携帯彼氏の災難!?【マカシリーズ・6】

hosimure

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語り合うことの災難

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私の家はマンションの最上階のフロアを貸し切っている。

元々実家が管理しているマンションで、学校から近いということで借りた。

高校から一人暮らしをはじめているが、通いでメイド達が週に3日、3人来る。

今日も来ているハズだ。

部屋に帰ると、良い匂いが漂っていた。

「ただいま」

「お帰りなさい、マカ様」

「おっかえりぃ~。マーちゃん」

「お帰り、マカさん」

家に来ているメイドは、26歳のカエデ。

15歳になったばかりのモモ。

そして17歳のレイラ。

タイプは違えど、美人だ。

「ああ。…くたびれた」

そのままリビングの長いソファーに倒れ込む。

「まあマカ様、お着替えもなさらないうちに」

「脱がしてくれ」

カエデに両手を広げて見せると、ヤレヤレと言ったカンジで制服を脱がせてくれる。

「高校三年生にもなって、情けないですわね。来年は当主になろうというお方が」

「現当主のジジィだって、女達に着せ替えしてもらっているだろうが」

「…否定はしませんケドね」

どこか遠い目をしながら、カエデはレイラが持ってきた浴衣を着せてくれる。

私は普段から和服を愛用していた。

「今日はビーフシチューか」

「はい、良い材料が本家から届けられましたので」

着替えた後、私は再びソファーにダイビング。

「マーちゃん、随分くたびれてるねぇ。どったの?」

モモが心配そうに駆け寄ってきて、私の頭を撫でてくれる。

私は黙ってカバンからケータイを取り出し、開けて見せる。

『わっ! 美人がいっぱい!』

…フツーの男の反応だな、うん。

「…何です、コレ」

「わあ、動いてるぅ」

「生きて…いるの?」

三人とも不気味そうに男を見ている。

私は事情をかいつまんで説明した。

「あらまあ…」

「それはぁ…」

「厄介ね」

「ああ、だから疲れてるんだ」

『ヒドッ! そこまで言わなくても…』

男が落ち込むと、何かゲージのようなものが下がって数値も下がった。

「…マカ様、何か下がっていますわよ?」

「ほっとけ。私は腹が減った」

「ただいま用意します」

3人はバタバタと食事の用意を始める。

『ねっねぇ』

「何だ?」

『きっキミの名前ってマカって言うの?』

「ああ、そうだ」

『いっ良い名前だね』

「そりゃどうも」

両親の名前の頭文字を合わせただけの、言わば語呂合わせのような名前だが。

『………』

「じゃあな」

『わああ! もうちょっと話そうよ!』

男は涙目で訴えかけてくる。

「何だ? 私は腹が減っているんだ」

『ちょっとだけでも良いから、話そうよ。オレ、寂し過ぎるよ』

「知ったことか」

そう言うと、再びゲージと数値が下がる。

「あっ、もう10だ」

確か最初見た時は50だった。
『わっ! 早! 上がるのが早い場合はあるけど、下がりでここまで早い人はいないよ!』

「何事にも始まりはある」

『上手いこと言ってる場合じゃないって! …ピンチなの、分かってる?』

挑発的なその目に、カチーンッ★ときた。

「ほお…。何だかおもしろそうなことになりそうだな」

『まあ人によっては、だけどね』

「ふぅん。だが一つだけ、お前に警告してやろう」

『なに?』

私は起き上がり、真っ直ぐに男と向かい合った。

「生憎と私は普通の人間ではない」

『…えっ?』

男がマヌケ面になった。
「お前のようなヤツを、自ら生み出すことすら可能の者だ。無論、消すこともな」

にやっと笑うと、男はおびえた顔になった。

「さしずめ私自身に何かあると見た。だがな、お前と私、どちらが強者かハッキリするだけだぞ?」

『そっそんなこと…!』

「無い、と言いたいか? だがな、お前も感じているはずだ。私のケータイに宿っているんだからな」

男は歯を食いしばった。

ケータイに宿るということは、内容を知るということだろう。

「今はまだ、相手をしてやる。だが危害を加えようとするなら、容赦はせん」

『…んだ』

真正面からはっきり言うと、ぼそっと何かを呟いた。

「何だ?」

『ラブゲージって言うんだ…。ゼロになってもヤバいし、100になってもマズイ』
ラブゲージ? …ああ、さっきから下がりっぱなしのコレか。

「ならちょうど良いのが半分か」

『うん…』

しかし今はもう5だ。

「何をすれば上がる?」

『オレに触るとか』

「こうか?」

画面越しに、男の頬を撫でる。

『うわっ、くすぐったい』

男が嬉しそうにそう言うと、ゲージがわずかに上がった。

なので頬や頭、首を撫でてやる。

「ほれほれ」

『わひゃっ!? アハハ!』

すると声を上げて笑い始めた。

数値は30まで上がった。

「楽しそうだけど、準備が出来たわよ」

レイラがニコニコ顔で言ってきたので、私は容赦なくケータイを閉じた。

「今、行く」

テーブルには私一人分の料理が並んでいる。

ビーフシチューにパン、フルーツサラダ。そしてミートローフは私の好物だ。

