたしは立ち上がり、アイツの背後に立つ。

「ん? どうかしたか?」

食器を洗っている最中なので、顔だけこちらを向く。

あたしは黙ってその背中に抱き着いた。

「ん~…。ちょっと甘えたくなった」

「そうか。もう少しで洗い物が終わるから、待っててくれ」

「うん」

けれどあたしは離れない。

ぎゅうっとしがみついたまま。

アイツは拒まない。

今まで一度たって、あたしのことを拒んだり、邪険にしたことはない。

それが分かっているから、こうやって甘えられる。

恋愛対象ではないのに、こうやるのって卑怯かな?

そんなことをぼんやり思っている間に、洗い物は終了。

「エプロン外すから、ちょっと離れて」

「あっ、うん」

あたしが離れると、アイツはエプロンを脱いだ。

そして改めてあたしと真正面から向き合う。

「ここが良い? それとも移動する?」

「ここで良い」

そう言って今度は正面から抱き着く。

アイツはちゃんと抱きとめて、優しくあたしの頭や背中を撫でてくれる。

…昔は同じくらいの身長だったのに。

いつの間にかコイツは『男』に、あたしは『女』になってしまった。

いつまでも同じではいられないことは分かっていても、なかなか受け入れられないんだから、あたしってガキなのかもしれない。

顔だけ上げて、じっとアイツの顔を見つめる。

すると理解したように笑みを浮かべ、キスしてくれる。

「んっ…」

手であたしの顎を軽く持ち上げるようにして、キスしてくるんだから、ちょっとムカつく。

だから両腕をアイツの首に回して、あたしの方に引き寄せる。

「ふっ…。どうしたの? 今日はやたらと積極的だね」

口ではそう言いながらも、顔は喜んでいる。

「…ねぇ、前から一度聞きたかったんだけど」

唇に息がかかるように、わざとしゃべる。

「なに?」

「なぁんであたしの面倒を見ているのよ? 恋人として求めていないのに、どんな魂胆なの?」

そう、ハッキリとコイツから告白されたことはない。

けれどあたしが『抱き締めてほしい』と言えば抱き締めてくれるし、『キスしてほしい』と言ったらキスしてくれる。

でもコイツからは、一度たりとも求められたことはない。

いつだって、あたしの方から言っている。

「魂胆なんて人聞きが悪い。ただ俺は、お前が俺なしでは生きられないようにしただけなのに」

…何か今、とてつもなく物騒な言葉を聞いた気がする。

「…はい?」

「だから、もうお前は俺なしでは生きられないだろう? 今までたくさん面倒をみてきて甘やかしてきたのは、そういう下心があったから」

爽やかな笑みを浮かべながら言っても、その意味の黒さは隠せない。

それに魂胆も下心も同じような意味…って、ツッコミどころはそこじゃない!

「あっあたしがアンタから離れられなくして、どうしたいのよ!」

そう、それが問題。

確かに今までの生活に居心地の良さを感じていたのは事実だけど、あたしだってやろうと思えば一人でやれる。

「うん。だから俺から一生離れられなくしたいだけ」

そう言ってアイツの方からキスしてくる。

…え~っと、もしかして、いや、もしかしなくても。

「…今のってプロポーズ?」

「ああ、そうかも」

「……じゃあ、あたしのことが好きなの?」

「それは…考えたことがなかったな」

「んなっ!?」

真面目な顔で否定しやがった!

「だって今まで、この生活が当たり前だったからな。当たり前過ぎて、変わることが想像できない。…と言うより、したくなかったから」

「…じゃああたしのことは好きじゃないの?」

「いや、好きだよ? ただ今までちゃんと考えていなかっただけ」

「何それ…」

思わず不貞腐れるあたしの頭を、アイツは優しく撫でる。

「俺にとっては、お前の面倒を見る生活を守りたいって言うか、ずっと続けていきたいと思っているんだ。だから結婚して、それが叶うなら良いって思っている」

「そこに恋愛感情はないわけ?」

「まだちゃんと考えていなかっただけだって。お前だってそうだろう?」

「うっ…!」

確かに恋愛云々では真面目に考えたことはなかった。

…人として、は多少あるけど…。

「今まで当たり前過ぎたからな、自覚していなかっただけだ。多分、俺はお前のことが好きなんだ。だからずっと面倒を見ていたいと思う」

普通は逆でしょうに…。

好きだと自覚したからこそ、一生を共に過ごしたいと考えるはずだ。

でも…この生活がずっと続くのは、悪くない。

…そう思ってしまうんだから、とっくにコイツの思惑にはまってしまっているんだろう。

「…じゃあ、今まで以上にあたしを甘やかしてよ?」

「もちろん」

そしてどちらかともなく、キスをする。

…うん。こういう生活、ずっと続けていきたいな。
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