しがない俺が手にした力でやれること

hagedaijin

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1.しがない俺が望むもの

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 この娘(こ)いいなぁ…はい、【収納(しゅうのう)】こっちの娘も【収納】。
 今日は当たりの日だと思うね、実際。

 俺はどこにでもいる平凡な40代の一警備員。
 今日も今日として毎度のようにルーチンワーク。
 パチンコ屋の駐車場の出入り口に立っての誘導警備。
 給料は手取り平均12万でこれが正社員の給料か?とボヤく日々。
 まっ…しょうがないといえしょうがないんだけど、長年勤めていた商社の商売相手が、震災による店舗撤退を余儀なくされ、商品の取引を縮小してきたアオリを受け、俺にリストラの肩たたきがとうとう回ってきたのが運の尽き。 今じゃあしがない警備員まで落ちぶれてしまった。

 この【警備業】なる仕事。一般的には立ってるだけで給料がもらえる楽な仕事と思われがちだが…いやいや待ちたまえ諸君。そんなに楽な仕事なら俺がいつもやめたいと思うわけないだろ?
 だってね、今頃になって今は亡き親父が言っていたことを身にしみて感じている。

 あれは若いころ、卒業浪人で家にいた俺が見つけてきた警備員の仕事に就いていた時、親父はよく『不安定な仕事だから他を探せ』と言っていた。
 さもありなん。親父は公務員でお上(かみ)が安泰(あんたい)なら何事も無ければ老後も安心、数々の手当てもついて親父と同じ年になり商社勤めの俺の稼ぎの2倍以上は優にあった。
 そんな親父も手堅い公務員よりも社会一般の会社員勤めが良さげに見えた、ってんだから皮肉なものさ。

 俺的には生活の不安が無いまで育て上げた経済力に感謝する事あれ、一サラリーマンじゃこうもいかなかっただろうと思う。
 親父が思うよりも職種によるが、【会社】ってのは浮き沈みが激しい。
 起業したかと思えば数年で倒産に追い込まれることもあれば、創業100年の大企業であっても時流にに乗れなければ淘汰(とうた)される厳しい現状なんだよね。

 まぁうまみだけで楽な仕事があればいいんだけど、そんなものはなかなか無いわけで。
 長年勤めていた商社も流れに乗り遅れた、っていえば乗り遅れたといえるし、見切り時を間違えたと言えばしくじったのだろう。

 ああ、話が横道にズレたな若いころついた警備員も親父から突き付けられた。
 曰(いわ)く、『警備員なら自活しろ、違う職種に就くなら今のまま住まわしてやる』という言葉を受け、自活に不安と経済的な観点で若輩者の俺は後者をとり、晴れて商社勤めのリーマンになったわけだ。
 そのリーマンも勤続18年目にしてあえなく終了。
 40代になってからの就活は年齢の壁に阻まれ、選択肢も限られていた。
 実際のところ転職するための最適齢期は30代だったらしい。

 無職により嵩(かさ)む生活費を捻出(ねんしゅつ)するため、最初は短期で返済できるはずだったサラ金も返すよりも借りる方が多くなり、止(や)む無く警備会社に履歴書を持ち込み、いとも簡単に警備員になれた。
 初めの3か月は月収5万円という今から考えても、よく辞めなかったなぁ、と別の意味で感心するほどの低所得だった。
 最初の就職先の警備会社の頃は手取り19万円で半分を家へ入れ、半分を貯金していたのを覚えている。
 今思えば、今の職場環境とだいぶ違い何もかもがあいまいで、危険な仕事がたくさんまかり通っていた。

 警備業の仕事の大半は特殊な会社(まぁ、いわゆる現金輸送する警備会社)を除き土木業がお得意様で、最近の土木現場では雨天中止にする場合が多い。
 だから、入社したての無資格の警備員は当然のことながら、資格所持を義務づける現場にはつかせてくれない。

 ここでいう資格は2級と1級があり、1級の方が上で多くの権限を持つことから警備会社の経営者が持っている。
 今現代、俺は【道路誘導】2級。

 資格もいくつかあり、代表的なところで【道路誘導】【雑踏誘導】。他には【機械警備】【航空警備】なんてものがあり、それぞれに対する資格を現す。
 つまり、【交通誘導】資格2級者所持であっても【雑踏警備】の資格保持者ではないので試験を受けなければ、【雑踏警備】資格2級は所持することはできないのである。
 おまけに試験一回につき6万円と薄給取りにとって高額で、複数所持するためには資金面に苦慮(くりょ)するわけだ。これ国家試験なんだよね、お高いお高い。

 
 うちの会社の大多数のお得意様は土木工事従事者(○○建設とか○○組とか)で、道路工事等は雨により土が浮いてしまったりぬかるむ状態では、仕事中止が当たり前だ。
 そん時、俺は仕事にも出れず休みとなる。
 一般の会社と違い時給払いなので世知辛いことこの上ない。
 仕事があればスマホで呼び出され、無ければ干(ほ)される。げに不安定な職場なり、ってな。

 俺たち警備員の真の敵は【天気】なんだよ、これホント。
 寒暖の差が激しい時は特に身に染(し)みるね。
 暑くて汗だくでも長袖の制服の袖をまくることも社命(しゃめい)で許されず、適度な水分補給で熱中症を防ぐ。
 寒ければ着れるだけの防寒着を着込み、着ぶくれしながら寒さで息(いき)を白く吐き出す、過酷な環境なのさ。

 世に介護職は給料が低くて結婚もできない、なんて嘆(なげ)く奴がいるけど…警備員ほど邪険にされ、時には人間扱いもされず物扱いで蔑(さげす)まれることも無ければ、手取りが低いときは10万を切らないことは珍しくない程安定しない職よりは、随分(ずいぶん)とマシに想えるんだがどうだろう?

 引っ込み思案でコミュ障で2次元オタへと変貌(へんぼう)した俺は、結婚相手も見つけられずに40半ばを過ぎ50代へと移行するのを日々のルーチンワークで塗りつぶす毎日だった。

 そんなある日の午後、気まぐれな神様から【力】を貰ったわけだ。
 世界を変えるかもしれないし、何も影響を与えずに消えるかもしれない俺。まぁ後者なのは確定。
 与えてくれたのは、俗に【創造魔法】という力。


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 初めまして、今回は主人公の紹介回というか世知辛い世の中談話の半生紹介だけですね。
 副題付けました。
 
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