しがない俺が手にした力でやれること

hagedaijin

文字の大きさ
1 / 10

1.しがない俺が望むもの

しおりを挟む
 この娘(こ)いいなぁ…はい、【収納(しゅうのう)】こっちの娘も【収納】。
 今日は当たりの日だと思うね、実際。

 俺はどこにでもいる平凡な40代の一警備員。
 今日も今日として毎度のようにルーチンワーク。
 パチンコ屋の駐車場の出入り口に立っての誘導警備。
 給料は手取り平均12万でこれが正社員の給料か?とボヤく日々。
 まっ…しょうがないといえしょうがないんだけど、長年勤めていた商社の商売相手が、震災による店舗撤退を余儀なくされ、商品の取引を縮小してきたアオリを受け、俺にリストラの肩たたきがとうとう回ってきたのが運の尽き。 今じゃあしがない警備員まで落ちぶれてしまった。

 この【警備業】なる仕事。一般的には立ってるだけで給料がもらえる楽な仕事と思われがちだが…いやいや待ちたまえ諸君。そんなに楽な仕事なら俺がいつもやめたいと思うわけないだろ?
 だってね、今頃になって今は亡き親父が言っていたことを身にしみて感じている。

 あれは若いころ、卒業浪人で家にいた俺が見つけてきた警備員の仕事に就いていた時、親父はよく『不安定な仕事だから他を探せ』と言っていた。
 さもありなん。親父は公務員でお上(かみ)が安泰(あんたい)なら何事も無ければ老後も安心、数々の手当てもついて親父と同じ年になり商社勤めの俺の稼ぎの2倍以上は優にあった。
 そんな親父も手堅い公務員よりも社会一般の会社員勤めが良さげに見えた、ってんだから皮肉なものさ。

 俺的には生活の不安が無いまで育て上げた経済力に感謝する事あれ、一サラリーマンじゃこうもいかなかっただろうと思う。
 親父が思うよりも職種によるが、【会社】ってのは浮き沈みが激しい。
 起業したかと思えば数年で倒産に追い込まれることもあれば、創業100年の大企業であっても時流にに乗れなければ淘汰(とうた)される厳しい現状なんだよね。

 まぁうまみだけで楽な仕事があればいいんだけど、そんなものはなかなか無いわけで。
 長年勤めていた商社も流れに乗り遅れた、っていえば乗り遅れたといえるし、見切り時を間違えたと言えばしくじったのだろう。

 ああ、話が横道にズレたな若いころついた警備員も親父から突き付けられた。
 曰(いわ)く、『警備員なら自活しろ、違う職種に就くなら今のまま住まわしてやる』という言葉を受け、自活に不安と経済的な観点で若輩者の俺は後者をとり、晴れて商社勤めのリーマンになったわけだ。
 そのリーマンも勤続18年目にしてあえなく終了。
 40代になってからの就活は年齢の壁に阻まれ、選択肢も限られていた。
 実際のところ転職するための最適齢期は30代だったらしい。

 無職により嵩(かさ)む生活費を捻出(ねんしゅつ)するため、最初は短期で返済できるはずだったサラ金も返すよりも借りる方が多くなり、止(や)む無く警備会社に履歴書を持ち込み、いとも簡単に警備員になれた。
 初めの3か月は月収5万円という今から考えても、よく辞めなかったなぁ、と別の意味で感心するほどの低所得だった。
 最初の就職先の警備会社の頃は手取り19万円で半分を家へ入れ、半分を貯金していたのを覚えている。
 今思えば、今の職場環境とだいぶ違い何もかもがあいまいで、危険な仕事がたくさんまかり通っていた。

 警備業の仕事の大半は特殊な会社(まぁ、いわゆる現金輸送する警備会社)を除き土木業がお得意様で、最近の土木現場では雨天中止にする場合が多い。
 だから、入社したての無資格の警備員は当然のことながら、資格所持を義務づける現場にはつかせてくれない。

 ここでいう資格は2級と1級があり、1級の方が上で多くの権限を持つことから警備会社の経営者が持っている。
 今現代、俺は【道路誘導】2級。

 資格もいくつかあり、代表的なところで【道路誘導】【雑踏誘導】。他には【機械警備】【航空警備】なんてものがあり、それぞれに対する資格を現す。
 つまり、【交通誘導】資格2級者所持であっても【雑踏警備】の資格保持者ではないので試験を受けなければ、【雑踏警備】資格2級は所持することはできないのである。
 おまけに試験一回につき6万円と薄給取りにとって高額で、複数所持するためには資金面に苦慮(くりょ)するわけだ。これ国家試験なんだよね、お高いお高い。

 
 うちの会社の大多数のお得意様は土木工事従事者(○○建設とか○○組とか)で、道路工事等は雨により土が浮いてしまったりぬかるむ状態では、仕事中止が当たり前だ。
 そん時、俺は仕事にも出れず休みとなる。
 一般の会社と違い時給払いなので世知辛いことこの上ない。
 仕事があればスマホで呼び出され、無ければ干(ほ)される。げに不安定な職場なり、ってな。

 俺たち警備員の真の敵は【天気】なんだよ、これホント。
 寒暖の差が激しい時は特に身に染(し)みるね。
 暑くて汗だくでも長袖の制服の袖をまくることも社命(しゃめい)で許されず、適度な水分補給で熱中症を防ぐ。
 寒ければ着れるだけの防寒着を着込み、着ぶくれしながら寒さで息(いき)を白く吐き出す、過酷な環境なのさ。

 世に介護職は給料が低くて結婚もできない、なんて嘆(なげ)く奴がいるけど…警備員ほど邪険にされ、時には人間扱いもされず物扱いで蔑(さげす)まれることも無ければ、手取りが低いときは10万を切らないことは珍しくない程安定しない職よりは、随分(ずいぶん)とマシに想えるんだがどうだろう?

 引っ込み思案でコミュ障で2次元オタへと変貌(へんぼう)した俺は、結婚相手も見つけられずに40半ばを過ぎ50代へと移行するのを日々のルーチンワークで塗りつぶす毎日だった。

 そんなある日の午後、気まぐれな神様から【力】を貰ったわけだ。
 世界を変えるかもしれないし、何も影響を与えずに消えるかもしれない俺。まぁ後者なのは確定。
 与えてくれたのは、俗に【創造魔法】という力。


……………………………………………………………………………………
 初めまして、今回は主人公の紹介回というか世知辛い世の中談話の半生紹介だけですね。
 副題付けました。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...