「飲み物は?」

「紅茶にしてくれ」

言ってすぐ、紅茶のカップが置かれた。

「いただきます」

私は手を合わせ、ガツガツと食べ始める。

「うん、美味い!」

「ありがと♪ でもさぁ、アレだったらアタシ達、泊まろうかぁ?」

「うん? 何でだ? モモ」

「だってぇ、ケータイ越しとは言え、男とマーちゃんを二人っきりにすると、当主から怒られそうなんだもん」

…一理あるな。

「そうだな、そうしてくれ」

「かしこまりました」

カエデが電話をしに、退室した。

次期当主ということで、異性関係にウルサイのだ。

「でもどうするの? 飼い続けるの?」

レイラがミートローフを切り分けながら聞いてきたので、少し考えた。

「ふむ…。まあ少しぐらいなら相手しても良いが…。何分、作ったのが他の女だからな」

「自分の彼氏を押し付けてきたようなモンだもんねぇ。タチ悪っ!」

モモが心底イヤそうに言ったので、私は苦笑した。

「押し付けてきたのも、理由があってのことなんだろう。明日、聞いてみるさ」

そう言いつつ食事を進める。

「マカ様、当主からの許可がおりました。本日とは言わず、しばらく住み込みになりますので」

「ぶっ! …まあ良いが」

過保護にも程があるな。

「あと当主からの伝言がございます」

ふとカエデは真面目な顔になった。

「『今回の件はウチの血縁は関係無い』とのことです」

「…他の人間の仕業だと言うのか?」

「そこまでは分かりませんが…。とにかく、この件に関して我が血族は絡んでいないということですね」

何だ、てっきり絡んでいるものだと思ってた。

コレと似たような手口を知っているからな。

「しかし…普通の人間に出来る芸当か?」

「ありえなくはないわよ。人間にもいろいろいるもの」

レイラの言うことにも一理ある。

その後、ケータイは開かず、充電した。

3人はずっと一緒にいて、見張りのような役目をしていたからだ。

本当はいろいろ聞いてみたかったんだが…。

だが翌朝、事態は急変する。



「えっ? 休み?」

「うん…。何か体調悪いんだって」

私に男を押し付けてきた女の子の教室を、朝一に訪ねると、知り合いにそう言われた。

「まいったな…」

まっ、考えていないことではなかった。

予想はしていた。私から逃げるだろうことを。

「…ねぇ、もしかして携帯彼氏、押し付けられた?」

知り合いが上目遣いに、不安そうに聞いてきた。

「よく分かったわね」

そう言ってケータイを開いて見せると、知り合いは短い悲鳴を上げた。

「やっぱり…!」

「えっ? 知ってたの?」

「うっうん…」

知り合いの顔色は真っ白になっていく。

「その、知らないの? 携帯彼氏のこと」

「うん、全く」

素直に頷くと、知り合いは私から一歩距離を取った。

「今…それがウワサになっていてね」

またウワサか…。

「携帯彼氏を持つと、死んじゃうってハナシ」

「ふーん」

まあありがちだな。

しかし知り合いは、私を変なものでも見るような目付きで見てくる。
「怖く…ないの?」

「あんまり。実感が無いからかな?」

本当はこんなのに負ける気が無いからだ。

こっちの世界では、気圧されたら負けを認めた証拠。

強気でいたほうが何かと良い。

「じゃあ彼女は自分が死ぬのを恐れて、私にコイツを押し付けてきたってワケ?」

ケータイを閉じると、知り合いはまた一歩近付く。

「多分…。ゲージが一ケタ台になって、随分落ち込んでいたから」

「ゲージ…」

それが生死を左右するのか。

「ナルホド。分かった、ありがと」

「えっ? いいの?」

「うん。私のケータイをいじった理由が知りたかっただけだから」

そう言ってその場を離れた。

「まっ、ある意味、筋は通るな」

低い声で呟く。

自分の命がかかっているなら、なりふり構っていられないだろう。

ある意味、客観視できる。

きっとあの時間に私の教室に忍び込んだのも、計算だったんだろう。

音楽室へ移動した後、誰かケータイを忘れていないかと机の中を調べていたら、偶然たまたま私のケータイを見つけてしまった。

そして赤外線で移したのか。

それでも何とかなると、私はこの瞬間まで思っていたのだが…。

「じゃーん! 見て見て! マカ、あたしもケータイ彼氏出来たのぉ」

んがっ!

教室に戻ると、席に座っていたミナが笑顔でとんでもないことを言ってきた。

「みっミナ…。昨日、あれほど言ったのに…」

「だぁってぇ、マカから聞いたらどぉしてもやりたくなっちゃって。でも夢中になりすぎて、もうすぐラブゲージ100いきそうなのぉ」

って、ちょっと待てっ!

0か100にいったら、ヤバイんじゃなかったか?

いや、マズイんだっけ?

いやいやっ、どっちも同じだ!

ミナは嬉しそうにケータイを見せてくれた。

少し長めの黒髪の青少年が、ミナのケータイの待ち受けにいた。

切れ長の黒い目、白い肌。

真面目で神経質そうな顔立ち。

「えへへ。ちょっとマカに似てるでしょ? 名前はマミヤくんって言うんだ」

「…んのアホォ!」

ゴッ!

「いったぁい!」

拳骨をミナの頭上に落とした。

「ケータイ没収! このバカ娘ぇ!」
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