キミがいる

hosimure

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ボクは不器用だから、いつも彼の手助けが必要になる。

「適当に座っててくれよ。今、お茶持ってくるから」

「うん」

彼が部屋から出て行くと、ボクはため息をついた。

大学はいくらレベルを落としてもらったとは言え、油断は大敵。

買ってきた参考書を机の上に広げた。

そこでふと、クローゼットが少し開いていることに気付いた。

「閉め忘れかな?」

彼にしては珍しい。

ボクは立ち上がり、クローゼットの前に行った。

そこで中が少し見えた。

「ん? …金庫?」

クローゼットの中は、服がかけてあった。

しかし服の奥に、四角く黒い金庫があった。

「しかもダイヤル式の…。珍しいな」

思わずジロジロ見てしまう。

彼がこういうのを持つタイプだとは思わなかった。

そりゃあ隠しておきたい物があるのは、人間として当然だと思う。

けれどそういう物を、こういう金庫に入れるタイプじゃないと…。

「おっまたせー」

「おわっ!?」

声に驚き、クローゼットを閉じた。

「ん? どうした?」

部屋に戻って来た彼が、きょとんとした。

「あっ、少し開いてたから…」

「ああ、閉めてくれたのか。ありがとな」 

えっ笑顔で感謝されると、胸がチクチクする。

「うっううん」

「あっ、もしかして中見えた?」

「ちょっちょっと…」

「いいよ、そんな申し訳なさそうな顔しなくても」

彼は苦笑して、手を振った。

「金庫のことだろ? それ、高校入学祝いに叔父さんから貰ってさ。まあいらなくなったから、押し付けてきたってのもあるだろうけど」

「金庫なんて珍しいね」

「だろ? 元々叔父さん、商売をしてて、売り上げをその金庫に入れてたんだ。他にも権利書とか、重要書類をな」

そう言いつつ、テーブルに麦茶とお菓子を載せた。

ボクはテーブルの前に座り、麦茶を飲んだ。

「でもオレが高校入学するちょっと前に辞めてさ。今は田舎で農業してるんだ。その時に貰った物」

「へぇ。中に何か入れてんの?」

「まあな。使わなきゃ損だし」

「でも金庫に入れるような物だから、よっぽど大事な物?」

「んっとな…」

彼は珍しく動揺した。

「そっそんなに重要ってほどじゃない。その…写真とかだよ」

「写真? 学校のとか友達の?」

「あっああ。ダチのだよ。もちろん、お前の写真あるぞ?」

「えっ? 変な写真じゃないよね?」 

「普通のだよ。小学校の卒業アルバムも入っているし」

「そっか」

写真を金庫に入れとくというのも変な話だけど、確かにそれぐらいしか入れる物はないだろう。

高校生のうちじゃ、そんなにお金もないし。

重要書類とかも、ボク達にとっては昔の通信簿レベルだ。

「それより、早速大学のことを説明するぞ」

彼は顔を真っ赤にしながら、書類を取り出した。

よっぽど恥ずかしい物が、金庫に入れてあるんだろうか?

ボクはちょっと興味を持った。

けれどその後、大学の説明に、受験のこと。

そして勉強へと目まぐるしく頭を使い、そのことをすっかり忘れていた。

勉強が一段落つくと、彼が夕飯を作ってくれた。

昨夜作ったというカレーは彼の特製で、とても美味しく頂けた。

その後、おフロを先に入らせてもらった。

「じゃあ、オレ、フロに入ってくるな。電話が鳴ってもほっといて良いから」

「分かった。ゆっくり入りなよ」

「はいはい」

今日は頭を使ったせいで、2人とも少し疲れていた。

ボクは彼の部屋に戻った。

彼のベッドは広く大きいので、ボク達2人が並んで寝ても余るぐらいだった。

「ふぅ…。疲れたなぁ」

伸びをして、ため息を吐く。

彼はスパルタだから、この調子なら何とか受験は大丈夫だろう。
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